Zabbix Summit 2022、CEOのAlexei Vladishev氏のインタビューとイベント雑感
Zabbixの年次カンファレンス、Zabbix Summit 2022は2022年10月7日と8日の2日間がカンファレンスの日程だったが、実際には4日から6日にトレーニング、8日の朝いちばんからワークショップ、同じ時間帯に認定試験が行われるというかなり過密なスケジュールとなっていた。パートナーやユーザーのシステムエンジニアは3日間のトレーニングを受けて8日の朝から認定試験に望み、その後、カンファレンス2日目に参加するという日程が組まれていた。この過密な日程は3年間リアルのイベントが行えなかったことにも関係するのだろうが、資格やトレーニングが目的の参加者にとっては良く設計されたカンファレンスと言える。この稿ではイベント全体の感想とZabbixのCEO、Alexei Vladishev氏と日本法人の代表、寺島広大氏のインタビューをお伝えする。
写真で見るZabbix Summit
アメリカで行われるカンファレンスでは早朝から開始することでセッションの回数を増やして量で勝負する形なのに対し、Zabbix Summitは朝から生演奏で始まった。なんとも優雅な始まりだが、キーノート自体が10時15分開始という設定はアメリカのカンファレンスよりも1時間はゆうに遅い。カンファレンス全体を通して時間に追われるという感覚が少なく、移動がないことも含めて参加者はリラックスしていたようすだ。
この写真を見ればわかるが、約400名が大きなカンファレンスルームに着席、座席もかなり込み合っている。ちなみにカンファレンスではマスク着用は義務化されておらず、市内、空港に至るまでほぼマスクを着用していないのが2022年10月のリガの状況だった。
Zabbix Summit が10周年ということもあってグッズはかなり売れていたようだ。
Zabbixはパートナー戦略も強化しており、中国、ブラジルそしてヨーロッパ各国からZabbix関連のサービスやコンサルティングを提供する企業が多く参加していた。この写真は、長年のパートナーシップを維持している企業が表彰された後に記念撮影を行っている場面である。他にもシステムエンジニアを表彰する場面もあり、Zabbixがシステムの導入に携わるエンジニアに最大限の謝意を表していたことが印象的だった。
ちなみに2日目の最後の時間にこのイベントを企画運営したZabbix社員に対してCEOのVladishev氏が感謝の言葉を掛け、それに呼応して壇上で記念撮影する場面もあり、社員も含めて楽しんでいることが感じられる場面となった。
カンファレンスルーム前の展示スペースにはパートナー各社がブースを構えている。各自が自立式バナーを持ち込んでアピールを行っていたが、デモなどよりも会話がメインの展示だ。
約400名という参加者、ひとつだけのカンファレンスルーム、小ぶりなパートナーブースという規模からすればこぢんまりとした感は否めないが、参加者の満足感は高かったのではないだろうか。
CEOと日本法人代表に訊く
ここからはZabbixのCEO、Alexei Vladishev氏と寺島広大氏のインタビューの一部を紹介する。
プレゼンテーションの中でアプリケーションパフォーマンスモニタリング(APM)にも言及されていましたが、すでにNew RelicやAppDynamicsのように先行しているベンダーもあり、Zabbixは後発になりますが、差別化のポイントは?
Vladishev:APMだけじゃなくてモニタリングの市場もすでに非常に込み合っているのが現実ですね(笑)Zabbixの強みはオープンソースであること、すでに大きなユーザーベースがありコミュニティが作られていることです。加えてコストについても他社と比べて競争力があると言えますね。Zabbixは無償ですから。
Root Cause Analysis(根本原因解析)についても説明がありました。すでに製品に組み込まれているということですが、今後、APMに機械学習などの新しいテクノロジーを使う可能性は?
Vladishev:APMについてはソフトウェアのデザインを行っている段階ですので、どのように実装するのか?についてはまだお話できる状態ではありません。ただ機械学習なのかルールベースなのかなど、いろいろな角度から検討をしていることは確かです。
機械学習のように過去のデータから異常を検知するという場合、状況の変化に対応できずに単にセールスキャンペーンが始まっただけで異常なアクセス増とかの警告を出してしまうことも考えられますが。
Vladishev:そうですね。セールスキャンペーンのようにシーズナリティがあるものについてはすでに対応できるようになっていますが、その増加の中で何かが異常であるということを突き止めるというのは新しい機能が必要になります。実際にすべてをZabbixの中で処理するのではなく外部の分析機能と連携してそれが判断を行い、Zabbixはユーザーへのインターフェースを担当するという形式も考えられます。これも今デザインしている段階ですのでまだ確定しているわけではありません。
最後に日本のビジネスについてお尋ねします。今はどんな感じですか?
寺島:日本のビジネスはパンデミックもありましたが、ありがたいことに順調に推移しています。日本はすべてパートナー経由でサービスもプロフェッショナルサービスも提供する形ですが、これは本社のビジネスとはちょっと異なっています。本社はダイレクトも行っていますが、日本はすべてパートナーさんです。日本ではシステムインテグレーターの役割が重要ですので、そこと被らないようにしているという背景があります。ありがたいことに今年で設立10年になりますが、日本でアレクセイと一緒に登記に行ったことを覚えています。社員も少しずつですが増員させています。日本で独自立ち上げたZabbixのアプライアンスビジネスも順調に行っています。これは日本で企画して実行したビジネスですが、これも順調に成長しています。
参考:Zabbix Enterprise Appliance
初日のキーノートの冒頭で日本支社が10周年ということが告げられ、Zabbixとして最大の謝辞を送ったCEOのVladishev氏だが、日本支社と本社の信頼関係は厚くお互いが敬意を持って接していることが垣間見られたインタビューとなった。
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