【KubeCon Japan】KubeCon Japan 2026開催。オープンなAIを推奨する初日のキーノートを紹介
KubeCon+CloudNativeCon Japan 2026が開催された。オープンなAIを推奨する初日のキーノートを紹介する。
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KubeCon+CloudNativeCon Japan 20026がパシフィコ横浜で開催。2026年7月29日と30日の2日間の会期の最初に行われた初日のキーノートセッションを紹介する。登壇したのは最近のKubeConではお馴染みのコンビ、CNCF(Cloud Native Computing Foundation)のエグゼクティブディレクターJonathan Bryce氏、そして同じくCTOのChris Aniszczyk氏だ。
テーマはBryce氏が着ているカンファレンスの公式Tシャツに書かれているようにMoving、つまり常に前進していることを解説する内容だ。
クラウドネイティブなシステムが前進していることのひとつの証として、2026年3月にアムステルダムで開催されたKubeCon Europe 2026が13000人以上の参加者を集めた最大のカンファレンスになったことを挙げて紹介。これは単に参加者が増えただけではなく、CNCF配下のプロジェクトの増加、そしてCNCFに加入するメンバーが増えたということだ
ここでの注目はHAMiとllm-dだろう。HAMiはGPUを仮想化して分割、共有するためのフレームワーク、llm-dは複数のノードで大規模言語モデルのPrefillとDecodeを最適配置するためのソフトウェアだ。どちらも推論、学習を大規模に実行するためには必須のソフトウェアスタックとなる。
NVIDIAのCNCFへの加入はKubeCon Europe 2026で発表されたが、それを再度、ここで強調した形になった。プラチナムメンバーというトップレベルのグレード、さらに約400万ドル相当のGPUリソースをCNCFに提供するという破格の貢献になっている。
さらにヨーロッパ発の金融サービスのAdyenやVMwareを買収したBroadcomなどが紹介されている。細かな話ではLinuxの認定試験を提供するLPI-Japanやカラムナー(列指向)データ分析のClickHouseなどの名前も確認できる。
このスライドでは過去6か月の間にCNCFへ貢献するデベロッパーの数が、15.6Mから19.9Mに増えたことを紹介。CNCFのメンバーはファウンデーションの資金的な面をサポートする企業群だが、実際にソフトウェアを書いて貢献するのはプロジェクトに属するエンジニアであるため、この数値が着実に増えているのは良い兆候と言えるだろう。
日本からCNCFのプロジェクトに貢献するエンジニアの数は約95万人というのがプレスリリースとしても公開されているが、アジアではインド、中国に次ぐ数となっている。
ここからはAIのユースケースを紹介。このスライドではUber、Wayve、ZEISSがCNCFのプロジェクトをベースにして生成AIを実装していると説明した。Wayveは2025年12月に香港で行われたSIGGRAPH Asia 2025のキーノートでも合成データを使ってモデルを学習することが重要というセッションを行っている。SIGGRAPH Asiaのセッションではインフラストラクチャーに関しては何も語られていないが、KubeConではクラウドネイティブなシステム上で実装されていることを訴えたかったと思われる。
SIGGRAPHのWayveのセッションについては以下を参照されたい。
●参考:SIGGRAPH Asia 2025、Wayveの合成データによる強化学習に関するキーノートを紹介
ZEISSのユースケースでは、分散ランタイムのDaprを使っていることがわかる。DaprはMicrosoftでAzureのアーキテクトをしていたエンジニアが創業したベンチャーのDiagridが開発をリードするもので、DiapridはDaprをベースにしてクラウドベースの商用サービス、Catalystを提供している。
KubeConでは恒例のクラウドネイティブなユースケースとして表彰されたのはスバルだ。スバルが受賞したシステムの内容についてはCNCFのサイトに公開されているので、詳細はそちらのページを参照して欲しい。
●参考:Subaru Accelerates AI Development for Next-Generation EyeSight with Kubernetes and CNCF Projects
これはスバルが誇る運転支援システムであるEyeSightの開発プロセスを高速化するために、ArgoCD、Kubernetes、Helm、Harborなどを使ってアプリケーションビルド時のイメージ取得を高速化したという事例だ。
ここからは生成AIを実行する方法、特に推論側の仕組みについてクラウドネイティブらしくスケールアウトするためには何が必要か? こちらを解説する内容となった。
すでに多くの生成AIのベンチャーやメガクラウドプロバイダーが巨大なモデルとその性能を競う状況の中で、エンドユーザーはそのモデルを使ってどうやって推論させるのか? こちらに焦点が移ってきていると説明。2026年の調査ではAIに関するワークロードの約33%がトレーニング、残りはすべて推論に使われているというデータを示して、ユーザーの関心は推論の実装にあることを説明した。その背景にはモデルのトレーニングは偶発的に実行されるが、推論はビジネスに組み込まれ毎日実行されるからだと説明。
推論をスケールさせるためのポイントは分散処理、オーケストレーション、ネットワーク、オブザーバビリティ、そしてスケジューリングの5つであると説明した。
Kubernetesは生成AIのために作られたのではなく、分散システムのためのオーケストレータである。しかし推論のワークロードが複数のクラスターでの分散実行、ノードへのルーティング、GPUのスケジューリングと共有などを要求する状況では、Kubernetesによる分散処理がフィットすることをエンジニアが知っていたからというのがBryce氏の論点だ。
そして分散システムのためのKubernetesが生成AIの推論にフィットするためには足らない機能があるとして、次のスライドで解説を行った。
ここでは分散処理に加えてサンドボックスによる安全性、マイクロサービスの先にあるエージェント、サービスメッシュとMCPなどがうまく配置され、説明されている。
Kubernetesをプラットフォームとして、複数のノードでLLMのPrefillとDecodeを分散処理するためのルーターとスケジューラを実装するのがllm-dだ。
そしてKubernetesの上で推論を実行する際に利用するモデルについて、クラウドサービスを利用するのではなく、用途に応じて特化した小さなモデルをオンプレミスで実行することでコストとパフォーマンスそしてセキュリティを両立できることを解説。ここではGoogle、OpenAI、Anthropic、Microsoftなどのサービスを使うのではなく、オープンソース、オープンウェイトのモデルを自社のクラウドなどに実装する方法を推奨している。
これはこの後に行われたOSSummit Korea 2026のキーノートでLinuxのカーネルメインテナーであるGreg Kroh-Hortman氏も強調していた点で「オープンなモデルを自社のインフラで実行することが2026年8月の時点での現実解である」という見解とも一致している。
この後、Uberのユースケースについて簡単に紹介した中でもその点については強調され、Hugging FaceのCEOであるClement Delangue氏のSNS投稿を引用して、コストの違いを強調していた。
Bryce氏の最後のパートはAIをセキュアにすることに関する内容となった。ここではソブリンAIを題材として選択し、説明を行った。
このスライドでは技術だけではなく業界や政府機関での実装や人材に関してもポイントとして説明。ヨーロッパ以外ではデジタル主権については関心が薄いことは承知の上だろうが、生成AIについてコントロールを失うことによって国家の危機につながるという危機感を醸成するための選択だろう。
このスライドではKubernetesを推論にフィットさせる時に使った図版を応用して、どのレイヤーにCNCFのプロジェクトがフィットするのかを説明。特にセキュリティについては、CNCFのプロジェクトの選択肢が多いことを同時に示したものでもあろう。
このスライドでは「もしもクローズドでプロプライエタリなモデルがAIで主体となれば、一部の企業に独占され中央集権的に管理されることになる」とここでも危機感を煽った。
ここからはAniszczyk氏に交代して、Kubernetes上でAIワークロードを実行する際のコンフォーマンステストについて解説。すでに多くのベンダーがその適合テストをパスして認定されていることを解説した。
Akamai、Alibaba、AWS、Baidu、Google、Microsoft、Huawei、NVIDIAなどのメガベンダーから、Spectro Cloud、OVHcloudのようなニッチなクラウドプロバイダーまで多様であるが、日本のベンダーのロゴが見られないのは残念である。v1.36ではSoftBankからの申請が行われているようだが、Alibaba Cloudの日本向けビジネスであるSB Cloudがコンフォーマンスを申請しているのはSoftBankとAlibaba Cloudの関係からみれば当然だろう。国内で盛んにGPUクラウドを訴求するさくらインターネットはそもそもCNCFのメンバーですらなく、IaaSとしてのGPUクラスターを提供するポジションであることからも蚊帳の外だ。NTT関連の企業もKubernetes-as-a-Serviceを提供してはいるものの、AIコンフォーマンスを取得するレベルではないようだ。
最後のパートはコミュニティの底上げのための教育についてだ。ここではコードを書いて貢献する方法以外にもドキュメントやグロサリーに対する貢献も存在することを説明し、教育については世界有数のオンライン学習プラットフォームであるUdemyと提携したことを説明した。最後に認定試験に合格してKubestronautになろう、コミュニティグループに参加しようと訴えた。
そして最後のトピックはこれから開催されるKubeConに関する告知だ。
2027年のEuropeはバルセロナで3月、North Americaは11月に初めての開催地となるニューオリンズであることを告げて、このセッションを終えた。
全体的に激しく競争を繰り返すクローズドの生成AIモデルに対してオープンソース、オープンウェイトのモデルが性能面で迫ってきていることを示しつつ、オープンソースがモデルについても主流を占めることを訴求する内容となった。ここではローカルでの実行については強く訴求していないが、ソウルで開催されたOSSummitではローカルで推論を実行することを強く訴求するなど、オープンなAIの追い風に乗りたいCNCFの意図が垣間見えた内容となった。
最後の写真はキーノート直前の日立の中村雄一氏の雄姿をお届けする。中村氏はMCとして2日間のキーノートに登壇。日立のOSPOの責任者であると同時にCNCFのボードメンバーとしても活躍しており、このカンファレンスの裏方のトップと言えるだろう。着ているTシャツはLFのエバンジェリスト用のデザインだ。
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