シーケンス図とステートマシン図を学ぼう
クラス図への反映
図3は、前述したシーケンス図とステートマシン図のモデリング結果を反映したクラス図の一部です。シーケンス図からは、新たなクラスである「出張申請登録確認画面」「出張申請DTO」「出張申請Service」「出張申請Gateway」「出張申請登録メール」が追加されています。これらの追加されたクラスは、アーキテクチャーと呼ばれるシステムの骨組みから導き出されることが多いクラスです。また、それぞれのクラスには、シーケンス図のメッセージから導き出された操作が記述されています。
「第3回:クラス図とオブジェクト図を学ぼう!」のクラス図にも登場した「出張申請」クラスには、シーケンス図のメッセージからだけではなく、ステートマシン図の遷移に対応する操作も追加されています。ここでは「出張申請」クラスにすべての責務を割り当てましたが、実装を行うまでの過程では、関連する別のクラスに責務が移動される可能性があります。
今回は、クラス図についての詳しい説明は割愛いたします。初めて登場した点線の矢印は、「依存」関係と呼ばれ、操作のパラメータのみで使われていたり、操作を呼び出したりするだけであることを表します。
総まとめ
全4回としてお送りしてまいりました「はじめようUML!」はいかがでしたでしょうか?
初めてUMLに触れられる方には入りやすく、すでにUMLを使われている方には基本的な軸を再確認していただきやすいように心がけて執筆したつもりです。
現在UMLは、以前に比べて確実に日本に根付いて来ていると感じています。すでにUMLを使うことが当たり前になっている方も大勢いらっしゃることでしょう。モデリングの用途も多様化し、業務系や組み込み系のシステム開発、またはツール開発で使われるだけではなく、業務の可視化のためのビジネスプロセスモデリングなどでも使われてきています。
また、UMTP(UMLモデリング技術推進協議会)の認定試験も、先日L3レベルが開始され、ますますUMLを利用したモデリングに対する意識が高まっていくことが期待できます。
最近では、モデリングをするための道具はUMLだけではなく、ビジネスプロセスをモデリングするためのBPMNや、ハードウェアを含んだシステム全体をモデリングするためのSysMLなども出てきました(SysMLについては、「モデリングの新潮流」の「第2回:SysMLとは何か」を参照)。
次々と新しいものが登場するのがこの業界の良いところでもあり、大変なところでもあります。こうした中で、より良いモデリングを行っていくコツは、やはりモデルの表現手段よりも、表現に至るまでの方法やモデルが表す内容の方がより大事であることを常に忘れないことかもしれません。
それでは、これからも「物事を目的のために扱いやすくする」モデリングを、そして「モデリングのための最適な道具」のひとつであるUMLを楽しんでいってください。