DFSによるファイルサーバー可用性の向上
Active Directory によるDFS名前空間の管理
実は、DFS名前空間には、「スタンドアロンの名前空間」と「ドメインベースの名前空間」の2種類が用意されており、ここまでは「スタンドアロンの名前空間」について解説してきた。
「スタンドアロンの名前空間」の場合、DFS名前空間の構成情報は1台のDFSサーバーで管理されるため、サーバーが停止してしまうと、DFS名前空間での接続が不可能となってしまう。これを解消するには、フェールオーバークラスタで構成されたサーバーをDFS名前空間サーバーとして使用しなければならない。
一方、「ドメインベースの名前空間」を使用すると、手軽にこうした問題を緩和することができる。
「ドメインベースの名前空間」では、DFS名前空間の構成情報はAD DS(Active Directory Domain Service)内に格納され、かつ複数のサーバーをDFS名前空間サーバーとして指定することができる。
図2をご覧いただきたい。スタンドアロンの名前空間では、接続時には名前空間サーバーに直接接続していたが、ドメインベースの名前空間では「\\Comtoso.jp\営業部」のようにサーバー名の代わりにドメイン名を指定することができる。このとき、複数の名前空間サーバー(図2ではServer01とServer02)が定義されていれば、そのいずれかにリダイレクトされる。接続のターゲットとなる名前空間サーバーを「ルートターゲット」と呼ぶ。
複数のルートターゲットからどれを接続先として選択するかは、「ターゲットの紹介順序」に依存する。ターゲット紹介順序の最も重要な要素は「コスト」であり、「Active Directory サイト」に依存して決定される。既定では、クライアントが所属するサイトから、最もコストが低いと判断されたサイトに所属するルートターゲットの優先度が高くなる。選定されたサイトに複数のルートターゲットが存在する場合には、その順序はランダムに決定される。
なお、紹介順序はルートターゲットごとに微調整することができ、以下に示す設定値から選択することが可能だ。
- すべてのターゲットのうち最初、または最後のターゲット
- コストが等しいターゲットのうち最初、または最後のターゲット
ドメインの機能レベルとDFSの機能
さて、ドメインベースの名前空間をWindows Server 2008で構成する場合、ドメインの機能レベルによって、サポートされるDFSの機能が異なることに注意していただきたい。
ドメインの機能レベルが「Windows Server 2008モード」の場合、従来のDFS名前空間が提供している機能に加え、以下の2つの機能が拡張される。
1つ目の機能が、アクセスベースの列挙だ。この機能により、名前空間ルート配下にリンクされたDFSフォルダ(図2の場合は「商談管理」と「予算管理」)の一覧から、アクセス権の無いフォルダを表示させないようにすることができる。なお、DFS名前空間におけるアクセスベースの列挙の設定方法については、本記事では割愛する。
2つ目の機能が、DFSフォルダ数の上限解除だ。従来の「ドメインベースの名前空間」では、1つのDFS名前空間ルート配下に作成できるDFSフォルダは5000個(Active Directory内のオブジェクトサイズが5MBまでという制限に起因)までという上限が存在していた。Windows Server 2008ドメインモードではこの制限が解除される。
続いて、共有フォルダの複製と負荷分散の効果について、解説する。