DFSによるファイルサーバー可用性の向上

2009年1月19日(月)
安納 順一

共有フォルダの複製と負荷分散

DFSには名前空間の管理に加え、「DFSレプリケーション」という大変有用な機能が用意されている。これは、1種類の共有フォルダを2台以上のファイルサーバーでホストし、両者の同期をとることでファイルサーバーの可用性を向上させることができる機能だ。これにより、特定のファイルサーバーがダウンした場合でも運用を継続できるだけでなく、ファイルサーバーの負荷分散を図ることができる。

従来、DFSフォルダの複製にはFRS(File Replication Service)が使用されていたが、Windows Server 2008で実装されたDFS複製エンジンにより、より効率的な複製が可能になった。特に、RDC(Remote Differential Compression)と呼ばれる圧縮アルゴリズムにより、ファイル全体ではなく、変更されたブロックのみをレプリケートできるため、ネットワーク帯域の節約と複製待ち時間の短縮が図れるようになった。

図3-1をご覧いただきたい。FileSV01には「商談管理」と「予算管理」という2つの共有フォルダがホストされており、FileSV02には「商談管理」のみがホストされている。「商談管理」フォルダは両ファイルサーバーでDFS複製されるように構成されている。

既に解説したように、クライアントが\\Contoso.jp\営業部に接続しようとすると、はじめにDFS名前空間を管理しているルートターゲット(Server01またはServer02)が選定される。その後、配下のDFSフォルダに接続する際に、DFSフォルダをホストしているサーバーの選定が行われる。図3-1の例では「商談管理」フォルダに接続する際に、FileSV01またはFileSV02のいずれかが選定されることになる。

DFSフォルダ選定は、ルートターゲットの選定と同様の紹介順序ロジックが使用されるため、可能な限りコストの低いサーバーに接続しようとする。これにより、遠隔地のファイルサーバーに接続されるといったことを避けることができる。

複製の管理

複製は「レプリケーショングループ」によって管理され、ここには複製に参加するサーバーをメンバーとして登録する。レプリケーショングループは複製対象となるフォルダごとに作成することができ、「複製トポロジー」や「レプリケーションフィルタ」を定義できる。

複製トポロジーとは、ファイルサーバー間の複製方向(双方向、片方向)や複製に使用する帯域幅、複製のスケジュール(時間帯、曜日)から構成され、接続単位に細かく設定することができる。例えば、図3-2に示すようにサイト内の接続は双方向にフルタイムで、サイト間の複製は一方通行にし帯域幅を狭くするといった調整が可能だ。

レプリケーションフィルタを使用すると、複製から除外するファイルやサブフォルダを指定することができる。共有する必要がないファイルやフォルダを除外することで、帯域幅の節約と複製時間の短縮が図れる。

ちなみに、DFSレプリケーションは共有フォルダ以外に適用することができるため、重要なフォルダのバックアップや、遠隔地サーバーのログ収集などにも活用することができる。

以上のように、DFSを使用することでWindows Server 2008の標準機能のみでファイルサーバーの可用性を格段に高めることができ、Active Directoryと組み合わせることでその効果はさらに高まる。

次回は、Active Directoryとグループポリシーを使用した、ホームディレクトリのメンテナンス手法について解説する。

マイクロソフト株式会社
国内コンピュータメーカーにて15年のフィールドSEとパッケージ開発経験を経て2007年マイクロソフトに入社。IT Pro 向けエバンジェリストとしてマイクロソフトの製品技術を広く伝える仕事に就く。http://blogs.technet.com/junichia/

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