DFSによるファイルサーバー可用性の向上
分散ファイルシステム(DFS)とは
分散ファイルシステム(DFS、Distributed File System)とは、ファイルサーバーへのアクセス方法を簡素化することで、エンドユーザーの運用コストを削減するとともに、負荷分散と高可用性を維持するための仕組みだ。古くはWindows 2000 Server時代に提供され始め、Windows Server 2008においてさらなる進化を遂げた。
具体的な用途としては、大きく「共有フォルダの仮想的一元管理」と「共有フォルダの複製と負荷分散」の2つに分けられる。
共有フォルダの仮想的一元管理
DFSを使用すると、複数の共有フォルダを仮想的に一元管理することができる。これは「DFS名前空間」と呼ばれる機能によって実現されている。
名前空間とは、お察しの通り「Namespace」の日本語訳だ。「名前空間サーバー」と呼ばれる特別なサーバーに「名前空間ルート」と呼ばれる名前空間の起点(開始ポイント)を作成し、その配下に複数のサーバーに散在している共有フォルダをリンクさせることができる。
こうすることで、クライアントからは複数のサーバーに存在する共有フォルダが、あたかも1台のサーバーに存在するように見えるため、大量の共有フォルダをマウントするなどといった手間を省くことができる。また、各所に散在する情報を仮想的に一元管理することができるため、データの管理者が保存場所を探して悩むといった問題からも解放される。
ここで、例を挙げて説明することにする。図1を確認しながら読んでいただきたい。
Contoso社の営業部門は従来1台のファイルサーバーを持っていたが、データが蓄積されるに従って容量不足が発生し、現在では3台のファイルサーバーで運用している。それぞれのファイルサーバーには「商談管理」「予算管理」「各種企画書」「キャンペーン」「他社製品資料」「部会議事録」「幹部社員会議議事録」「統括部長用説明資料」などといった共有フォルダを持ち、メンバーは必要に応じてそれぞれをクライアントにマウントして使用している。
部門メンバーからは、現在の問題点として以下が挙げられている。
- どの共有フォルダがどのサーバーに存在するのか瞬時に判断がつかない
- ファイルサーバーを横断的に検索できないのでファイルを探すのが手間
- 部員によっては接続するドライブが足りなくなっている
このほか、システム管理者は、商談管理フォルダの容量が増えすぎたため、近いうちに分割するか新たな大容量ディスクを増設しなければならないと考えている。
これらの問題がDFSによってどのように解決されるのかを見ていこう。
DFSを導入することにより、複数のサーバーに分散された共有フォルダは、DFSサーバー(DFS名前空間サーバー)上の1つの特殊な共有フォルダ(DFS名前空間ルート)配下に集約することができる。つまり、従来、「\\FileSV1\商談管理」「\\FileSV2\キャンペーン」「\\FileSV3\統括部長説明用」などと個別に接続していた共有フォルダは、DFSの導入により「\\FileServer\営業部」というたった1つの共有フォルダだけ意識すればよくなる。アクセス権については、既定のACLがそのまま継承されるため、新たに設定する必要もなく、管理上のコストも気にならないだろう。
なお、「Enterprise Edition」および「Datacenter Edition」ではDFS名前空間ルートを複数定義することができるので、図1に示した営業部に加え、「経理部」「広報部」などをDFS名前空間ルートとして定義し、1台のサーバーで管理することができる。
こうしたDFS名前空間の仕組みにより、利用者はどの共有フォルダがどのファイルサーバーに存在するかを意識せず、たった1か所のDFS名前空間ルートのみに接続すればよいため、ドライブ文字の枯渇に悩むこともない。また、DFS名前空間ルートを検索ポイントとすることで、複数のファイルサーバーのデータを横断的に検索することができる。
もし、ファイルサーバー側の容量不足によりサーバー間のデータ移行が発生しても、接続ポイントはあくまでもDFS名前空間ルートであるため、管理者の作業さえ正しく行われればエンドユーザーが意識する必要はない。
さて、メリットの多いDFS名前空間だが、考慮すべき点もある。それは、DFS名前空間サーバーが故障した場合の対応だ。次ページで解説しよう。