分析やビジネスモデリングのためのソフトウエアパターン
エリクソンとペンカーのビジネス・モデリング・パターン
では次に、UML記法を前提に、ステレオタイプを使って見た目を少し拡張してビジネスモデリングに適したダイヤグラムを追加したエリクソンとペンカーのビジネスモデリングに対する取り組みを見てみましょう。
まず、対象となるビジネスを「ビジョン」「プロセス」「構造」「ふるまい」のカテゴリで順番にモデリングしていきます(図2-1)。アナリシスパターンでは取り扱わない、戦略定義を含むビジネスの超上流からモデリングを始めて、ビジネスゴールが達成されるように概念クラスやビジネスプロセスを識別していき、それぞれの目的に合った視点やそれを記述するためのダイヤグラムが、UMLないしはその拡張として用意されています。
それらのダイヤグラムを作成する際に、「ゴール分析のためのパターン(3個)」「ビジネスプロセスのパターン(10個)」「リソースとルールのパターン(13個)」と全部で26個のパターンを用意して、ビジネスモデリングを誘導してくれます。
○ビジネスゴールパターン:ゴールの設定・分割・問題の識別
・Business Goal Allocation(ビジネス目標設定)パターン
・Business Goal Decomposition(ビジネス目標分解)パターン
・Business Goal-Problem(ビジネス目標-問題)パターン
○ビジネスプロセスパターン:プロセスの定義と実行を記述
・プロセスモデリングパターン7種:プロセスの実行を記述する
・プロセスインスタンスパターン1種:プロセスの実行形態を管理する
・プロセスサポートパターン2種:プロセスの運用を支援する
○リソースとルール・パターン:資源とそのルールに関する記述
・Contract(契約)パターン
・Employment(雇用)パターン
・Title-Item(タイトル-項目)パターン
……ほか全13パターン
ビジネスプロセスパターンの例
プロセスパターンとは、あるゴールを達成するためにどのような入力オブジェクト群を、どのような出力オブジェクト群に、どのような手順=プロセスで変換すればよいのかを定義するためのパターンです。
その基礎になるのが、図2-3で示した「基本プロセス構造」パターンです。これはUMLのアクティビティ図の拡張になっていますが、入出力以外に、>でそのプロセスの目的や制約を、>でそのプロセス実施の機構を与えているととらえると、IDEF0のプロセス構造を表現しているとみなすことができます。
□リソースとルールのパターン
一方、ビジネスプロセスを実行する上で利用されるリソースとそれらの間で満たさなければいけない関係や制約は、13個ある「リソースとルールのパターン」をうまく適用することによって表現することができます。組織や従業員、ビジネス・契約文書、資源の性質、用語に関する定義、といったテーマでリソースとそれが持つべき関係・制約がパターン化されています。これらの半数はアナリシスパターンとかなり類似したものが含まれています。たとえば、リソースとルール・パターンの典型として、「ある組織の特定のポジションにあるヒトを雇用してアサインする」という状況を表現するのに便利な「雇用(Employment)」パターンを示しておきます(図2-4)。
以上簡単に見てきましたが、エリクソンとペンカーの各ビジネスパターンはGoFデザインパターンと同じテンプレートで定形的に記述されていますし、ビジネス上流からユースケース定義を用いた要求定義までのビジネスモデリング全体を体系化しています。そのため、ビジネスモデリングのためのパターンランゲージを構成していると言ってよいでしょう。