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Web 2.0の潮流が見えているか?
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Webビジネスには大きく2つの側面がある。「インターネットから情報を吸い出す側面」と「インターネット上に情報を吐き出す側面」である。用語的には、前者をダウンロード、後者をアップロードという。
こう表現すれば至極当たり前に聞こえるが、おおよそWebビジネスはこの2つに終始する。Webビジネスの雄Googleのビジネスも、このダウンロードとアップロードを活用することで、その収益のすべてを獲得している。
GoogleのビジネスにおけるダウンロードとはGoogle Adwords(検索連動型広告)事業であり、アップロードとはGoogle Adsense(コンテンツ連動型広告)事業である。
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Googleのビジネスの根幹とは
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Googleは60億とも100億ともいわれるインターネット上の様々なコンテンツを検索するサービスを我々に無償で提供してくれている。インターネットユーザは、Googleの検索窓にキーワードを入力して検索ボタンを押すことで、その無尽蔵の情報源から欲しい情報を瞬時に引き出すことができる。その際、Google Adwordsサービスは検索結果に付随していくつかの広告を表示する。
この検索キーワードは、ユーザのニーズ・思考そのものである。ゆえに、検索結果に対して貼付される情報には、広告としての価値がある。Googleのこのビジネスは、インターネット上で公開されている無償の情報の中からユーザにとって興味ありそうな情報を絞り込むと同時に、機械的に広告情報を融合させて表示しているサービスといえる。
インターネット上に蓄積されている情報は、Googleが蓄積したわけではない。ましてや、検索キーワードを入力して、検索ボタンを押すのもGoogleではない。そのすべてはGoogleではない第三者が担っている。Googleはただ検索窓を用意して待つのみである。このビジネスは、2006年度決算で63億ドルの収益を上げ、Googleの総収益の約6割を占める。
もう一方のGoogle Adsenseは、様々な事業者がインターネット上に記事などのコンテンツをアップロードする度に、それに関連した広告情報を貼付するものである。アップロードされる記事やコンテンツを制作するのはGoogleではない。この場合も、Googleはインターネット上の各サイトで情報がアップロードされるのを待つのみである。こちらのビジネスはGoogleの売上の残り約4割を占め、42億ドルの収益を上げている。
Googleのビジネスを一言で表現するならば、「インターネットから情報が引き出される(ダウンロードされる)度に、それに関連した情報(広告)を貼付するビジネスと、インターネット上に情報が新たに蓄積される(アップロードされる)度に、それに関連した情報(広告)を貼付するビジネス」と表現することができよう。
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Web 2.0の本質とは
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ティム・オライリー氏が提唱してから世界中に広がったWeb 2.0を簡単に定義するならば、「ダウンロードとアップロードの大小関係が逆転しはじめた転換期」といえよう。
インターネット普及当初、ユーザはインターネット上からコンテンツをダウンロードするのみで、ユーザ1人1人がコンテンツをアップロードすることは稀であった。今日のようにブログなどのツールがないため、HTMLやCGIなどのコンピュータ言語を扱うことができる限られた人のみがホームページを保有していた。
それがいまやブログやSNSの台頭により、インターネットの初心者でも気軽にテキストや写真、動画など、様々なコンテンツをアップロードできる時代となった。ダウンロードとアップロード、その量の大小関係を厳密に比較することはおそらく不可能だろう。ただ1点いえることは、圧倒的な速度でアップロード量が増大しており、それがまさにWeb 2.0の潮流なのである。
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著者プロフィール
野村総合研究所 小林 慎和
コンサルティング事業本部 情報・通信コンサルティング部 主任コンサルタント
工学博士
ネットビジネス事業者、通信事業者及び情報サービス事業者に対して事業戦略立案、マーケティング戦略立案、海外展開支援などのコンサルテーションに従事。その他に、ネットビジネスの動向について各種講演、執筆活動を行っている。共著書に「これから情報・通信市場で何が起こるのか」などがある。
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