ビジネス展開におけるWeb 2.0
第3回:Web 2.0時代を支える手法
著者:野村総合研究所 堀 祐介
はじめに
第1回では大量の情報と消費者のアテンションをコントロールする重要性を説明し、第2回目ではWeb 2.0が与える市場へのインパクトを特に「eコマースモデル」と「企業情報システム」に着眼して分析した。今回から2回にわたり、Web 2.0時代を支える手法・技術がどのような目的で採用され、活用されているかについて事例を通じて紹介する。
サービス型ソフトウェアとASP
現在、サービス型ソフトウェアはSaaS(Software as a Service)またはオンデマンドソフトウェアとも呼ばれ、1990年代後半に誕生したASPの延長にある手法である。サービス型ソフトウェアと従来のASPを比較すると、サービスプロバイダがアプリケーションをホスティングし、利用者がWebブラウザを経由してアクセスするという点では同一であるが、次にあげる2点が違う。
- サービス対象ドメイン
- ソフトウェアモジュール間の結合度
表3:サービス型ソフトウェアとASPの相違点
従来のASPはCRMやSCMといった企業向け業務アプリケーションが中心で、消費者向けASPはWebメールサービス(例:Hotmail)など一部に限られていた。Web 2.0時代のサービス型ソフトウェアは消費者向けのサービスが急速に増加している点が特徴になる。消費者向けサービスが増加している理由は、前述のとおり利用者(消費者)の情報を収集することと広告料モデルの親和性が高いためである。
従来のASPはパッケージ型ソフトウェアをオンライン版に置き換えたものが多く、アプリケーション間の連携が弱く、機能やUIのカスタマイズ性が乏しいといった点が弱点とされていた。またソフトウェアの機能をモジュール化し、ネットワーク経由で連携できる手段としてWebサービスが提唱されたが、接続手続きの煩雑さといった理由から広く普及するまでには至っていない。サービス型ソフトウェアではGoogle、Yahoo!、Amazon、eBay、はてななどがWebサービスAPIを公開し、これらがRESTによる軽量でゆるやかな結合手段を提供にしたことから、消費者側から沸き起こる形で数々のマッシュアップサイトが誕生した。従来のASPやパッケージ型ソフトと比べ、ソフトウェアモジュール間の結合度が低い点がWeb 2.0時代におけるサービス型ソフトウェアの特徴である。