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基盤技術で占うSaaSの未来
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第1回:「SaaS」という言葉は5年後にも使われているか

著者:システムインテグレータ  梅田 弘之   2007/10/31
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5年後に「SaaS」は…

   「SaaS(注1)は、ASP(注2)とどこが違うの?」

   この素朴な質問に対して、いろいろな理由を並べてその違いを説明している人をみると、その昔「SIS(注3)は、MIS(注4)と全然違う」と、IT企業やマスコミがこぞって主張していた光景を思いだします。

   もっといえば、その前後にもDSS(注5)やBPR(注6)なども登場しており、新しい言葉が現われては消えている様子がうかがえます。本質は一緒なのに視点を変えただけで「従来のやり方を否定して、新しい名前でアピールする」というのはいつの時代でもビジネスの常道なのでしょう。
※注1:SaaS
Software as a Service。ソフトウェアをサービスとして提供するビジネス(2006年頃〜)

※注2:ASP
Application Service Provider。アプリケーションをサービスとして供給するビジネス(1998年〜1999年頃)

※注3:SIS
Strategic Information System。戦略情報システム(1980年代)

※注4:MIS
Mismanagement Information System。経営情報システム(1960年代後半)

※注5:DSS
Decision Support System。意思決定支援システム(1970年代後半)

※注6:BPR
Business Process Reengineering。業務革新(1990年代)

   ただ、すべての言葉が一時的な流行に終わるわけではありません。言葉が消えていくのは、その指し示すビジネス形態が思うような効果をあげられなかった場合です。例えば同じような略語でも、ERPやCRM、ECなどのように実態をともなって成功している用語は消えずに使われています。

   失敗のレッテルを貼られて消えいく言葉も、その本来の目的は非常に正しく、魅力的なアイデアに富んでいます。何らかの理由で定着しなかったとしても、その本質のすばらしさはきちんと認めるべきです。

   一方、新しく誕生する言葉も、単に名前を変えて再登場するだけではありません。前のモデルの本質を理解し、その良さを引き継いだまま、新しい時代の技術やトレンドのもとに進化した形で出現するのです。だからこそ、みんなの期待がもう一度寄せられて、一大旋風を巻き起こせるのです。

   そんな視点で、5年後にSaaSという言葉が使われているかを考えるとちょっと面白い気分になります。みなさんは、どう予想しますか?


SaaSはASPとどこが違うか

   初期の頃は「SaaSはASPとは別物」と主張する人が多く、その説明を聞くたびに「どこが違うんだよ」という疑問がぬぐい切れませんでした。最近では「SaaSはASPの進化系」という意見が圧倒的に増えてきました。そして「Web 2.0」という言葉にあやかって、「SaaS=ASP 2.0」だという説明があちこちでなされ、ようやくみんな納得しているように思えます。

   しかし「別物ではなく進化系」という解釈が腑に落ちただけで満足していてはいけません。SaaSとASPの違い、つまりASP 2.0がASP 1.0からどのような点でバージョンアップを遂げたかをきちんと理解することにより、SaaSをこれからのビジネスにどう活用できるかというような構想が浮かびます。

   表1にSaaSとASPの主な違いを一覧にしました。

項目 ASP SaaS(=ASP2.0)
運営母体 単独 マルチベンダー(マルチテナント)
トレンド Suite製品 Best of Bleed(優秀アプリケーションの組み合わせ)
技術基盤 DOA/OOA SOA(Service Oriented Architecture )
視点 ベンダー都合 ユーザ視点
データ連携 なし 必要(アプリケーション間のデータ連携)
開発環境 なし 提供(API、開発ツール、カスタマイズ性)
IT環境 Web 1.0 Web 2.0
ユーザビリティ(Ajaxなどを利用)
マッシュアップ、マイメニュー
RSS、SNS、ウィジット/ガジェット・・・

表1:SaaSとASPの主な違い

   個々の項目で決定的な違いがあるわけではないのですが、全体としてみると8年間の時代推移と進化具合がわかってきます。

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システムインテグレータ  梅田 弘之
著者プロフィール
株式会社システムインテグレータ  梅田 弘之
東芝、住商情報システムを経て1995年にシステムインテグレータを設立。常駐・派遣主体の労働集約的な日本のソフトウェア業の中で、創造性にこだわってパッケージビジネスを行っている。「アプリケーションは日本の方が上」と信じ、日本のIT産業が国際競争力を付けるためにやれることはやろうと決意している。


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