クライアント型SOAの実例
『速販盛』の紹介
ここでは、後半部分で説明する『クライアント型SOAの事例』をより理解しやすくするため、『速販盛』の概要に触れてみたいと思います。
開発背景
当時は大規模ECストアが増加してはいましたが、有力で本格的な統合型一括業務管理ソリューションはそれまでに存在していませんでした。そのニーズを捉えるものとして『速販盛』が大規模ECストア向けの業務管理カスタム・ソリューションとして登場したのです。
概要
『速販盛』は受注管理・商品管理・配送管理・決済管理・発注管理・在庫管理・CRM(顧客管理)などの大規模ECストアが業務遂行に必要な一連の機能を連携し、かつ自社内基幹システムや自社サイトおよび主要ECモールなどのWebサーバとシームレスに連携することができます。
また独自の業務処理などでカスタマイズを必要とする場合、ソフトウェアがコンポーネント化されているため、コンポーネントの部分変更で必要に応じたカスタマイズができます。このことから、迅速かつ低価格での独自業務処理を実現することが可能となります。これらの業務処理はビジネスが拡大するとともに拡張を余儀なくされますが、将来的にシステムの改変が発生した場合でも柔軟に拡張をすることが可能となります。
それでは、『速販盛』を活用した国内初のクライアント型SOAの実装事例を紹介します。
クライアント型SOA事例紹介
実際にECストアにおける国内初のクライアント型SOAが採用された事例を解説します。ECモール出店企業向けソリューションを通して、クライアント型SOAの利点を紹介します。
インテリアオフィスワン社とシステム開発依頼の背景
採用事例を紹介する前に、採用企業であるインテリアオフィスワン社およびシステム構築依頼の背景を説明します。インテリアオフィスワン社は年間成長率178%を誇る企業です。
当時インテリアオフィスワン社は、今後の更なる売上拡大のために出店先の拡大を計画していました。ECモールなどの出店先を増やすことが確実に売上拡大につながると、一般的に考えられていました。しかし、インテリアオフィスワン社はただ出店先を拡大するだけではなく、他のECストアが抱えている問題点である「出店先の拡大による業務負担を軽減する」ことが必要だと考えていました。
ECストアが出店先を増やせば、ECモールごとに違う「データ処理」や「業務作業」を個別に処理しなければなりません。この作業負担増を回避するため、下記の要求のうえでシステム構築を依頼しました。
- ECモールごとの異なる管理画面がストアの実際の処理と異なる
- 複数のWebサイトに接続のわずらわしさを軽減したい
- 複数台のPCから利用される
- 他のモールへの多店舗展開を考えている
- 自社サイトへの出店を計画している
- システム管理の負担はなるべく少なくしたい
- ECモールごと個別に行っている処理を統一して行いたい
- 処理のたびのECモールへの接続を簡単にしたい
- 受注データ、商品データの共有を行いたい
- 将来的な出店時のシステムの機能拡張を容易に行いたい
- メンテナンスが簡単である
- 業務・システム上の変更の予測
- 業務・システム上の変更の予測ポイントは変化する部分を見極める作業になります。IdbAで実装するクライアント型SOAでは、コンポーネントとSOAにおけるサービスの定義が非常に近いものになります。『速販盛』はECモール運営用のフレームワークとして開発を進めたこともあり、「ECモール」が1つのキーワードとなりました。
- 「ECモール」というキーワードを考えるにあたり、複数の出店先によってストアが増減するであろうということを念頭におかなければなりません。そのため、ECモールごと固有に作成しなければならない機能をまとめ、1つのサービスとして切り出しオートコンポーネント(注)を作成することにしました。将来のサービスの変化に対して、ここでは大まかな枠組みが捕らえられていれば問題ないと考えたのです。