生産性が高いDevOpsエリートチームになるためのヒント

2022年12月22日(木)
シャロン・ゴーディン(Sharon Gaudin)ムン・チフン (翻訳者)
DevOpsで生産性が高いチームは「エリートチーム」と評されます。生産性の測定にはどのような指標が使われるのか、エリートチームになるための6つのヒントを解説します。

はじめに

あなたの会社にDevOpsチームがいるとしたら、生産性が高い「エリートパフォーマー」ですか? それとも生産性が低い「ローパフォーマー」ですか?

GoogleのDevOps研究および評価チームであるDORA(DevOps Research and Assessment)の「State of DevOps 2021」レポートによると、エリートパフォーマーとローパフォーマーには大きな違いがあります。チームの回復力、効率性、信頼性が転換点となり、ビジネスの競争力を高める能力に直接関係しています。

(透明性の観点からの補足として、GitLabは当レポートで数多くいるスポンサーの1社でした。また私たちのDevOpsプラットフォームにおけるDORAメトリクスを盛り込んでいるため、チームのパフォーマンスを比較し、それぞれが抱えるDevOpsライフサイクル量を確認できます)

本題に戻りましょう。エリートチームに参加することの個人的な利点は(ここは看過できないところです)、一流企業で雇用される能力と同様に、会社の価値と給与が上昇する可能性が高まることです。

それでは、DevOpsのエリートチームとはどのようなチームで、そこに到達するには何が必要なのかを見ていきましょう。

エリートチームであることの利点

前述したDORAのレポートによると、エリートチームが一貫して実行できる特定の事柄があります。ここで、いくつかの大きな目標を見てみましょう。

●より頻繁にデプロイする

エリートパフォーマーは、ローパフォーマーよりも973倍も頻繁にコードをデプロイすると調査で指摘されています。目を疑うかもしれませんが、973倍以上なのです。パフォーマンスの低い企業は変更のリードタイムに6か月以上も必要だと述べています。

対照的に、エリートチームは1時間しか必要としません。計算すると、エリートチームはコミットからデプロイまでのリードタイムがローパフォーマーのチームよりも6,570倍高速です。

●回復が早い

安定性に関しても、ローパフォーマーとエリートパフォーマーの間に大きな差があります。DORAでは、エリートパフォーマーがサービス復旧までにかかる時間が1時間未満であることに注目しています。

●変更失敗率の低さ

変更の失敗率で見ると、上位のパフォーマーと下位のパフォーマーの間に3倍の差があります。つまりエリートパフォーマーの変更が失敗する可能性は3分の1とも言えます。

エリートチームになるためのDORAのヒント

それでは、どうしたらエリートチームになれるのでしょうか。それには、以下のようなことを目標にすると良いでしょう。実現するためのヒントも解説します。

1. ハイブリッド環境とマルチクラウド環境を賢く利用する

ハイブリッドクラウド環境またはマルチクラウド環境のいずれかを使用しているDORAの調査回答者は、これらのクラウド環境を使用していない回答者よりも会社のパフォーマンス目標を達成する可能性が1.6倍高いという結果になりました。例えば、マルチクラウドユーザーは、それぞれのクラウドプロバイダーが持つ独自の利点を活用して、より高い可用性を実現できています。

2. クラウドをどのように実装するかが重要になる

ビジネスニーズに対応できるようになると、クラウドをどのように採用し実装するかで大きな違いが生じてきます。米国国立標準技術研究所(NIST)のクラウドコンピューティングにおける5つの基本要素(オンデマンドのセルフサービス、広範なネットワークアクセス、リソースプール、迅速な弾力性または拡張、サービス測定)を順守すると多くのメリットがもたらされます。

DORAは、はNISTが掲げたクラウドの基本的な特性をエリートパフォーマーがすべて満たしている可能性が3.5倍高いと指摘しています。

3. DevOpsとSREを相互補完させる

トップレベルのDevOpsプロフェッショナルは、DevOpsとSRE(サイト信頼性エンジニアリング)のどちらかを選択する必要がないことを理解しています。それらはうまく連携できるからです。DORAレポートでは「エリートパフォーマーはSREプラクティスの使用を報告する可能性がローパフォーマーの2.1倍」と指摘しています。

加えて「しかし最高レベルで活動しているチームでも成長の余地があります。私たちが調査したなかで、自分のチームがすべてのSREプラクティスを完全に実装していると答えたのは、エリート回答者の10%だけでした」とも指摘しています。

4. 文書化していることを確認する

マニュアルからコードのコメントまで、すべてを含むドキュメントの作成と、DevOpsチームの成功との間には直接的な相関関係があります。堅実なドキュメントは正確で、最新で、包括的で、検索可能で、よく整理されていて明確です。DORAレポートは適切なドキュメントを備えたチームは、信頼性の目標を達成する、あるいは上回る可能性が2.4倍高く、クラウドを完全に活用する可能性が2.5倍高いことを指摘しています。

5. 開発全体にセキュリティを組み込む

DevOpsではセキュリティについて多くのリップサービスがありますが、最高のチームは高いデリバリーと運用パフォーマンスが、開発プロセス全体でセキュリティのプラクティスを統合していることと直接関係していることを理解しています。セキュリティレビューはすべてのフェーズで組み込まれ、すべての主要機能に適用されている必要があります。また、セキュリティのプロフェッショナルが計画と開発に参加し、セキュリティテストを自動化する必要があります。

6. チームの文化に注意を払う

何においても「文化」が大事です。業界の調査を見ると、一貫して開発現場の文化がITパフォーマンスを左右する最大の要素の1つであることを示しています。帰属意識と包括性を持ち、協力的かつ機能横断的に作業する専門家は、より高いソフトウェアデリバリーと運用パフォーマンスを生み出します。

おわりに

DORAレポートを見れば、DevOpsプロフェッショナルのエリートチームになることは達成可能な目標であることが明らかです。レポートによると、エリートプロフェッショナルの割合が近年劇的に増加したことを表しています。2018年のわずか7%から2021年には26%(調査対象は1,200人)に増加しています。

エリートチームを目指すゲームに参加しますか。それともゲームには参加せず、取り残されるほうを選びますか。

著者
シャロン・ゴーディン(Sharon Gaudin)
GitLab Senior Content Marketing Manager
「Computerworld」「Network World」「InformationWeek」などのテクノロジー系メディアの記者として、アプリケーション開発、セキュリティ、AI、ロボット、量子コンピュータなどについて記事を執筆。その後、ウスター・ポリテクニック・インスティチュート(WPI)のコミュニケーション学部でリサーチ・ライターを務め、現在に至る。
著者
ムン・チフン (翻訳者)
GitLab合同会社 アカウントエグゼクティブ ミッドマーケット 日本/韓国

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