「OpenStack Summit May 2015 Vancouver」レポート #6(Breakout Session、OPNFV)
今回は、OpenStack Summitで行われたBreakout Sessionの中から、いくつかピックアップして最新情報をお伝えします。ちなみに、全てのBreakout Sessionは動画ですべて公開されているので、そちらも参照してください(https://www.openstack.org/summit/vancouver-2015/summit-videos/)。
また、今回注目を集めた「OPNFV(Open Platform for NFV)」というOSSコミュニティのトラックについてもレポートします。
Demystifying Logs in OpenStack Clouds
OpenStackでは様々なコンポーネントから大量のログが出力されるため、障害発生前後のログ追跡が困難です。これに対してCiscoでは、同時刻に発生する各種のエラーは同一原因であるケースが多いこと、障害発生時には通常時よりも多くのメッセージが出力されることに着目し、BigDataの分析手法を使ってOpenStack基盤のログ解析を効率化しています。
ログをどのように扱って運用にフィードバックしていくかは重要な技術であり、動向に注目です。
Service Oriented Deployments at Scale in an OpenStack Public Cloud
Rackspaceは2012年にOpenStackのIaaS基盤を導入して以来、IaaS基盤のアップグレード(バージョンアップ)という問題に悩まされてきました。
同社では現在、Jenkins、Ansible、Githubを活用して、サービス無停止のIaaS基盤の自動アップグレードシステムを運用しています。OpenStackを知り尽くしたRackspaceのやり方という意味で非常に興味深い取り組みです。
CloudKitty an Open Source rating and chargeback component for OpenStack
「Ceilometer」はユーザのリソース利用を定期的に記録し集計するメータリング機能を提供しますが、OpenStackにはこの情報を元に課金機能を提供するコンポーネントがありません(過去に提案された実装はあったが不採用)。
こうした中、Objectif Libre(フランスのOpenStack企業)が「CloudKitty」を公開しました。CloudKittyはKeystoneのテナント情報とCeilometerの統計情報を元に、ユーザやクラウド管理者に課金機能を提供します。既に複数の商用サービスでの実績があり、2015年中の公式プロジェクト化に向けて開発・提案活動を進めているそうです。
「OpenStackだけではクラウドサービスはできない」とよく言われますが、足りないパーツがオープンソースでそろってくるという流れがあり、CloudKittyもその一つです。
OpenStack基盤のバージョンアップ
1年程前から多くの企業がOpenStackを採用し始め、各社でOpenStackの新バージョン対応に取り組んでいます。今回のOpenStack Summitでは、Symantec、Time Warner Cable、RedHatがOpenStackのバージョンアップ事例を紹介しました。それぞれが異なるアプローチを採っており、比較してみるのも面白いと思います。
Symantec
新バージョンのOpenStackをインストールした制御サーバを別に用意し、旧制御サーバと切り替えるという手法を紹介していました。
Time Warner Cable
既存のOpenStack制御サーバ(3台構成)を順次バージョンアップするという手法を紹介していました。今後はPythonの擬似仮想環境(VirtualEnv)を使ったアップグレードを検討しているとのこと。
RedHat(旧eNovanceメンバー)
OSのソフトウェアパッケージ管理(apt、yum)によるOpenStackのバージョンアップでは1サーバあたり最大20分程度がかかりますが、OpenStackがインストールされたファイルシステムイメージを転送する場合は1サーバあたり20秒以下で済むということでした。
また、RedHatではソフトウェアバージョンアップ後のOpenStack全体の設定変更をAnsibleで行っています。
OPNFV(Open Platform for NFV)
昨年春のOpenStack Summit(アトランタ)でAT&TがキーノートでNFV(Network Function Virtualization)を紹介して以降、NFVの話題が増えてきています。
今回もNFVに触れるセッションは数多くありましたが、中でも注目すべきは「OPNFV(Open Platform for NFV)」というOSSコミュニティのトラックが設けられたことです。このトラックでは計6セッションに渡ってOPNFVの活動が紹介されました。
OPNFVは50社以上が参加するコミュニティで、NFVのプラットフォームの実現を目指すオープンソースプロジェクトです(www.opnfv.org)。NFVでの利用を目的にOpenStackやOpenDaylightなどを組み合わせて開発・検証を行うのがミッションです。"Upstream First"という考えに基づき、必要な開発はUpstreamとなるOpenStackやOpenDaylightで先行して行うと強調していました。つまり、OPNFV独自のブランチやフォークは作らないということです。「OPNFVが独自にOpenStackを拡張していくのでは?」という懸念を払拭し、コミュニティの協力を得たいということでしょう。
さらに、アメリカ・ヨーロッパ・中国にある11のテスト環境が紹介されました。OPNFVで開発したプラットフォームは複数の環境で試験することになっており、特定のハードウェアに依存しないとのことです。このように、コミュニティと連携しながら、ベンダーニュートラルに進めていくというスタンスが説明され、おおむね好意的に受け入れられたようです。
具体的な取り組みとしては、HA、ポリシー、障害管理、資源予約などの6つのプロジェクトがセッションを行いました。障害管理のプロジェクト(Doctor)はNECのメンバーがPTL(Project Team Lead)を務めて頑張っています。OPNFVで実現しようとしている機能は、NFVだけにとどまらず、エンタープライズやクラウドサービスでも有用なものが多くあります。これからの動向に注目です。
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