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OpenStackDays Tokyo 2017、コンテナへの応用が目立つOpenStackの現状

2017年8月30日(水)
松下 康之
日本で唯一のOpenStack Foundation公式のイベント、OpenStack Days Tokyo 2017が2日間にわたって開催された。

2017年7月20日、21日に、都内にてOpenStackの公式イベント「OpenStack Days Tokyo 2017」が開催された。この記事ではキーノートセッションの概要と、コンテナ関連のセッションを紹介しよう。

初日はベンダーサイドのセッションが中心

最初に登壇したのは、OpenStack FoundationのCOOであるマーク・コリアー氏だ。コリアー氏はOpenStackの利用の拡大を訴求。特にFortune 100としてリストアップされる企業のうち、すでに半数がOpenStackを利用していることを説明し、利用が順調に増えていることを訴えた。またエンタープライズITにおいては、オープンソースソフトウェアを最初に選択することが当たり前になったことを紹介し、その中でもプライベートクラウドのインフラストラクチャーについては、OpenStackがデファクトスタンダードとして認知されていることを強調した。

CPUのコア数で言えば、500万コアがOpenStack上で利用されているという。エンタープライズの中では機械学習、深層学習に代表される人工知能、そしてビッグデータの領域においては、オープンソースソフトウェアがイノベーションをリードしていると解説した。

OpenStack FoundationのCOOであるマーク・コリアー氏

OpenStack FoundationのCOOであるマーク・コリアー氏

しかし、利用の拡大とともに課題も見えてきたとコリアー氏は語る。その一つは「OpenStackが複雑になりすぎた」ことだという。OpenStackは当初、コアコンポーネントを全て揃えて一つの「OpenStack」と定義されていたが、プロジェクトの拡大に伴い、各コンポーネントは「コアサービス」と「ビッグテント」に分割され、ユーザーはコアサービスと必要なビッグテントを選ぶように方針が転換された。この方針転換は、OpenStackのあるコンポーネントが結果的に自然淘汰されることをFoundationが認めたということになる。しかしコンポーネントとして機能を削ったことでプロジェクト自体の衰退が起きた結果、ユーザーに混乱を招いていることも暗に認めたということだろう。

コリアー氏によれば、現在は第2世代のプライベートクラウドのイノベーションが起こっており、技術的にもIPv6、ローカライゼーション、ベアメタル、NFVやOPNFVなどのエリアに大きな進展があったという。また全てをサーバー側で行うのではなく、拠点及びデバイスに近い場所でコンピュートノードを実装するエッジコンピューティングが起こりつつあるという。

一つの例としてコリアー氏が挙げたのは、ベライゾンが提供する「OpenStack-in-a-Box」だ。これはリモートオフィス/ブランチオフィス向けにx86サーバーをアプライアンス化したネットワークコントローラーで、拠点内におけるSD-WAN、セキュリティ、ルーティングなどのネットワーク機能を実現するものだ。この中でOpenStackが稼働しており、「OpenStackはサーバールームに存在するもの」という既成概念を覆すものとして紹介された。

コリアー氏は、OpenStackの導入は進んでいるが、現状では導入やアップグレードなどのタスクを社内のエンジニアでこなせる企業が先行しているとのことだ。そして、これからはもっと中小(社内のリソースが少ない)企業でも使えるようにするべきだと提言した。

この「大企業しか使えないOpenStack」は、コリアー氏の後に登壇したMirantisのCMO、ボリス・レンスキー氏の最近のプレゼンテーションからも読み取れる。Mirantisによれば、現状のOpenStackには様々なディストリビューションが存在し、それらの間で依存性や整合性を取りながら導入するのは非常に難しく、結果的にディストリビューションを提供しているベンダーにロックインされることになると強調した。

実際にはMirantis自身がMirantis OpenStackというディストリビューションを提供していた企業だったわけだが、最近の動向としては企業がアプリケーションを稼働させるプラットフォームとして仮想マシンベースのものから、DockerとKubernetesをベースにしたマイクロサービス化したコンテナオーケストレーションに移行しつつあるという。またこれに合わせて、OpenStackのディストリビューションをサブスクリプションで販売し、それを6ヶ月毎の新しいリリースに合わせてアップデートするという方向を止めて、まずMirantisがインフラストラクチャーをOpenStackベースで構築し、それを運用する中で顧客側に運用を移行するという方法論にシフトした、ということを意味している。

MirantisのCMOであるボリス・レンスキー氏

MirantisのCMOであるボリス・レンスキー氏

これはベンダーが検証したOpenStackのコンポーネントを組み合わせて、ベンダー独自のディストリビューションとして提供する姿勢から、オープンソースソフトウェアの中から顧客にあったコンポーネントを採用するという方向転換と言って良いだろう。最近のMirantisのプレゼンテーションを見ても、かつてあれほど訴求していたFuelというインストーラー(Mirantisの表現では、Life cycle management tool)を推すことは皆無になり、代わってKubernetes、SDNではOpenContrailなどのオープンソースソフトウェアをコアにしていることからも見て取れる変化だ。

その後、Cloud Foundry Foundationのスピーカーやレッドハット、ジュニパーネットワークスのブレイクアウトセッション、Cloud Foundryに特化したトラック、OPNFVに特化したトラックなどが行われた。初日は主にベンダー側の声を聴くという位置付けだったように思われる。

午後のセッションで興味深かったのは、OpenStack FoundationのVP of EngineeringのThierry Carrez氏による「OpenStackはコンテナの世界に何をもたらす?」と題されたセッションだ。

OpenStack FoundationのVP of EngineeringであるThierry Carrez氏

OpenStack FoundationのVP of EngineeringであるThierry Carrez氏

アプリケーションがよりクラウドネイティブになるに従って、クラウド上のワークロードを仮想マシン上のアプリケーションからより軽量でマイクロサービス化されたコンテナに移行したいと思っているエンジニアは多いだろう。Carrez氏のセッションでは、「OpenStackの上でコンテナオーケストレーションをどうやるのか?」について複数の選択肢があることを解説した。1つ目はMagnum、2つ目はZun、そして3つ目にStackubeという新しいプロジェクトを紹介し、それぞれの特徴を解説した。

新しいコンテナ向けプロジェクトのStackube

新しいコンテナ向けプロジェクトのStackube

OpenStackとコンテナに関するサマリー

OpenStackとコンテナに関するサマリー

またOpenStackとコンテナの相関関係も「OpenStack in Container」としてOpenStack Ansibleを使った実装、Kollaを使った実装、そして「OpenStack on Kubernetes」としてOpenStackをKubernetesのクラスター上に実装するKolla-Kubernetes、OpenStack Helmの2つを紹介した。ここで分かるように、様々な新しいプロジェクトがエンドユーザーやベンダーの垣根を超えて次々に生まれており、ユースケースによって使い分けるというレベルではなく、そのオープンソースソフトウェアのコミュニティの状況、開発のスピードなども考慮して選択をする必要があるということを感じさせる解説となった。OpenStack Foundationとしても「コレが正解」という答えを持っているわけではなく、やはりエンジニアが実際にコミュニティの中で検証と選択を繰り返すしか道がないと思わざるをえない解説となった。

ユーザーサイドの発表が中心の2日目

2日目は1日目とは打って変わって、ドワンゴ、富士市役所、LINEなどのユーザーサイドの担当者がキーノートに登壇した。ドワンゴやLINEという日本のインターネットサービスのリーディングカンパニーから、地方自治体という保守的な組織までがOpenStackのユーザーであると示すことによって、利用の拡がりを見せるという意図が感じられたキーノートであった。

ドワンゴは開発環境としてOpenStackを利用し、一方の富士市役所は、これまでCloudStackで稼働していたクラウドをオンプレミスのインフラストラクチャーとして採用したという。

ドワンゴの宮本卓氏

ドワンゴの宮本卓氏

富士市役所の山田勝彦氏

富士市役所の山田勝彦氏

2日目の午後には株式会社サイバーエージェントとヤフー株式会社のOpenStack上でのコンテナ環境に関するセッションが行われ、ここでもインフラストラクチャーであるOpenStackと、その上で動かすワークロードの組み合わせによって様々な可能性(と失敗)があり得ることを示したと言える。

特にサイバーエージェント、アドテク本部の長谷川誠氏と青山真也氏によるKubernetes環境の実装は、社内のネットワーク環境の制約や認証基盤との連携など、単純にコンテナを動かすだけでは収まらない難しさを示したといえる。サイバーエージェントの選択は、MagnumでもZunでもなく、Heatのテンプレートをひたすら書くことで解決したと言う。

サイバーエージェントのKubernetesクラスター on OpenStackの概要

サイバーエージェントのKubernetesクラスター on OpenStackの概要

いわゆるAWSでいうところのCloudFormationをOpenStack上に実現したとも言えるHeatだが、Magnumがより抽象化した上位のサービスだとすると、Heatはより下位のサービスとも言える。これを使うためにHeatのテンプレートを書くことで、コンテナのオーケストレーションを実現するのは先祖帰りとも言えるが、ソースコードがオープンなOpenStackであればこそできたことだろう。全ての企業がサイバーエージェントと同じことを行えるとは思えないが、選択肢として原始的ではあっても安定したコンポーネントを使ってリスクを下げながら、目標を達成するという姿勢は評価されるべきだろう。

2日目はIoTのエッジサイドでのコンピューティングを提案しているOpenFogコンソーシアムの特別トラックや、標準的なx86サーバーを活用するOpen Compute Projectに関するセッションなど、OpenStack以外のオープンソースプロジェクトとも相乗りする形の講演が複数開かれた。これは、OpenStackがOpenStackというソフトウェアだけにとどまらないで様々なオープンソースプロジェクトとも連携しながら、多様な応用や連携を模索している証拠とも言えるだろう。

2日間のカンファレンスを通して振り返ると、単にインフラストラクチャーをOpenStackで構築したというユースケースはほぼ姿を消し、より上位のビジネスにインパクトを与えられるアプリケーションをどうやって効率良く、安定的に提供するべきか? というポイントを議論する段階に移ってきたように思える。同時にOPFNVのように、OpenStackを使う側の声にも積極的に耳を傾けようとする意図を強く感じることができたカンファレンスだったといえるだろう。

次の大きなイベントは、11月6~8日にオーストラリアのシドニーで開かれる「OpenStack Summit Sydney 2017」だ。ここでは多くのコンテナ関連のセッションが実施されると思われる。OpenStackを使ってモダンなコンテナベースのクラウド環境を実現したいと考えるエンジニアには、大いに参考になるだろう。

OpenStack Summit Sydney 2017

フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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