OpenStack Summit(Austin)報告会 #tistudy201605開催レポート
6/23編注:記事公開後、一部の画像がリンク切れを起こしていました。お詫びして修正致します。
Think IT 主催による月例勉強会。2回めのテーマはOpenStack。アメリカのオースティンで開かれた OpenStackサミットの報告会でした。
場所は東新宿のイーストサイドスクエアにあるテコラスさんのセミナールームでした。
イーストサイドスクエアはこんなところです。来るのは初めてでしたが、すごいピカピカして高級感あふれるオフィスビルでした! 駅直結なのもいいですねー。
セミナールームの中はこんな感じです。
Ceilometer苦労話(NHN テコラス株式会社 松井大輔氏)
まず最初は、会場のスポンサーであるテコラスの松井さんによるライトニングトークでした。データホテルでのOpenStackの使用事例と、はまりドコロを紹介していました。
「テコラスでは各種リソースの使用状況を確認するためにCeilometerを使っています。データストアにMongoDBを利用してるんですが、このダンプがどんどん肥大化していき、ディスクが溢れるまでになりました。いろいろ解決策を試しましたが、最終的にはデータストアをMongoDBからgnocchi(ニョッキ)に変更するのがよさそうかなと思っています。Mitakaにアップグレードした後に今後検証する予定です。」
OpenStack Summitを振り返る!コントリビュータが見るOpenStackとは?(座談会)
続いて、先日テキサス州オースティンで開かれた OpenStack サミットを振り返る座談会が行われました。
サミットがどんな内容だったかは、こちらの記事「OpenStack Summit Austin 2016 真の勝者はユーザーだ」をご覧ください。
登壇者は次のとおり。いずれも OpenStack の発展に貢献している方たちで、オースティンでのサミットに参加しています。
- 鳥居 隆史氏(NEC)
- 水野 伸太郎氏(NTT)
- 露崎 浩太氏(NTT)
- 元木 顕弘氏(NEC)
- 宮原 和大氏(NTT)
- 加藤 智之氏(富士通)
- 大道 憲一氏(NECコーポレーション・オブ・アメリカ)
そして司会は以下の二人です。
- 松下 康之(Think IT編集記者)
- 玉置 伸行氏(日本仮想化技術株式会社)
キーパーソンがいると話が早く進む
まずは、サミットに参加した感想から。
「みんな、サミットどうでした? 宮原さんどう?」
編注:宮原さんはストレージのコンポーネントであるSwiftの開発をしています。
「よかったことと、悪かったことがありましたね。「よかったのは、会場にキーパーソンがいると話が進むのが早いということです。例えば、Swiftの階層化機能の話をしているときに、暗号化機能との絡みでうまくいかないんじゃないかという話になった。でもその場に暗号化機能の提案者がいたので、問題を共有して、解決の方法までその場で目処がたちました。」
「そりゃすごい。その暗号化の担当者はたまたまその場にいたってこと?」
「そうです。逆に良くなかったのは、キーパーソンがいないとなかなか議論が進まないということです。例えば、ある案件について核となる人が今回参加できなかったんですが、そのために議論が進められないということがありました。」
「その人はどうして来れなかったの?」
「会社の仕事が忙しかったみたいです。」
エンジニアあるあるですね。会社の仕事でなかなか抜けられない。それはそうと、そういう世界中の人が一同に会した舞台で議論を進めて行くのってかっこいいなーと思いました。確かに、ふだんメーリングリストとかで世界中の人と議論はしてるんだろうけど、実際に一同に会した舞台でっていうのがかっこいい。まさにサミット。
まとめ:キーパーソンがいれば話が早いが、逆にいないとちっとも進まない。
6ヶ月のリリースサイクルは早い? 遅い?
「OpenStackのリリースサイクルは6ヶ月ごとになってるけど、これって早くないですか? 会場に聞いてみましょうか。早いと思う人?(そこそこ手を挙げる) じゃあ遅いと思う人は?(ほとんど挙がらない)やっと運用に慣れてきたと思ったら半年後に次のバージョンが出る。ユーザーはそんなに追いかけられないんじゃないかな。みんなはどう思う?」
「Swiftはもっと早くて2〜3ヶ月サイクルになってます。少なくとも作ってるほうからすると、そのサイクルでも辛くない。」
「ユーザーにとってアップグレードはめんどくさい印象があるんじゃないかな?」
「いま、アップグレードを簡単にするためのツールが作られてます。それから、たとえばコンテナを使うやりかたもある。あとは、ディストリビューターがどういうパッケージにしてどうサポートするかは、そちらに任せている面もあります。」
まとめ:ユーザーは今のリリースサイクルは早いと思っているが、簡単なアップグレードの手順や体制もサポートされつつある。
各社が独自拡張するのをどう制御する?
ここで会場の参加者からの質問コーナーになりました。
「各社がコンポーネントを独自に拡張し、APIがバラバラになるような問題もあるように思います。なにか対策はあるでしょうか?」
「開発のロードマップを作りましょうという話はありました。ワーキンググループも組織されたんですが、ちゃんと機能はしていません。なぜかというと、そもそもロードマップ型のトップダウンの開発体制はとっていないんですね。ユーザーからのリクエストをもらってそこに優先順位をつけるといったスタイルです。」
「ただし、コミュニティによってボトムアップ的なロードマップも作られました。2サイクル後に何が優先度高く進められるかが、一般ユーザーに見えるようになりました。そこは前進だと思います。」
「メインとなるメンバーでは優先度はつけてます。ただし、High、Lowだけ。Mediumとかもっと細かい優先順位を用意したとしても、実際問題として差をつけるのが難しい。」
まとめ:現実的なロードマップが見えるようになってきている。
Goのサポートについて
「OpenStackはPythonで書かれていますが、Goも使いたいという話が出てきています。具体的には、Swiftの実装で、RackSpace社がPython特有の問題を引き当ててしまいました。その問題を、 Goのネイティブスレッドだと簡単に回避できるんです。」
「OpenStackは大量のPythonのライブラリを使っています。そのライブラリ群のバージョンが上がると、非互換問題でOpenStackがぶっ壊れることがよくあるんです。いわゆる金曜日リリース問題。それと同じことがGoでも起きたらやっかいですね。」
「RackSpaceはGoをサポートしないと引き上げるとまで言ってるんですね。だからベンダーがきっかけとなって進んでいく事例の1つになるのかもしれません。」
まとめ:Goのサポートについてはまさに議論中
動画で公開されるのに現地に行く意味は?
「サミットのセッションの様子って動画で公開されますよね。つまり日本からでも見ることができる。それでもやっぱり現地に行ったほうがいいのかな?」
「ぼくは現地に行きましたが、マーケッターとして、肌感覚を大事にしたいと思っています。現地でしか分からない温度感もあるし、何より参加者としてコミュニケーションもとれる。ぼくはもう半年後のバルセロナを予約しちゃいました。」
まとめ:玉置さんは半端じゃない
全体のまとめ
まさに中心で開発しているメンバーによる内部事情のぶっちゃけ話という印象でした。開発者やベンダー、ユーザーなど登場人物がたくさんいるなかで、どう現実的に話を進めていくのか。コミュニティの中でどういう不満があるのか、それをどう改善しようとしているか。中の人の顔や事情が見えると、ユーザーとして製品を使う時の気分もちょっと変わるなと思いました。
連載バックナンバー
Think ITメルマガ会員登録受付中
全文検索エンジンによるおすすめ記事
- Swift最新動向:Go言語実装と暗号化が導入間近。File Systemインテグレーションがキーに!
- OpenStackコミッター座談会~「OpenStack Summit Tokyo 2015に向けて」
- 【速報】世界60ヶ国から7,500人以上が参加「OpenStack Summit in Austin 2016」開催中、ほか
- 非IT企業にも利用が広がるOpenStack、ポスト東京サミットに向けて
- OpenStack Summit Tokyoキーノート初日にヤフー 、NTTグループ、NEC、GMOらが登壇
- Nova最新動向:スケジューラ、セル、ライブマイグレーションの改善は継続、他のプロジェクトとの連携が課題に
- RHEL7やOpenStackなど最新技術が集結するRed Hat Summit 2014 現地レポート(前編)
- Swift最新動向:次リリースではErasure Codeや性能面の強化、メールアーカイブやIoTの事例が拡大
- OpenStackの本格普及を見据えた認定試験「OPCEL」、企業内クラウドを構築運用するエンジニア教育のスタンダードを目指す
- OpenStackのアーキテクチャを理解しよう