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OpenStack運用者の活躍の場:OpsMeetup

2016年6月20日(月)
水野 伸太郎市川 俊一

OpsMeetupとは

最近のOpenStack Summitのデザインサミット会場の看板には「DEVS & OPS」と書かれていますが、この背景をご存知でしょうか? もともとOpenStack Design Summitは開発者が集まり現在取り組んでいる機能の詳細議論や次期開発項目の議論などを行うために始まりました。しかしOpenStackが商用利用されるに伴い、利用者(特に運用者)から「機能が足りない」「運用しにくい」「エラーが多い」などという意見が出てくるようになりました。ところが、OpenStackの機能改善のためには文句を言っていてもだめで、自分で開発者コミュニティに入って提案仕様書(Spec、BluePrint)を書いて承認を得て、さらには賛同者が名乗り上げない限りコードも自分で書かないといけません。全ての利用者・運用者がソフトウェアエンジニアではありませんので、実利用者の声はなかなか開発現場に届かないということが長い間続いていました。「※※の機能がほしいのだけど」「欲しければ自分で作れ」というのが以前のOpenStackコミュニティでしばしば聞く会話でした。

このような声を受け、利用者と開発者との間を取り持つ必要性を感じたOpenStack Foundationは、3年前のPortland Summitのころからユーザにスポットライトを当てる活動を行ってきました。User Committee(以下UC)のリードの元、Superuserマガジン、Superuser Award、SuperuserTVなど数々の取り組みを立ち上げて実際のユースケースや商用導入事例などの紹介などを行ってきました。http://superuser.openstack.org/

このような取り組みの中で立ち上がったのが「OpsMeetup」です。

OpsMeetupはOpenStack Foundationの呼びかけで2014年3月に小さな有志グループとして立ち上がり、2014年5月に開催されたAtlanta Summitで初の大規模イベントとしてOpenStack Summitのプログラムに加わりました。それ以来、年2回のサミット、及びサミットとサミットとの間の中間会合という形で年に4回開催されるイベントとなり、参加者も当初の30名程度から現在は数百名を超える大規模なイベントに発展しています。

OpsMeetupはAtlanta Summitでは一般公演の枠で組まれていましたが、Paris Summitでは単独の会場が与えられ、プレゼン形式だけではなく、特定の課題について情報共有や議論をしたいメンバーが集まるワークグループ形式の会議も行われました。議論が進むにつれ、運用者だけで議論するよりも、開発者も混ぜて議論する方が建設的になるということで、各プロジェクトのPTLやコア開発者を呼んで議論に参加してもらうようにしました。その結果、開発者側でも実際のユーザの生の声が聞けるということで、双方にとって有益な取り組みであるとの認識が高まり、Vancouver Summitから現在のようにDesign Summitと同じ会場でOpsMeetupも開催されるようになりました。

OpsMeetupでは議論だけではなく、具体的なアクションに結び付けることを重視しており、WGという形で運用者としての取り組みを行っています。これには、OSOpsと呼ばれる運用者が開発したツールやスクリプトを共有するためのレポジトリの立ち上げや、tags WGで実施している、OpenStackに運用者目線でのリリースタグを付与する取り組みなどがあります。

Product WGでの取り組み

ユーザからの声を取り入れる取り組みは他にもあります。OpsMeetupとは別に、新しく立ち上がったOpenStackのプロダクト管理チームであるProduct WGにおいて、ユーザからのユースケースをドキュメント化し、OpenStackに必要な機能の抽出やプロジェクト横断での議論を行うための支援を行うという取り組みが行われています。現在公式なユースケースとして以下の5つが議論されています。

  • 仮想マシンの高可用機能(HA for VM)
  • Bare Metal
  • Rolling Update
  • Capacity Management
  • Fleet Management

Product WGではユーザからの声としてこれらのユースケースをcross-projectチームに提示し、ギャップ分析や必要な機能の洗い出しなどを行い、開発側への要望として提案していけるようにしようとしています。現在このワークフローについて詳細化が議論されており、決まり次第前記の5ユースケースが最初の事例として提案されていくことになります。https://wiki.openstack.org/wiki/ProductTeam/User_Stories

Product WGではユーザ目線で求められることが多い全体の開発ロードマップの作成など、OpenStackを「ちゃんとした」プロダクトとして見られるように各種取り組みを精力的に行っています。http://www.openstack.org/software/roadmap/

Austinサミットでの議論紹介

今回のAustinサミットでのOpsMeetupセッションは初日、及び最終日に全部で26セッションあり、最大4トラック並列でセッションが組まれ、それぞれのトピックごとに活発な議論が行われました。

https://www.openstack.org/summit/austin-2016/summit-schedule/#day=2016-04-25&event_types=13,14,15

最終日金曜日に行われたOps Informalセッションでは朝9時から夕方5時半まで丸一日円卓を囲んで30名ほどの運用者が課題やノウハウの共有などを行いました。

以降ではその中でも今回のサミットで新しく始まった取り組みのうち特に筆者が注目したセッションついて紹介します。なお、すべてのOpsセッションの議事メモは以下のetherpadにて確認できます。

https://etherpad.openstack.org/p/AUS-ops-meetup

NFV/Telco

OPNFVの取り組みや、AT&Tの基調講演での発表など、OpenStackをNFVの基盤として利用することが期待され始めており、これらのユースケースや要件を取りまとめるために立ち上げられたWGです。過去にもRedHatやIntelが中心となって立ち上げられたTelco WGがあり、いくつかのユースケースが取りまとめられProduct WGに提案されましたが、時期が早かったためか活動が盛り上がらず、現在活動休止となっています。その代わりとして、実運用者が多く集まるOpsMeetupの場にて、通信事業者が集まり課題を議論するために今回のサミットで本WGが新しく立ち上がりました。

本セッションには30名を超えるメンバーが集まり、90分のセッションの中で通信事業者から見たOpenStackへの課題・要件(性能問題、高可用性問題、監視、スケーラビリティ、仮想ネットワークなど)を中心に議論が展開されました。

今回は主に課題の列挙のみでしたが、今後は具体的なアクションについて議論が行われていくことになります。OPNFVやProduct WGとの関係など関連する活動が複数ある中で、どのような役割分担で進めていくかなど、今後整理すべきことは多くありますが、運用者コミュニティのなかでNFV/Telco課題を議論する場ができたことは、通信事業者のOpenStackに対する期待の高さと、同時に課題の多さを実感できたセッションとなりました。

OpsRecognition

本WGはコミュニティにおけるオペレータからの貢献を評価する仕組みを検討するグループです。コードをコントリビュートする開発者にはATC(Active Technical Contributer)という称号が与えられ、Technical Committeeの投票権や、サミットの参加費の無料化など、コミュニティから評価される仕組みがありました。ATCメンバーがいわゆるOpenStackのコントリビュータといわれており、周囲からリスペクトされる対象にもなっていました。過去のDesignサミットではATCしか入れないサロンが設けられ、お菓子やエナジードリンクが飲み放題という特権が与えられていた時期もありました(今ではフルパスがあればだれでも出入りできるようになりました)。

一方で、ユーザや運用者など、コードの貢献はないものの、コミュニティを活性化する活動や、ユーザとしての課題のフィードバックやユースケース提案など様々な貢献を行っているメンバーも世界中に多くいます。このような活動が活発になるに従い、それらのメンバーをコミュニティとしてどのように評価するか、評価した結果どのような見返りが与えられるべきか、という議論が高まり、WGを作り議論することになりました。https://wiki.openstack.org/wiki/NonATCRecognition#Scope

今回のサミットでは評価する手法について議論が行われ、様々な指標の中から主にUC傘下の活動への貢献を中心としたリストが初期提案として取りまとめられました。

https://etherpad.openstack.org/p/uc-recog-m2-output

現提案の指標は以下の通りです。

  • 公式ユーザグループの運営者
  • UC傘下のWGのアクティブなメンバー
  • OpsMeetupのモデレータ
  • UCが管理するレポジトリへの貢献(User storyやOSOpsレポジトリ)
  • サミットのトラックチェア
  • Superuserへの貢献(記事の投稿、インタビューなど)
  • Review panelへの自薦(手続きは今後検討)
  • ask.openstackのアクティブモデレータ

このような指標が決まり、ユーザとしての貢献が評価されるようになるとコミュニティがますます活発になっていくことが期待されます。

ちなみに、今回のサミットでは実験的に「OPS」のタグが「ATC」や「スピーカー(SPKR)」と同様に参加票に記載されるようになりました。今後はこのタグがついているメンバーもコミュニティに貢献しているメンバーとしてリスペクトされることになると思います。

Future of OpsMeetup

OpsMeetupも中間会合も合わせると今回で10回目となり会議体として成熟してきたため、これまで主にFoundationのメンバーが運営してきた本会合をコミュニティ主導で運用できるようにしようという活動が始まりました。きっかけは今年2月に開催された欧州での中間会合でした。これまで米国でのみ開催されてきたOpsMeetupを欧州でも開催したいという声が欧州のメンバーから挙がり、すぐに欧州内のOpenStackの運用者コミュニティが計画を立ち上げ、英国Manchesterにて開催されるに至りました。

このような主体的な活動を広め、コミュニティが運営する会議体にするというのが本WGの目的です。WGのメンバーは、開催場所の選定や議題、モデレータの調整などを行い、OpsMeetupをコミュニティメンバーで運営するための検討を行います。

今回のサミットでは、趣旨の説明とこの活動に興味を持ったメンバーによるチームの立ち上げのみでしたが、その場で12名のボランティアが手を挙げ、5月17日に開催された最初のIRC会議には25名が参加するなど、活発な活動となっています。IRC会議では、北米、欧州、APACの3つの地域をローテーションして候補地を探すということが決まり、現在次回中間会合の開催地候補の募集が始まっています。これらの議論はopenstack-operatorsのML上で議論されており、最新の状況を確認できます。

Scientific WG

このWGは異色ですが、今回大変盛り上がりを見せたセッションの一つです。OpenStackを研究や学術目的、特にHPC(High Performance Computing)の世界で利用するユーザが集まり課題などを議論する場です。筆者は本分野に明るくないのですが、かなりの盛り上がりを見せていたのでさわりのみ紹介します。

Scientific WGはManchesterの中間会合で議論され、今回UC傘下のWGとして正式に立ち上がりました。今回のセッションにはCERN、NASA、NIST、NeCTARをはじめとする世界の研究機関・大学関係者を中心に50名を超える参加がありました。CERNが以前から大規模にOpenStackを活用してきたことは広く知られていますが、それ以外にも研究者向けのクラウド基盤としてOpenStackが活用され始めていることがわかります。

今回のサミットでは課題の優先度をつけ、今後は優先度の高い4つのフォーカスグループで議論が行われることになりました。

  • Parallel File Systems:クラウド上での分散共有ファイルシステムの利用に関する課題やManilaなどOpenStackプロジェクトとのインテグレーションについて議論
  • Bare Metal:OpenStackを用いたHPCクラスタ管理のための議論
  • Stories:様々なユースケースにおいてOpenStackが利用可能かを検討するためのユーザストーリ、アーキテクチャなどの抽出
  • Accounting:コンピューティングリソースの研究者への割り当て、リソース管理に関する課題を議論

研究・大学関係者が一堂に会する場がこれまであまりなかったので、このようなチームができノウハウが展開されることでCERN以外にも大規模なOpenStackの活用事例が今後出てくることが期待されます。

Fleet Management

システムの構成情報を統一的なインタフェースから扱えるようにして、運用の自動化・オペレーションの自動化を推し進めようという動きも生まれています。構成に関する情報は運用者がそれぞれ独自のシステムやCMDB(Configuration Management Database)を持っていることが一般的であり、これまでもCMDBを共通化する議論がありましたが、標準的なソフトウェアを作っていくというような合意には至っていませんでした。今回、Fleet Managementチームで行われた議論・アプローチは、日々の運用に必要な機能・要件を抽出して、そのインタフェースとデータモデルにつなげようというものでした。大規模な環境を運用しているRackspaceのメンバが中心となってこの活動を進めており、今回のサミットで広くコミュニティからのフィードバック収集や仲間作りを始めたそうです。User Storyとしての要件定義だけではなく、基本的なモデリングの検討も進んでおり、運用を効率化するための基盤的な位置づけになることが期待されます。

Austinサミットでのetherpad: https://etherpad.openstack.org/p/Fleet_Management

User Story: https://review.openstack.org/#/c/299531

日本国内での取り組み

OpsMeetupはこれまで10回を数えますが、実はあまり日本をはじめとしたアジア各国からの参加者が多くないのが現状です。これは会議が主に英語での議論形式で行われるということと、開催地に北米が多く、実運用者がなかなか参加できなかったということがあるかと思います。しかし議論される内容は世界中の運用者にとってとても有益なものであり、国内の運用者もどんどん参加してコミュニティを盛り上げられればと思っております。

このような状況の中、国内の取り組みとして、非公式なOpsWorkshopを2015年12月の沖縄OpenDaysで開催しました。ここでは25名を超える国内有数のOpenStack運用者が集まり、2日間にわたり本家Meetup顔負けの深く激しい議論が繰り広げられました。最後は時間が無くなり、ランチ会議に突入したほどです。

https://etherpad.openstack.org/p/JP-Ops-workshop

このような取り組みを継続し、国内の運用者コミュニティを活性化することで本家OpsMeetupへの参加促進、および国内での本家OpsMeetupの開催に結び付けていければと思っております。

なお、OpsWorkshopの第二弾を7月6日、7日に予定されているOpenStack Days Tokyoの中で実施する予定です。運用者間での情報交換・議論に参加したいと思われる方は是非参加をご検討ください。

https://etherpad.openstack.org/p/JP-Ops-workshop-2

日本電信電話株式会社 ソフトウェアイノベーションセンタ
2011年よりOpenStackを用いたクラウド基盤の商用化に向けた研究開発に従事。2016年度4月より日本OpenStackユーザ会会長を務める。Austin Summitでキーノートの舞台に立てたのが最高の思い出。自宅でペットは飼っていない。
日本電信電話株式会社 ソフトウェアイノベーションセンタ
OpenStackのコミュニティ・アップストリーム活動を担うチームのリード。これまでクラウドや分散ストレージの分野の研究開発に10年以上携わっており、パブリッククラウドサービスの開発設計、マネージドホスティングの技術営業などに従事した経験を持つ。三鷹市在住。

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