「OpenStack Summit May 2015 Vancouver」レポート #3(2日目)
5月18日からカナダのバンクーバーで開催されているOpenStackのクラウドソフトウェア開発者、ユーザ、管理者のための国際イベント「OpenStack Summit May 2015 Vancouver」は、2日目を迎えました。
キーノートセッション
2日目のキーノートセッションでは、OpenStack Foundation COOのMark Collier氏が登壇。Collier氏からは、最初のトピックとして2016年のOpenStack Summit開催地が発表されました。春はアメリカ・オースティン(記念すべき第1回のOpenStack Summitが開催された場所です!)、秋はスペイン・バルセロナです。発表の瞬間は、会場が拍手と歓声で大いに盛り上がりました。なお、既報したように今年10月のOpenStack Summitは東京で開催されます。
続いて、Technology Adoption(技術の採択)とMaturity(成熟度)という2つの軸を用いて、技術が時間とともにどのように変化していくかを示しました。OpenStackによるIaaS環境の中核技術「Nova」は「2010年にExperimental(実験的)からスタートし、現在は他の仮想化技術と同様にMature(成熟化)してきている」と述べ、次のExperimentalとして、コンテナ技術を活用した3つのプロジェクト「Magnum」(コンテナサービス)、「Murano」(アプリケーションカタログサービス)、「Kolla」(コンテナ利用のOpenStackインストーラ)を挙げました。
MagnumはDockerやKubernetesといったコンテナ技術をOpenStack APIを通じてサービスとして提供するためのプロジェクトです。MagnumのPTL(Project Team Lead=開発リーダー)も登壇し、Magnumを用いたコンテナVMの作成デモを行いました。また、Magnumを使うメリットについて、「Heatと組み合わせたコンテナ+アプリケーションのデプロイである」と指摘しました。
Muranoはアプリケーションカタログサービス、即ち一種のPaaS/SaaS基盤であり、OpenStack Dashboard(Horizon)に統合されたGUIが特徴的です。Muranoのコア開発者も登壇し、ネット上からダウンロードしたレシピ(HeatのStack)登録、実行前のレシピ設定、アプリケーション環境構築のデモを行いました。コンテナ技術とPaaSは聴衆の注目度も高く、今後の OpenStack開発の中でも注力されることが予想されます。
また、eBay+PayPal、Pantheon、NASAが登壇し、それぞれ自社の事例を紹介するとともにOpenStackユーザとして開発コミュニティに謝意を示しました。PantheonはDrupalやWordpressといったPHP アプリケーションホスティングを行っている会社で、「すでにRackSpaceのベアメタルクラウド上でコンテナを利用している」と紹介していました。
キーノートの最後には、OpenStack Superuser Awardの発表が行われました。最終候補(Comcast、eBay、中国国立スーパーコンピュータセンター(天川2号)、Walmart eCommerce)の中からComcastが受賞しました。
Breakout Session紹介:Deploying OpenStack with Ansible
キーノートセッションの後に行われたBreakout Sessionの中から、興味深いものをピックアップして紹介します。今回は、運用に関するセッションです。
RackspaceとAURO(カナダ唯一のパブリッククラウド)の担当者が、新しいOpenStackのインストーラ「OpenStack Ansible Deployment(OSAD)」を紹介しました。OSADはRackspaceが開発したOpenStack基盤構築用のAnsible Playbookをコミュニティ開発化したもので、OpenStack Kiloリリースから正式対応しています。
興味深い点として、OSADはLXCの利用が前提となっており、OpenStackの各種サービスやデータベース、メッセージキューのクラスタが別々のコンテナ上にインストールされます。開発・評価環境では1台の物理マシン上でテストし、本番環境ではサービス群を複数(多数)の物理マシンに分散配置できるなど、システム構成が柔軟になります。
また、ここで使用されるOpenStackはRed HatやUbuntuが提供するOpenStackパッケージではなく、コミュティ版のOpenStackを独自にパッケージ化したものです。これにより最新のOpenStackリリースにいち早く対応し、更にその後のバグフィックスや独自パッチ適用も容易となります。
Design Summitの開催
2日目からは「Design Summit」が開催されました。今回からは、次のリリースの開発内容を議論する「Design Summit」と、Operators(運用者)の観点からOpenStackの改善点を話し合う「Ops Meetup」を同時に行い、開発者と運用者が交流しやすくするという試みです。
Design Summit開催初日は、複数のプロジェクトにまたがる課題を議論する「Cross Project」セッションと、「運用者(Ops)Meetup」セッションが行われました。
Design Summitの様子は、改めてレポートしたいと思います。3日目のレポートもお楽しみに!
連載バックナンバー
Think ITメルマガ会員登録受付中
全文検索エンジンによるおすすめ記事
- 「OpenStack Summit May 2015 Vancouver」レポート #6(Breakout Session、OPNFV)
- OpenStack Summit Tokyoキーノート2日目、今年最も活発だったプロジェクトとは?
- コンテナ連携が進むOpenStack
- 「OpenStack Summit May 2015 Vancouver」レポート #7(番外編)
- OpenStackコミッター座談会~「OpenStack Summit Tokyo 2015に向けて」
- OpenStack Summit 2018 Vancouver開催 リアルな情報交換の場となったイベント
- 様々な本番環境を支えるOpenStack
- CloudNative Days Tokyo 2019開催。Airbnb、IBM、Canonicalなどが登壇
- OpenStackとコンテナの技術動向
- 8周年を迎えたOpenStack Swift:Amazon S3との連携が強化、マルチクラウドとファイルシステムをサポート