要件の整理/共有でシステム設計の品質を高める

2010年8月5日(木)
北山 厚荒川 英俊

開発初期から要件を整理/共有するためのポイントの1つ目は、製品コンセプトの共有である。

製品コンセプトは、開発者のアイデアや組織としてのユーザー・ニーズを含んだものでなければならない。加えて、事業戦略や製品戦略に基付いている必要がある。これらを踏まえた結果として、「誰が、いつ、どういう環境で、どんな使い方をする製品か」を、関係者で共有することが大切である。

このとき、同時に情報を共有するメンバーは、メカ、エレキ、ソフトの各設計担当者だけに限らない。経営層をはじめ、営業担当者や製品企画担当者やアフター・サービス担当者を含んでいることが望ましい。こうすることで、「ぶれ」のない製品開発につながるのである。

開発初期から要件を整理/共有するためのポイントの2つ目は、要件を整理するためのフレームワークの設定である。

例えば、ソフトウエア開発であれば、「機能性」「使用性」「信頼性」「保守性」「拡張性」「効率性」「経済性」「魅力」といった軸で、製品への要求事項を特定していく。製品コンセプトに基付いて、背景にある要求事項を元に要件を整理し、確定していく。要件フレームワークを設定することで、重要な要件の漏れを防ぐことが可能になる。

開発初期から要件を整理/共有するためのポイントの3つ目は、要件の詳細化と構造化である。

メカ、エレキ、ソフトなど、異なる技術領域に携わる技術者同士の協調を促進し、要件フレームワークに沿って要件を詳細化し、要件間のつながりとまとまりを明確にしていく。このうえで要件実現の形、つまり機能や性能といった仕様を検討し、特定する。

iTiDコンサルティングとビズモは、上記の3つのポイントを押さえて作業を効率よく進めるために、エンジニアリング・ファシリテータと呼ぶ、異なる技術分野を橋渡しする役割を担うコーディネータが作業を支援するスタイルを推奨したい(図5)。

エンジニアリング・ファシリテータは、異なる技術ドメインに所属する設計者の思いや考えを可視化することによって、技術者同士のコミュニケーションをうながす。これにより、システム要件が技術者間で適切に整理/共有されるようになる。

図5: 「システム要件の整理」のポイント

最後に、要件の整理は、システム設計作業と連携しながら実施するものである点について注意をうながしたい。設計の検討が進むと、要件の更新が必要になる場合が発生する。システム設計の品質を高め、組み込み製品の品質を高めるためにも、更新された要件をタイムリに全員で共有できる仕組みが重要になるのである。

(株)iTiDコンサルティング 代表取締役社長
製造業の開発力強化をミッションとする(株)iTiDコンサルティングの設立に参画。開発業務の生産性と製品価値の向上に関する改革コンサルティングに多数従事。2008年より現職。
(株)iTiDコンサルティング シニアマネージングコンサルタント
製造業の開発力強化をミッションとする(株)iTiDコンサルティングに所属。組み込み製品の設計開発プロセス改革コンサルティング業務に従事。製品要件の分析からシステム設計業務領域を強みとする。

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