業務を止めない、インフラづくり
突然襲ってくる自然災害。広範囲にわたる通信障害。供給電力不足によるサーバー停止。今までの想定を超えた様々な事態が、現実に起こりうることを我々はまさに今学んでいます。「業務継続」、仕事を止めないためにはどのようなシステム、そしてインフラづくりが必要なのか? 今後の次世代データセンター構築・運用を支える技術・ソリューションとして何が必要になるのか?今回はこれらのテーマに沿った形で、以下の4回にわたって解説させていただきます。
- (第1回)業務を止めない、インフラづくり
- (第2回)仮想体験!リモートデータセンターを運用
- (第3回)DRの仕組みづくりと業務継続のためのソリューション
- (第4回)クラウドからシステムの自動運用を目指す!
システム担当者が抱える課題
1980年代のメインフレーム全盛期から、1990年代のWindows/UNIX等のオープンシステムによるダウンサイジングという波の訪れにより、分散システムが主流化しました。ところが、その後のバブル崩壊によりコスト削減が命題となり、分散化されたシステムは再びデータセンター内へ統合化されることになりました。ところがシステム自体は分散システムのアーキテクチャーのまま集約されるケースが多く、実際にはサイロ型に分離されたシステムラックが横に並ぶデータセンターが増え続けていきました。
そして今、ハードウエアの利用効率の向上による設備投資の削減に加え、運用人件費、ラックスペース、消費電力・冷却コストの削減も求められ、システム担当者を悩ませる種は増え続けるばかりです。
図1:システム担当者が抱える課題(クリックで拡大) |
進むシステムの仮想化
データセンターへのインフラ移設は進みつつも、依然としてサイロ型のシステムがセンター内に乱立され、管理しなければならない機器は増え続けるばかり。そこへサーバー仮想化の波が日本にもやってきました。平均15%以下と言われている物理サーバーのリソース使用率の向上によるサーバー台数の削減と、それにともなう周辺接続機器の削減が実現できるのです。しかしサーバー仮想化用のソフトウエアを導入して物理サーバーを仮想サーバーに移行するだけでは課題の解決にはなりません。
「サーバー仮想化のシステム要件」
- 多様なアプリケーションへの対応:多様なアプリケーションを、任意の仮想サーバー上で実行できる必要があります。
- 1台のサーバーに複数のアプリケーションを稼働:余剰のサーバーリソースを十分に活用するために、オンデマンドでアプリケーションを追加できる必要があります。
- アプリケーションの可動性:高可用性(HA)とロードバランシングを実現するため、アプリケーションは複数のサーバー間で移動可能である必要があります。
- 多様なストレージへの接続性:アプリケーション・DBサーバー側の要件に加えて、仮想サーバーイメージが格納される共有ストレージが必要となり、1台の物理サーバーが複数のストレージに接続できる必要があります。
そこで必要になるのが、リソース共有型の共通統合基盤の構築です。アプリケーションによって異なるネットワーク・ストレージ要件を満たすためにサイロ型で構築されてきたインフラを、様々なリソースの共有化を可能にする共通統合基盤に置き換えるのです。このリソース共有型の基盤が「クラウド」と呼ばれる時代にもなりました。
図2:リソースを共有できない個別システム(クリックで拡大) |
この「クラウド」型の基盤構築により、多様なアプリケーションやOSが稼働するサーバーが、あらゆるネットワークやストレージリソースに接続することができ、これにより、大幅なリソース利用効率の向上、設備投資コスト・運用人件費・消費電力・冷却コストの削減が可能になるのです。さらに、全てのアプリケーション・OS・DBのデータは共有ストレージ側に格納されているので、ストレージ側のバックアップをとっていれば、特定のサーバー障害時に加え、災害による大規模システム障害時にも、迅速な復旧と業務継続が可能になるのです。
図3:リソース共有型のクラウドへ(クリックで拡大) |
しかし、万能なソリューションと思われる仮想化も、セキュリティ、パフォーマンス、そして冗長性をしっかりと考慮した上でシステム設計する必要があります。そして、システムの仮想化そしてクラウド化のキーの1つとなるのが「I/O(データの入出力)」なのです。