MySQL Enterprise Edition最新情報
Enterprise Backupによる高速なオンラインバックアップ
MySQLのデータを高速にオンラインバックアップするためのツールです。以前はInnoDB Hot Backupという製品として別売されていましたが、2011年よりMySQL Enterprise Editionの一機能となりました。データベース全体のフルバックアップ以外に、一部だけの部分バックアップや差分バックアップが可能なほか、障害からの復旧のためのポイントインタイムリカバリもこのツールだけで実行できます。
Enterprise Backupを使用しない場合、全てのテーブルがInnoDBであればmysqldumpの--single-transactionオプションを使用することで、オンラインバックアップが可能です。しかしmysqldumpはデータをテキスト化する論理バックアップのみ可能で、特にリストア時に物理バックよりもかなり時間がかかることがあります。そのためデータ量が多い(筆者の経験では20GB程度以上)場合はmysqldumpでのバックアップはお勧めしません。高速にオンラインでの物理バックアップが可能なEnterprise Backupをお勧めします。
Enterprise BackupはSBT(System Backup to Tape)インタフェースによって、テープデバイスを含むバックアップメディアをサポートするOracle Secure Backupなど各種のシステムバックアップツールと連携可能です。
図2:mysqldumpとのリカバリ性能比較(クリックで拡大) |
性能拡張性の向上と外部認証によるセキュリティの強化
MySQLサーバは独自のユーザー管理テーブルを持っています。MySQL Enterprise Editionでは、この内部テーブルを使わずに、MySQLサーバのユーザー認証処理をLDAPやWindows ADなどと連携させることができます。この拡張により既存のユーザー管理システムと連携し、セキュリティポリシーや運用も統合できます。
PAM(Pluggable Authentication Modules)を利用してLinuxやSolarisのOSのユーザー情報、およびLDAPやKerberosなどで管理されているユーザー情報でMySQLのユーザー認証が可能となります。Windowsのネイティブサービスもアクセス可能で、アプリケーションのユーザーがWindows Active Directoryで既に認証を通過している場合には、その認証情報でMySQLサーバに接続することができます。
この外部認証機能はEnterprise Editionでの拡張機能として実装されていますが、Pluggable Authentication APIとして認証モジュールのAPIを公開しているため、必要な場合はユーザー独自の外部認証の仕組みを開発することもできます。
図3:PAMを利用した認証フロー |
極めて大規模なWebサイトなどで活用できる拡張機能がThread Poolです。MySQLサーバはシングルプロセス・マルチスレッドのプログラムで、アプリケーションやクライアントからの接続ごとに新しいスレッドを作成してSQL文の処理を行います。Thread Poolが無いコミュニティ版のMySQLサーバでは、1つの接続は1スレッドのみを使い続け、全てのスレッドが同じ優先度で実行されます。そのためMySQLサーバへの接続本数が千本単位など大量になる環境での性能拡張性に課題がありました。
Thread Poolでは多数のスレッドをグループ化し、各接続はラウンドロビンでグループに割り当てられていきます。さらにスレッドに優先度の設定や、MySQLサーバに過度な負荷がかからないようクエリの同時実行数の制御を行います。これによって大量の接続や同時に実行されるクエリをより効率的に処理し、高いスケーラビリティを確保しました。外部認証と同じく、Thread Pool APIを公開しているため、ユーザー独自の仕組みを開発することもできます。
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