[実践編] Ubuntu Serverをスケールアウト型サーバーに配備する(後編)
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defaultファイルの記述とブート用イメージファイルの配置
管理対象サーバーがPXEブート後に自動インストールが開始されるようにするため、管理サーバーのdefaultファイル内の「default ubuntusvr120403lts」のエントリーが選択されるようにstk950capとstk950depの行頭に「#」を挿入しコメントアウトします。
defaultファイルの記述と矛盾がないように、Ubuntu Serverのisoイメージに収録されているPXEブート用のイメージファイルlinuxとinitrd.gzを管理サーバーに配置します。先述のSTKサーバーの構築時に配置したPXEブート用のイメージファイルvmlinuzとinitrd.imgとは異なりますので注意してください。
# mkdir /tftpboot/ubuntusvr120403lts # cd /var/www/ubuntusvr120403lts/iso/install/netboot/ubuntu-installer/amd64 # cp -a linux initrd.gz /tftpboot/ubuntusvr120403lts/
これでUbuntu Serverを自動インストールする準備が整いました。管理対象サーバーの電源を投入後、PXEブートが正常に行われて、人間のオペレーションが介入することなくインストールが完了することを確認してください。自動インストール完了後、管理対象サーバーにrootアカウントでログインできるはずです。
管理対象サーバーに固定IPアドレスが付与されていない場合は、netcfg.shスクリプトやpreseed.cfgファイル、Apache Webサーバーの設定や読み込み権限の設定等に誤りがある可能性がありますので、再度注意深く確認してください。
Ubuntu Serverの管理ソフトウェアHP Insight CMUとCanonical Landscape
Hadoopやオンラインゲーム、OSSクラウド等のスケールアウト基盤で大量のx86サーバーが利用されるようになり、OSやアプリケーションの配備の自動化、簡素化を行う管理ソフトウェアが注目を浴びています。OSの自動配備を行う管理ソフトウェアとしては、Red Hat社が提供するRHN SatelliteやNovell社のZENworksなどが存在しますが、HPでは2000年からから科学技術計算システム等で利用されているInsight CMU(インサイト・シー・エム・ユー)と呼ばれるLinuxに特化した管理ソフトウェアを提供しており、Ubuntu Serverの自動配備が可能となっています。
Insight CMU、RHN Satellite、ZENworksが稼働する管理サーバーはUbuntu ServerではないLinuxで稼働します。Insight CMUでは、先述のSTKやpreseedによる自動インストールの仕組みを組み合わせることが可能となっています。また、GUIから管理対象サーバーのファームウェアの管理、Ubuntu Serverの配備、OSのクローニング、複数ノードへの一斉コマンド発行や差分表示等が可能です。
Canonical社のLandscapeは、Ubuntu Serverに特化した管理ソフトウェアで、パッケージ管理や負荷状況の監視などを一元的に行うことができます。Landscapeは、Ubuntu Server上で稼働しますので、管理サーバーと管理対象サーバーをUbuntu Serverで統一することができます。また、VPNを使わずにインターネット回線を経由して企業内のUbuntu ServerのOS管理を行うことも可能であり、同一LAN環境には存在しないUbuntu Serverのシステムの再起動やシャットダウン、パッチの適用、スクリプトの実行等が可能です。
企業内LANに存在するUbuntu Serverのためのハードウェアの自動設定やOSの自動インストール等にInsight CMUを使用し、インターネット回線を経由して、遠隔のUbuntu ServerをLandscapeで管理するといった使い分けも考えられます。
サーバーOSにおける自動インストールの仕組みの比較
スケールアウト型システムで利用される自動インストールの仕組みは、OSによって大きく異なるため、OSの種類が増えると、バージョン毎による設定ファイルのメンテナンスも増えるため、運用が複雑化します。自動インストールの仕組みは、IT管理の入門者にはハードルが高く感じられるかもしれませんが、スケールアウト型システムを効率よく運用していくためには、各OSで実装されている自動化の仕組みや設定ファイルの特徴等の基本を知っておくことが重要です。
RHELやCentOSにおける自動インストールは、Kickstartと呼ばれる仕組みがあり、初心者でもわかりやすい設定ファイルが特徴的です。一方、Ubuntu ServerでもKickstartを使用することができますが、詳細な設定を行う場合は、preseedによる記述が基本となります。以下では、Ubuntu Serverとその他のサーバーOSについて、自動インストールの仕組みの特徴を簡単に表にまとめておきます。
最後に
Ubuntu Server実践編の第1回・第2回では、Ubuntu Serverをスケールアウト基盤に配備するための基本的な手順と技術要素を簡単に説明しました。次回は、Ubuntu Serverのベアメタル配備を行うMaaS(Metal-as-a-Service)とOSSのオーケストレーションを行うJujuついてご紹介します。
Ubuntu Serverの自動インストールサーバー構築に使用する「preseed」
『スケールアウト型OSSクラウド基盤に最適なUbuntu Serverをひも解く』 第6回のサンプルファイルです。
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