高可用性とデータ・シャーディングを実現できるMySQL Fabricとは?
MySQL Fabricとは?
MySQL Fabricは、MySQLサーバー群を管理する統合型のフレームワークです。MySQL Fabricを使うことにより、高可用性(HA)とデータ・シャーディングによる拡張性を実現できます。
MySQLのレプリケーション機能を使って高可用性構成を実現している場合、マスターのサーバーに障害が発生した時に、スレーブのサーバーを新しいマスターに昇格させるフェイルオーバー処理が必要になります。このフェイルオーバー処理を自動化するために、MySQL 5.6ではMySQL Utilities(※)にmysqlfailoverという機能が追加されました。
※MySQL Utilitiesは、Pythonでかかれた便利なスクリプト集です。詳細は以下の記事も参考にして下さい。
[参考]Pythonで作られた便利なコマンドラインツール MySQL Utilities
mysqlfailoverを使うことでMySQLサーバーのフェイルオーバー処理を自動化できますが、その際にアプリケーションからの接続先を新しいマスターへと切り替える必要があります。また、スレーブのサーバーを複数台で構成し、参照処理の負荷分散を実現していた場合も、フェイルオーバーによってスレーブサーバーのうち1台がマスターに変更されるため、アプリケーションからの接続先を切り替える(1台のスレーブサーバーを負荷分散の対象から外す)必要があります。
このような課題を解決するために登場したのが、今回ご紹介するMySQL Fabricです。MySQL Fabricを使うと、マスターのサーバーに障害が発生した際のフェイルオーバー処理を自動化できるだけでなく、フェイルオーバーによってMySQLサーバーの構成が変更された場合でも、アプリケーションからMySQLサーバーへの接続先を切り替える必要がありません。アプリケーションを変更する必要無く、そのまま使い続けられます。
またMySQL Fabricでは、参照処理/更新処理の拡張性も提供しています。システムの規模を拡張する際に「処理性能を向上させたい」という要望が出てくると思いますが、MySQL Fabricを使うとアプリケーションを変更することなく、MySQLサーバーの台数を増やすだけで負荷分散により処理性能を向上できます。参照処理の性能向上はスレーブサーバーの台数を増やすことで、また更新処理の性能向上はデータ・シャーディング(分割)によって実現できます。そしてスレーブサーバーの台数を増やしたり、データ・シャーディングを行ったりした場合でも、アプリケーションは変更せずにそのまま使い続けられます。
この機能は昨年labs.mysql.com(※)で発表されましたが、反響が大きかったため開発が活発に進み、2014年5月27日に製品版(GA)となりました。
※labs.mysql.comは、テスト用に、より先進的、実験的な機能を含んだMySQLを提供しています。テスト目的であるため、labs.mysql.comの製品を本番環境では使用しないでください。
MySQL Fabricは、MySQL Utilitiesの一部として提供されています。そして、内部でMySQL 5.6で追加されたGTIDモードによるレプリケーションやレプリケーションユーティリティ(MySQL Utilitiesのレプリケーション関連の機能)を活用しています。そのため、管理するMySQLサーバー群はMySQL 5.6以降(※)が対象となります。GTIDとレプリケーションユーティリティの概要については、過去の連載でも紹介していますので、それぞれの概要についてはこちらの記事もご参照下さい。
※記事執筆時点(2014年9月時点)でのサポート対象はMySQL 5.6のみですが、今後のバージョンについても製品版(GA)リリース後に、サポートされる予定です。
また、MySQL Fabricを使用するためにはMySQL Fabricに対応したコネクタを使用する必要があります。2014年9月時点で対応しているコネクタはPHP、Python、Javaですが、今後他の言語のコネクタも追加予定です。また、O/RマッパーのHibernateとDoctrineもサポートされています。
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