未来のエンジニアが海外で健闘!ロボットコンテスト国際大会レポート
今年10回目となるWorld Robot Olympiad(以下WRO)がインドネシアの首都ジャカルタで開催され、39の国と地域から17,000ものチームが参加しその腕を競った。
WROはLEGO社のマインドストームを使用したロボットコンテストで、競技内容は大きく3つのカテゴリーに分かれている。年齢別に設けられた課題を、センサーを利用した自律型ロボットで攻略する「レギュラーカテゴリー」、与えられたテーマをロボットで表現する「オープンカテゴリー」、2台のロボットをチームとしてサッカーを行う「GEN II Football」。選手たちはそれぞれのカテゴリーで優劣を競い合う。
日本からはレギュラーカテゴリーに11チーム、オープンカテゴリーに6チームが参加し、世界の参加チームを相手に健闘を見せた。
WROの特色の一つ「サプライズルール」
WROのレギュラーカテゴリー競技には他のロボコンにはない「ある特色」がある。
このカテゴリーは先に述べたように「与えられた課題を自律型ロボットで攻略する」というものだが、児童・生徒の問題解決能力向上を目的として、競技当日に「サプライズルール」として攻略課題が追加される。そのため、たとえ選手の親や代理の大人がロボットやプログラムを作ったとしても、当日のサプライズルールに対応できなくては、当然上位は望めない。
課題をパーフェクトにクリアして優勝を目指すのであれば、選手自身が調整時間中にプログラムを書き換え、またロボットの構造を変更するといった必要が出てくる。
このサプライズルールについて、今年の高校生向けの課題「Komodo Island」を例に紹介していこう。
緑のスタートエリアからスタートしたロボットは、段差のある中央の台に配置された赤いボールのみを回収し、スタートエリアに戻る。青いボールを台座から落とすと減点となり、回収した赤いボールの数によってゴールの際の停止位置が変わる。課題としては比較的シンプルなため、満点を前提としての動作の正確さ&タイム勝負となるはずだった。
実際ほとんどのロボットは台の壁沿いに走行して対象の赤いボールを掻き込むように回収するという戦略を採っていた。
しかし、サプライズルールによってその戦略は変更を余儀なくされる。上の写真は、サプライズルールが発表された後のコースである。右側の、中央の台に沿ったところにブロックがあり、その上にピンポン玉が置かれている。
サプライズルールでは「このブロックを移動してもよいが、ピンポン玉をブロックから落としてはいけない」というルールが追加された。これによって各チームでは戦略を練り、大別して3種類のパターンとなった。
- A:ブロックを押したままボールの回収を行う
- B:進路からブロックを排除してボールを回収する
- C:ブロックをよけてボールを回収する
このチームはロボットがブロックを進路上から排除する動作をしている(日本・宇都宮工業高校チーム)
あるチームはブロックを押したままゴールしている(国籍不明チーム)
ブロックをまたいでよけている(マレーシアチーム)
筆者が驚いたのはこのマレーシアチームである。他のロボットと比べてもその構造は大きく異なり、構造を見る限りはじめから台に沿って障害物が置かれることを想定した造りになっている。もちろん調整時間中に構造の大変更をすることもできるが、それはそれで大変だ。インドネシアチームも同じような想定をしていたようだがピンポン玉をまたぐには高さが足りなかったようで、結局Aパターンを採用してブロックを押すことにしている。
結局このチームはロボットがボールを進路上から排除する動作をしている(インドネシアチーム)
ブロックを押したままの走行は加速度調整などを行わないと容易にピンポン玉を落としてしまうし、よけたり排除したりといった動作は時間を消費する。その意味で「C」の作戦を採ったマレーシアチームのロボットは非常に理にかなっていた。それはタイムにも表れており、結果的にマレーシアチームは優勝を掴んだ。
他にも、左右対称のロボットを用意していたチームはプログラムも右回り・左回りを用意しており、ブロックの位置によってスタート位置を柔軟に変えるなどの対応を行っていた。
左右対称のマシンを用意して、左右どちらからでもスタートできる。ピンポン玉はコース奥に押し込めるようになっている(タイチーム)
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