日本マイクロソフト、クラウドオリエンテッドなWindows Server 2016を解説
日本マイクロソフトは、2016年11月1日にお台場にて開催されたMicrosoft Tech Summitで、Windowsサーバーの最新版であるWindows Server 2016を紹介した。ここでは単に機能の紹介ではなく「ITプロフェッショナルが抱くマイクロソフトに言いたいこと」に答えるという形式で、ベテランエバンジェリストである高添 修氏(日本マイクロソフト株式会社 デベロッパーエバンジェリズム統括本部 エバンジェリスト)がプレゼンテーションを行った。
型破りなスタイルで行われたプレゼンテーション
このプレゼンテーションの冒頭で高添氏は「普通に機能の説明をしてもおもしろくないですよね?」と満員の来場者に語りかけ、他のプレゼンテーションとは違う形式、つまり「普段からOSSなどにも触れているITプロフェッショナルが、マイクロソフト製品に対して思うこと」に答えるといった形式で進められた。
まず前置きとして、Windows Server 2016の簡単な紹介が行われた。Windows Server 2016と旧バージョンである2012や2012R2との比較、及び2016の各Editionの差を紹介した後、多くの新機能の中からNano Server、Hyper-VコンテナとWindows Serverコンテナの差異、Nano Serverがホストする開発環境、ミドルウェアなどのサポートをサラリと紹介した。
Windows Server 2016のコンテナ環境
その後に、ITプロフェッショナルからの「オープンソースソフトウェアの最新技術のほうが便利だよね」というコメントを紹介した上で、Docker EngineがWindows Server 2016の上で稼働していることを紹介した。ここでは最近のコンテナテクノロジーがアプリ開発及び本番環境での稼働に大いに影響を及ぼしていることを認識した上で、マイクロソフトとしてはそれにどう対応しているのか? という問いに答えを出した形だ。
続いて、Windows ServerコンテナとHyper-Vコンテナの違いが紹介された。Hyper-Vコンテナは、ベースとなるWindows Server 2016とは完全に切り離されたWindowsカーネルを持ったコンテナであるという。つまりHyper-Vを使って立ち上げた仮想マシンのように、ベースのカーネルとは隔離されたアプリケーション実行環境であるため、部門ごとにリソースを分離しなければいけないようなコンプライアンス上コンテナを使いづらい企業においても、別のITリソースとして利用できるという説明を行った。ここで注目すべきは、コンテナのリーダーであるDockerのコマンドや使い勝手をそのまま開発者に提供するために、Linuxで稼働するDockerのエンジンを移植して実行させることを選択した点だと言う。これによって、Dockerに慣れた開発者に利便性をもたらすというスタンスだ。
ハイパーコンバージドを標準機能のみで実現
次に紹介されたのは、Windows Server 2016を使って分散ストレージを作ることができること、つまりHyper-VとStorage Clusterという標準機能を使ってハイパーコンバージドインフラストラクチャーを実現できるということだ。今回のイベントには、ハイパーコンバージドインフラストラクチャー分野のリーダーであるNutanixも参加しており、マイクロソフト製品を主に導入している企業向けにAzure PackとWindows Server 2012R2を活用したハイパーコンバージドを提案していた。しかしここでは、マイクロソフトが最新バージョンのOSの標準機能だけでハイパーコンバージドを実現できることを見せつけた格好になった。高添氏は「ハイパーコンバージドのアプライアンスを使うにはちょっと価格が高いと感じる企業には魅力的では」と解説し、「単に仮想マシンを作ってスケールアウトしたいだけであれば、これで十分」と説明した。
Azureをオンプレミスに? Azure Stack
次に紹介されたのが、来年にリリースが予定されているAzure Stackだ。これはマイクロソフトがパブリッククラウドとして展開しているMicrosoft Azureと同じ技術を使って実現するプライベートクラウド基盤で、言わばOpenStackのマイクロソフト版とも言える製品である。ただ説明の中で強調されたのは、Azureとの親和性だ。「あの巨大なインフラを実現しているソフトウェアを、プライベートで使えるようにした」ことのほうが、Azureユーザーにとってはよく響くという判断だろう。またAzureと良く似た管理機能は、キーノートスピーチでも紹介された。
Discrete Device Assignment
次のトピックは、ハードウェアの性能を有効活用するための技術としてのDDA(Discrete Device Assignment)だ。これは、仮想マシンからシステム最下層に位置するベアメタルハードウェアの一部を直接操作することで必要な性能を実現するというもので、NVIDIAのGPUを使ったマシンラーニングなどの例が挙げられる。今回のプレゼンテーションでは、東芝のNVMe SSDを使って50万IOPSを達成した例が紹介された。NVIDIA GPUを利用可能にするAzureのNシリーズというインスタンスに関しては、今年の8月に書かれた以下の記事を参照されたい。
またVDIに関してもVMwareやCitrixなどに比べて遜色ないことを解説し、Azure上では自社製を諦めてCitrixのソリューションを活用していくことを紹介した。
Server版Windowsも最新版を
最後にWindows 10のカーネルを使って開発されたというWindows Server 2016がセキュリティの面でも優れていることが紹介された。キーノートスピーチと同様に、ここでも古いOSを使い続けることのリスクを強調した。OSの開発元として「古いOSでは最新の悪意をもった攻撃には耐えられない」ことを改めて明言したというわけだ。古いOSの脆弱性をいつまでもメンテナンスするよりは、よりセキュリティを意識した最新のOSに乗り換えてほしいという意図は、十分に伝わったのではないだろうか。
2014年10月に最初のテクニカルプレビューが出てから、約2年の時間を経て正式に出荷されたWindows Server 2016は、コンテナ対応やNano Serverなど最新のマイクロサービスを意識しつつ、最も堅牢かつクラウドオリエンテッドなサーバーOSであるという。マイクロソフト製品でサーバー群を固めている企業には、唯一無二の製品だろう。
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