クラウドのストレージ要件を満たすには

2009年9月14日(月)
阿部 恵史(あべ よしふみ)

ハイブリッドデータセンターの効率的な運用

 今回は、クラウドコンピューティング環境におけるストレージの要件と、それを満たすために必要なテクノロジーについて説明します。

 パブリッククラウドとプライベートクラウドのいずれの場合でも、クラウド環境構築の成否は、すべてのリソースの効率的な使用と共有を可能にする適切なサーバー、ネットワーク、ストレージのシェアード(共有)インフラを構築できるかどうかにかかっています。インフラを共有するモデルでは、あらゆるデータが仮想的に統合された同一のストレージシステムに格納されるため、ストレージはさらに重要となります。

 これに加えて、さらにプライベートクラウドにおいては、既存のITリソースを活用しつつ、自社のデータセンターを中長期的に段階を踏んで少しずつ変更していく方法がとられることになると考えられます。

 そのため、プライベートクラウドを構成するデータセンターでは、従来のアプリケーション依存のサイロ型アプローチのインフラと、社内ITリソースによるプライベートインターナル、ITaaSを提供する社外のクラウドサービスを活用したプライベートエクスターナルによるクラウドインフラが中長期にわたって混在することになり、これらのインフラを共存させることが必要となります。

 このようなハイブリッドデータセンター(図1参照)を効率的に運用するには、これまでとは異なる新しいスキルと測定基準が必要になることが考えられます。

クラウドコンピューティングにおけるストレージインフラの要件

 一般に、クラウドテクノロジー導入の推進要因となるのは、ストレージインフラかどうかにかかわらず、次のようなビジネスニーズが考えられます。

・従量課金制の導入
・セルフサービスの実現
・常時稼働の保証
・サービスの即時提供とインフラキャパシティーの柔軟な拡張
・セキュリティーとプライバシーの確保

 こうしたビジネスニーズに対応するにあたり、ストレージインフラとしての要件は次のようになります。

・ストレージ効率化と拡張性
・統合的なデータ保護
・サービスの自動化と管理
・セキュアなマルチテナント環境
・データモビリティの実現

 これらのなかで、従来のITインフラ環境構築において要件として検討されていなかったものに、複数の異なるアプリケーションやユーザーが同一のITインフラをセキュアに共有できる環境(マルチテナント環境)と、アプリケーションやサーバーに透過的な間断のないデータ移行(データモビリティ)が挙げられます。

 しかし、これらを満たすためのテクノロジーは、ここ数年ですでに利用可能な実用技術として提供されており、導入が進んでいる企業も増加しています。つまり、リソース利用効率の向上やコスト削減、グリーンIT化の観点から導入が促進されてきた、サーバー仮想化テクノロジーがクラウドサービスに適したインフラ構築のための必須の技術となるわけです。

 なぜかというと、サーバーを仮想化することでコンピューティングリソースの効率的な論理分割と動的再配分が可能となり、ニーズの変化に応じてリソースの割り当て、拡張、縮小、割り当て解除を迅速に行うことができるからです。また、仮想化管理サービスも急速に成熟しつつあり、クラウドの高速化や柔軟性と可用性の向上に役立っています。

 同じことはほかのインフラについても言えることで、ネットワークやストレージの仮想化テクノロジーとサーバー仮想化テクノロジーを組み合わせることで、統合的な仮想化環境によって要求要件に対応することが可能です。

著者
阿部 恵史(あべ よしふみ)
ネットアップ株式会社
マーケティング部 部長 製造系企業の情報システム販社、外資系ITベンダーなどを経て2007年8月より現職。その間、企業の基幹系システムの設計・開発・導入、インターネットTV開発、UNIX系ハイエンドサーバー、クラスタシステムの導入コンサルティングなどを経験し、2002年よりマーケティング職に転身。現在もデータセンターインフラの仮想化・自動化およびグリッドソリューションを担当。

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