オールフラッシュストレージの最新製品でクラウド統合を目指すNetApp
ストレージの専業ベンダーNetAppは2016年10月4日に記者発表会を開催し、最新のオールフラッシュストレージ製品NetApp E2800と、NetAppのストレージを司るOSであるONTAP 9に関する解説を行った。また同日に、よりトラディショナルなワークロードに適したオールフラッシュストレージであるAFF A700、ミッドレンジのオールフラッシュストレージであるAFF A300なども発表された。今回は、発表会とは別に担当者にインタビューを行い、より詳細なNetAppの製品戦略などを伺った。
ビッグデータに適したストレージ、E2800
今回の発表の中核は、「StorageGrid」と呼ばれるIoTやビッグデータなどに適したEシリーズの新製品NetApp E2800とAWS、Microsoft Azureなどのパブリッククラウドとの連携機能である。NetAppは、従来のFASシリーズを企業のデータセンターに配置するオンプレミスでのサーバー群に対応する外付けのストレージとして位置付けるのに対し、リアルタイムOSであるVxWorksを利用するEシリーズを、ビッグデータの解析などよりリアルタイム性が必要となる用途向けのストレージと位置付けている(Eシリーズに組み込まれたVxWorksはSANtricityと呼ばれる)。
ここで従来型のストレージであるFASシリーズを第2世代のアプリケーション向け、Eシリーズを第3世代のアプリケーション向けと位置付けている大きな要因が、ビッグデータなどで利用されるHadoopなどでは、従来型のHDDの及びHDD/SSD混在のハイブリッドシステムであってもストレージへのI/Oがボトルネックになってしまうという認識だ。これは通常のIAサーバーにおけるDiskドライブスロット数(4~8)では、Hadoopなどの並列処理を行う場合、ノードを増やしてもドライブ数が足らないことに起因してCPUが待たされてしまうということを示している。そこでEシリーズでは2Uの筐体で6台、12台、24台の800GB SSDユニットを格納でき、最小構成で12,000USドルという低価格を打ち出してきた。つまり安価なストレージを複数並べてHadoopで分析するには、最適な製品という位置付けだ。
この説明の中で、国内の製造業の事例として紹介されたものが非常に興味深いものだった。これはその企業が社内で利用しているPCやサーバー、ネットワークスイッチなどのハードウェア、さらにはOS、データベース、ミドルウェアなどから出されるログを全てMapRのファイルシステムに格納し、Sparkでストリーミング処理、そして機械学習を行わせることで異常を検知し、最終的にElasticsearch とKibanaで可視化するというものだ。機械学習をその中に組み込むことによって、事象のクラスタリングや関連付けが行えるという。脆弱性をついた攻撃やマルウェアの侵入などをポイントごに管理するのではなく、ビッグデータとして包括的に処理することで、どこで異常が起こっても素早く検知と対処が行えるというものだ。この事例の膨大なエラーログを格納するデータレイクとして、NetAppのストレージが採用されているという。
第3世代のアプリケーション、つまりクラウドネイティブであり、IoTやビッグデータなどの膨大なデータの応用には従来型のスタティックなストレージではなく、スケールアウトでき、安価で拡張が可能なストレージが必要であるという明確な見本だろう。またリアルタイム性が必要なビッグデータなどの利用においてVxWorksで実装されたSANtricityは、1ミリ秒でも処理時間を削りたいニーズにはマッチしていると言えるだろう。Intelベースのホワイトボックスサーバーとソフトウェアで全てを処理できるという昨今のSoftware Defined Storageの流れにおいて、注目するべき製品戦略だろう。
従来型のワークロードに対応する製品としては、AFF A700と下位機種であるAFF A300が発表された。それぞれ700万IOPS達成、40GbEと32Gb FCを業界で初めてサポート、15TB SSDのサポートなどパフォーマンスの向上などが強調されている。いわゆる第2世代のアプリケーションの代表格であるOracleのワークロードにおいて、レイテンシーが旧世代の製品の半分を実現したデータを公開する辺りは、情報システム部門のニーズをわかっていると思わせる説明であった。
AWSに続きAzureにも対応した
またパブリッククラウドとの統合という部分では、Microsoft Azure上でのONTAP 9(ONTAP Cloudと呼ばれる)は、これまでマイクロソフト製品に慣れ親しんでいる情報システム部門にとっては朗報ではないだろうか。AWSに加えて、パブリッククラウドの選択肢が増えるのはいいニュースだろう。またコモディティハードウェアで稼働するONTAPも、ONTAP Selectという名前で紹介された。これはプロダクションシステムではない2次的なストレージおよびDisaster Recovery的なストレージとして、汎用のハードウェアを利用できることに意味がある。
現在のONTAPは、もともとData ONTAP 7としてNetAppが開発していたOSだが、2004年にSpinnaker Networksを買収して手に入れたスケールアウト型ストレージのOSをData ONTAP GXとして並行して提供していたものを、Data ONTAP 8で統合したという経緯がある。このOSは、「7 Mode」という従来のONTAP 7で稼働させる場合と、「Cluster Mode」としてスケールアウト型OSとして稼働させる場合とを、起動時に選べるようにしたのだ。ひとつのOSでありながら2つのモードを持つことで、互換性を維持しつつも最新の機能を実装するという実直な方法を選んだわけだが、実際には7 Modeからの移行が難しいという声も顧客から聞いたことがあり、パートナーも顧客も必ずしもNetAppの思惑通りには動いてくれなかったということだろう。買収した製品を単純に別の製品ラインとせずに、努力して統合した割には評価されないというのは残念としか言いようがない。
ひとつのOSで統一した環境を提供し、ハードウェアの性能や規模に関係なく利用させるという理念は、ある程度ワークロードが均一の場合には大きな意味がある。だが、RDBなどを利用する勘定系システムと膨大なアクセスをさばくビッグデータなどシステムでは、要求される機能と性能、拡張性のニーズが違う。そういう意味で、従来型の信頼性の高いオールフラッシュストレージ製品と、StorageGridと呼ばれる製品を併せ持つことはポートフォリオ的に意味があるだろう。
今回のインタビューに応えてくれたネットアップ株式会社の神原氏(システム技術本部 コンサルティングSE部部長)は、「NetAppには開発部門というものがありません。実は開発エンジニアと顧客に対応するSEが、随時バーチャルな組織としてプロジェクトを組んで、その中で顧客のニーズを活かしながら次世代の製品開発を行っているのです」と語ってくれた。まじめに顧客ニーズを拾い上げながら、信頼できるストレージを提供するNetAppの一面が垣間見えたインタビューであった。
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