競争に勝ち抜くためのクラウド
進化するクラウド・コンピューティング
クラウド・コンピューティングとは、これがすべてなのでしょうか。答えは「No」です。
ここで話をしているクラウド・コンピューティングは始まりに過ぎません。IT予算全体におけるハードウエアのコスト割合は非常に少なく、クラウド化による恩恵はほんのわずかでしかありません。
それでは、次に向かうべきところはどこなのでしょうか。
それは、IT予算において大きな割合を占めている「人」を仮想化、標準化し、属人化を排除しつつ自動化に置き換えるというところにあります(図3参照)。
現状、IT部門にいる一握りの匠(たくみ)に頼ったIT運営ではなく、自動化により高い品質とスピードを容易に確保することが可能になり、柔軟性のあるITにシフトすることができます。
この「人」の作業には定型業務と非定型業務とに分けられ、定型業務の多くは自動化が可能です。
また、非定型業務も大きくトラブル対応、例外対応、そして緊急対応とに分類することができますが、このトラブル対応も十分な予兆管理により最小限にすることが分かってきています。そしてこの予兆管理もまた、定形業務として自動化することが可能です。
また、重大トラブルの多くは人が誘引した人的ミスとも言われており、そのためのコストは大きな割合を占めています。
このように、人にかかるコストを下げ、同時に品質を上げることがクラウドの本質であり、現在、ITに求められているいる最も重要な要素です。
そしてIBM MCCSはこれを実現するためのステップであり、クラウド化の入り口になります。
実績のあるリファレンスアーキテクチャーに基づいたIT構成要素と標準化された運用ツールやプロセス、そして多くの経験とナレッジが集約されたサービスですが、この先にはより高度な自動化の実装を予定しており、一部パイロットが開始されています(1ページの図1-2参照)。
また、自動化の範囲を運用だけにとどめずエンドユーザーにも拡大します。
これは、申請や承認、利用開始までのすべてのプロセスを自動化したセルフクラウド(第1回 RC2参照(http://thinkit.jp/article/1021/2/)による使い勝手の良さだけでなく、導入のしやすさにも一役買います。
必要な時に必要なだけ、小さく始めることができ、大きな成長に対応することができるITインフラを実現することにより、ITの投資対効果を最大化すると共に企業のイノベーションを具現化、ビジネスへの貢献を最大化することが可能になるのです。
「同一の条件での競争」に勝ち抜く
IBM MCCSのゴールはどこにあるのでしょうか。それはトーマス・フリードマン(米)の著書「The World Is Flat」で書かれているような「同一の条件での競争」に勝ち抜くためのインフラにあります。
やがて、ネットワークでつながれた世界各所にあるクラウドデータセンターを、Compute GridやData Gridを駆使してひとつの大きな仮想クラウドデータセンターとして利用することが可能になります。
そしてその中のエレメントとしてIBM MCCSが存在し、世界に点在するIT資源をいつでも、どこからでも自由に好きなだけ利用することができるようになり、今以上の柔軟性と拡張性、そしてコスト削減を実現します。
そのためには、標準化されたプロセスやツール、スキルを早くから自社に活用し取り込んだり、仮想化や自動化に慣れ親しんでおくことが必要です。
今あるクラウドがすべてではなく、その先にはもっと大きな未来が続いています。変化し続ける環境や不透明な先行きを明るく照らすため、より多くの価値を生み出すためにクラウドは進化し続けるでしょう。
「エンタープライズ・クラウド」と題し、全4回で連載してきましたが、いかがだったでしょうか。IBMはこれからもクラウドをリードすべくあらゆることに挑戦し続けていきます。本記事が皆さんのクラウドへの挑戦につながれば幸いです。