安価に無停止を実現する方法
仮想化環境の広がりと求められる信頼性
今、仮想化環境でいかに信頼性を確立するかが注視されています。1台の物理サーバー上で、複数の仮想サーバーを稼働させるため、ハードウエア障害などによる、システムダウンの影響範囲はこれまでの数倍から数十倍に膨れ上がります。個々の仮想サーバーの信頼性要求がさほど高くない場合でも、それが複数になれば決して無視できない状態になります。つまり仮想化へのシフトが加速すればするほど、適切な信頼性システムを構築する準備が必要になります。
信頼性を確立する簡単な方法としては、仮想化ソフトウエアベンダーがオプションとして販売しているHAソフトウエアを利用する方法がよく知られています。
この方法は、一般的なクラスタソフトのような複雑な設定は必要なく、比較的容易に導入することができ、シングルベンダーからサポートを受けることができます。
これらのソフトウエアは「コールドスタンバイ方式」になります。コールドスタンバイ方式とは、予備機を用意しておいて、障害が発生した場合に予備機にシステムを切り替える方式です(図1)。
具体的には、ハードウエア障害など物理サーバーに異常が発生した場合、動いている複数の仮想サーバーはすべて停止し、その後、ほかのサーバー上で再起動するというシーケンスをとります。この方法では、仮想サーバーがいったん停止するため、その時アプリケーションで処理されていた未完了のデータがすべて消失してしまうという欠点があります。
ミッションクリティカルなシステムにおいては、この方法で得られる以上の信頼性を要求することは珍しくありません。
そこで本記事では、ミッションクリティカルな分野の仮想化環境における高信頼性システムについて、ソフトウエアとハードウエアの2つの方法について考察していきます。
ハードウエアとソフトウエアによる手法
信頼性を高める実装方法としては、大きくハードウエアで行う方法とソフトウエアで行う2つの方法があります。
ハードウエアで行う場合は、いわゆる「無停止型」サーバーをプラットホームとして利用します。通常のIAサーバーと同じように管理できるため、導入や運用が容易です。何よりも、CPUやメモリも含め、いかなるハードウエア部品が壊れても一瞬たりとも止まらず継続運転できるところがポイントです。仮想サーバーを稼働させるプラットホームとしては、もっとも高い信頼性が提供できる方法といえるでしょう。
ソフトウエアで行う場合は、複数台の一般的なIAサーバーとミドルウエアを組み合わせます。一般的なクラスタよりも高い信頼性は提供できますが、ハードウエア方式で提供している無停止レベルの信頼性は提供できません。そのかわりコスト面においては、ハードウエア方式に比べ安価に導入することが可能であるというメリットがあります。
次ページではそれぞれの方式の仕組みや特徴について具体例を紹介しながら解説していきます。