サーバーの仮想化に重要な2つの技術
仮想化インフラにおける変革
本連載では「サーバーの仮想化にどう取り組んでいくか」というテーマで、IBMの仮想化技術を例に挙げながら、4回にわたって解説していきます。
サーバー仮想化には大きく分けて、1つのリソースを複数で共有する技術と、複数のリソースを1つのリソースとして使用する2つの技術があります。これらはサーバー統合によるサーバー運用のTCO削減や生産性向上、サーバーの性能向上に効果があり、これからも進化していくサーバー仮想化の、主な価値の一面といえます。
図1-1を見ると、仮想化の目的は現在、サーバー集約/統合から、全体インフラの最適活用へと歩み始めたと考えられます。さらに、クラウドというキーワードをベースに、仮想インフラの運用最適化を目的とした技術も、すでに実現済みのものも含め、多く提供されつつあります。
最近ではユーザーの多くが仮想化環境における障害対策やHAの仕組みにも興味を持ち始めています。中でもサーバー仮想化の新たな機能、価値として、稼働中の仮想環境(パーティション)を動的に再配置するモビリティや、同じ機能を持つアプリケーションを迅速に追加できるアプライアンスという技術も注目されてきています。そこで今回は、これら2つの技術を中心に解説します。
複数サーバーを有効活用するモビリティ
IBMは40年以上にわたって実績を積み上げてきたIBM System zの仮想化技術をIBM Power Systemsを始めとするIBM Systems製品に受け継いでいます。2007年にはIBM Power SystemsサーバーでPOWER6をベースにした仮想化を強化する機能として、以下の2つを発表しました。
・Live Partition Mobility(LPM):稼働中のパーティションをOS、アプリケーションを停止することなく異なる物理システムに移動できる機能
・Live Application Mobility(LAM):単一AIX上に作成される複数のアプリケーション実行環境「WPAR(Workload Partition)」を、同一筐体内あるいは異なる筐体のAIX上に移動できる機能
複数台のシステムを1台にまとめて、1つのシステムとして活用するには、モビリティ機能が必要です。モビリティはVMWareのVMotionや、PowerVMのLPMの機能などが代表的ですが、ここでは仮想マシンを動的に再配置する技術をモビリティと呼びます。モビリティ技術により、稼働中のOSをほぼ無停止(数秒の瞬間停止)のまま、別の物理サーバーに移動させることが可能です。
モビリティを使うと、例えば図1-2のように、HWのメンテナンスを行うために一時的に異なる筐体へパーティションを移動し、メンテナンス終了後に再び元の筐体に戻すということが可能になります。また、夜間に稼働率の下がったシステムを1つの筐体に集め、稼働率が上がったタイミングで元の筐体に戻す、といった運用を行うことで、物理サーバーの電力消費量を低減させることも可能です。
あるいは、システムの負荷が増大し、現在の筐体ではキャパシティー不足となった場合に、より大きなキャパシティーを持つほかの筐体に移すことも可能となります。ただし、現時点では、筐体同士を高速のネットワークで接続する必要があるため、遠隔地での移動は現実的ではありません。
また、モビリティの開始から完了までには短時間といえども時間がかかる上に、モビリティ実施中は移動元と移動先の物理サーバーが稼働していることが必要なため、障害対応などの非計画停止には適用できないといった点でも注意が必要です。
Think ITメルマガ会員登録受付中
全文検索エンジンによるおすすめ記事
- ブレード仮想化の統合メリットと先進性
- 仮想化環境での運用監視とは?
- UNIX系OSを比較検討する~まとめ
- IBM、Power SystemsにおけるLinuxサポートを拡大
- SUSEとMariaDB、IBM Power Systems環境でのLinuxアプリケーションのエコシステム拡大に向けたパートナーシップを発表
- LifeKeeperの今後のロードマップと展望
- Linux上でSAPの堅牢性をより高める
- 日本IBM、IBM Power Systems上のLinuxとオープンソース技術の利用促進を支援する「IBM Power Systems Linuxセンター」を日本に開設
- 日本IBM、SaaS形式のストレージ基盤最適化ソリューションを発表
- IT運用に求められる統合フレームワーク