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クラウド・コンピューティングの可能性

2009年9月3日(木)
三崎 文敬(みさき ふみたか)

クラウド・コンピューティングとは

 ネットワーク図でインターネットはしばしば「雲」の形に描かれますが、その「雲」の向こうにさまざまなソリューションがあり、いつでもどこからでも利用できる仕組みがクラウド・コンピューティングです。そのクラウド・コンピューティングが、今なぜ注目されているのでしょうか。それは、多くの人が「ITがこうあってほしい」と思い描く理想的なイメージにフィットしたからでしょう。クラウド・コンピューティングはITのパラダイムシフトであり、やがて社会のパラダイムシフトを巻き起こすでしょう。

 IBMでは、クラウド・コンピューティングとは、「標準化、伸縮性、拡張性に優れたコモディティーによって、動的にサービス(as a service)として供給される、IT機能の新しいスタイル」と定義しています。すなわち、仮想化だけではなく標準化、自動化の要素により、より一層のコスト削減と利用者への利便性向上を提供するものと考えています(図1-1)。そして、クラウド・コンピューティングの提供モデルは、「パブリック・クラウド」と「プライベート・クラウド」の2つに大きく分けることができます。

 パブリック・クラウドとは、インターネットを通じて企業や組織、個人に広くサービスを提供するもので、すでにGoogleやAmazonなどが提供しているサービスもこれに含まれます。一方のプライベート・クラウドは、企業内や企業グループ内のプライベートなネットワーク環境で、さまざまなITサービスを提供します。

 クラウド・コンピューティングは、「グリッド・コンピューティング」、「オートノミック・コンピューティング」、「SOA(Service Oriented Architecture」、「SaaS(Software as a Service)」とどこが違うのでしょうか。実はクラウド・コンピューティングは、これらのアーキテクチャーやビジネス・モデルの延長上にあり、「水道のように信頼感をもっていつでもどこでもサービスを受けられる」というITの理想に近づく進化のプロセスであるといえます。これら既存ITの延長上にパラダイムシフトが起きようとしているのです。

なぜクラウドなのか?

 それではクラウド・コンピューティングは、なぜこれほど注目と期待を集めているのでしょうか。それは、人々がサービスをインターネット上で買うことへの抵抗感がなくなってきたことや、Linux(R)コミュニティーに代表されるように、組織に縛られずコミュニティーを中心とした活動が重視される社会になりつつあることが関係しています。オープンなコミュニティーが動的に結成され、ある目的を達成しようとするとそのためのインフラが必要になります。そうした動きがクラウドを促進するドライバーにもなっているのです。

 パブリック・クラウドでは、すでにメール・サービスやオフィス・アプリケーション、CRMアプリケーションなどがサービスとして提供されていますが、現時点ではまだ利便性を追求している段階です。しかしインターネットも、最初は「検索もできて便利なツール」にすぎなかったのが、今ではビジネス・モデルにも影響を及ぼすまでになっています。パブリック・クラウドもそういう進化プロセスをたどっていくことでしょう。これが識者や調査会社が、クラウド・コンピューティングの爆発的な成長を予想する理由でもあります。

 そして、エンタープライズ・プライベート・クラウドは、企業内クラウドの発展形として、企業グループ・クラウドや業界クラウドへと展開され、さらには、必要に応じてパブリック・クラウドも組み合わせ、目的に合わせてさまざまなサービスを有機的に活用する「ハイブリッド・クラウド」へと発展していくでしょう(図1-2)。

 このように、クラウドは進化の過程にあり、社会のパラダイムシフトを起こすまでにはまだ少し時間がかかるかもしれません。しかしながら、すでにIBMが携わった実際の事例においてクラウド・コンピューティングの大きな可能性を示唆する成果が出ていますので、次にその幾つかをご紹介しましょう。

著者
三崎 文敬(みさき ふみたか)
日本IBM
日本アイ・ビー・エム大和研究所に入社後、製品開発担当や製品企画担当などを経て、IBMコーポレーションの技術戦略部門スタッフ。2001年以降はLinux、Grid、Virtulization、Autonomic ComputingといったEBO(Emerging Business Opportunity)のビジネス・インキュベーションに従事し、2009年1月より未来価値創造事業 クラウドコンピューティング事業推進部長として全社のクラウド戦略を担当。

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