国内情報セキュリティ産業の動向

2009年11月25日(水)
勝見 勉

日本の情報セキュリティ産業は7000億円規模

 図2-1は、経済産業省の「平成20年度情報セキュリティ市場調査」報告書に示されている日本の情報セキュリティ産業の市場規模の推移です。2008年度の実績見込みベースで見ると、全体で7268億円。うちツールが3748億円で、サービスが3520億円となり、ツールとサービスがほぼ半々の構成になっています。

 同報告書による市場の成長率は、ツール、サービス、全体の順に、2007年度は、18.3%、11.1%、14.7%。2008年度は、8.3%、4.0%、6.1%。2009年度はマイナス3.0%、マイナス8.0%、マイナス5.4%です。2007年度は14.7%、2008年度は6.1%と、ほかの産業に比べると高い成長率を示しています。情報セキュリティに対する積極的な投資/支出が行われたことがうかがえます。

 情報セキュリティに対する積極的な投資は、どのような要因によるのでしょうか。政府統計によれば、2005~2007年度は日本経済の状況が良く、2008年度にも好調が予想されていました。こうした経済的背景が情報セキュリティ市場拡大の裏にあったと考えられます。

 2006年度と2007年度には大規模な情報漏えい事件が頻発し、情報漏えい対策への企業の関心が高まりました。特に、従業員や委託先からの情報の持ち出しや不注意による漏えいが目立ったことから、内部対策に目が向けられました。

 2008年度からは内部統制報告制度が施行されました。誰がどのシステムのどの処理に携わり、それを誰がコントロールするのかといったアクセス制御が重要になり、このようなIT統制を充実させるためにデータの保護を含めたセキュリティ対策が不可欠になりました。

 このように、内部からのセキュリティ対策に目が向けられるようになったことが、企業の情報セキュリティ投資の背中を一層強く押すことになったと言えます。

日本の情報セキュリティ市場って、大きいの?小さいの?

 では、7000億円程度という日本の情報セキュリティ市場は、IT産業全体から見ると、どの程度の規模なのでしょうか。経済産業省の報告書では、関連する産業との比較をしています。

 IT産業の規模としては、社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が、ソフトウエア/サービス、コンピューター、およびパソコンの国内出荷統計を出していて、2007年度の合計は7兆4680億円になります。同じ年の情報セキュリティ市場は6847億円ですから、IT産業の規模に対しては約9.2%となります。また、上記JEITAの数字に周辺機器や通信機器の国内出荷額(輸入を含む)も加えた合計値との比較では、情報セキュリティ市場の比率は7.7%であると言っています。

 一方、日本国内の情報セキュリティ市場の規模は、海外と比較してどうでしょうか。経済産業省の報告書では、外部調査機関による世界市場データを利用して、世界市場との比較も行っています。その部分をひも解くと、図2-2のような状況であり、日本は世界の12.8%を占めています。

 世界で最大の情報セキュリティ市場は北アメリカで、2兆4000億円程度。世界の45.8%を占めます。次いで大きいのが西ヨーロッパで、1兆4000億円程度、27.3%となります。次が日本の約6800億円で12.8%。そして日本を除くアジア太平洋地域が約4000億円で7.8%となります。その他の3300億円を加えて、世界全体の合計では5兆3000億円という巨大な産業になっていることが分かります。

 同報告書が示している経済規模との比較では、経済協力開発機構(OECD)加盟国の地域別比率は、北アメリカ(37.3%)、西ヨーロッパ(40.7%)、日本(10.8%)、アジア太平洋(5.0%)、その他(6.2%)となっており、西ヨーロッパだけが経済規模に比べて情報セキュリティ支出が小さい、という結果が出ています。

 次ページでは、さらに細かく、セキュリティ・ツールとセキュリティ・サービスそれぞれの内訳分類別の市場動向を紹介します。

IPA セキュリティセンター
日新電機、シマンテック、GSX、リコー関連会社で情報セキュリティ事業の企画推進、営業、マーケティングの責任者を歴任、草創期から日本のITセキュリティの普及に携わる。現在IPAセキュリティセンター研究員兼株式会社情報経済研究所代表取締役。NPO日本ネットワークセキュリティ協会理事・幹事、NPO日本セキュリティ監査協会幹事、CISA、CAISアソシエイト、情報セキュリティアドミニストレータ、ISMS審査員補。

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