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令和3年度 午後I試験 問2 「ネットワークの統合に関する問題」の解説

2021年12月10日(金)
加藤 裕

はじめに

今回は、令和3年度 ネットワークスペシャリスト 午後I試験 問2を取り上げて解説を行います。試験問題はこちらからダウンロードできますので、解説を読む前に問題に挑戦してみてください。

午後I試験問2の解説

問2は2社のネットワークの統合に関する問題です。前回同様にまず問題文の構成について着目すると、問2も問1と同様に全体説明と3つの大括弧([ ])で区切られた段落で構成されています。段落は問題に回答する際の重要な情報となるため、後でもすぐに見つけられるよう、問の本文を読み込む際に問題冊子の段落名の箇所に線を引く・丸で囲むなどして強調しておくと良いでしょう。

表1:問2の段落名と開始場所

段落名 開始場所
D社の現行のネットワークの概要 8ページ8行目
OSPFによる経路制御 10ページ10行目
D社とE社のネットワーク統合の検討 11ページ2行目

また、問の全体説明にある通り、設問ではOSPFの話題を中心としたルーティングの技術的な問題が多く出題されています。出題されている分野が比較的狭いため、特にルーティングに関する知識に自信がある方にとっては比較的取り組みやすい問題だと言えます。

それでは、設問1~4について解説していきます。

設問1の解説と解答例

OSPFに関する穴埋め問題です。回答にはOSPFに関する知識が必要となるため、すぐに解答が思い浮かばない場合は一旦回答を後回しにしても良いでしょう。また、穴埋め問題は記述式と比較して一般的には配点が低く設定されていることから、1つ2つ回答できなくても以降の問題の回答に自信があれば気にしなくても良いでしょう。

  • [ a ]は、10ページ5行目などに「IPsec VPN認証用の事前[ a ]」の記述があります。IPsecでは機器間で認証を行う際に事前共有鍵を利用するため、[ a ]の解答は【共有鍵】となります。

  • [ b ]は、10ページ15行目に「[ b ]LSAと呼ばれるType1のLSA」の記述があります。OSPFのType1のLSAはルータLSAであるため、[ b ]の解答は【ルータ】となります。
    なお、この後の文章には「OSPFエリア内の[ b ]に関する情報であり, (略)メトリック値などが含まれている」の記述があります。メトリック値はルーティング情報の1つであることから、そこから連想して[ b ]はルータだと導き出すこともできます。このように本文の前後には回答のヒントにつながる記述がなされている場合もあるため、しっかりと本文全体に目を通しておくと良いでしょう。

  • [ c ]は、10ページ16行目に「Type1のLSAは,(略) [ c ]と呼ばれるメトリック値などが含まれている。」の記述があります。メトリック値とはルーティングで利用される要素の1つであり、同一の宛先ネットワークに対する経路が複数存在した場合にはこの値を参照して採用する経路を決定します。OSPFのメトリック値はコストと呼ばれるため、解答は【コスト】となります。
    なお、同じルーティングプロトコルの1つであるRIP(Routing Information Protocol)のメトリック値にはホップ数と呼ばれる値を利用します。RIPが利用される機会はかなり減りましたが、用語としては覚えておくと良いでしょう。

  • [ d ]は、10ページ19行目に「LSAの情報を基にして,[ d ]アルゴリズムを用いた」の記述があります。OSPFの最短経路を計算するアルゴリズムはダイクストラアルゴリズムのため、解答は【ダイクストラ】となります。

  • [ e ]は、10ページ24行目に「支社ネットワーク集約がされた状態で,(略) 一つに集約された,[ e ]/16を宛先とする経路が確認できる。」の記述があります。セグメントa~gの情報は9ページ表1にあり、これらを前提条件として与えられた「/16」で集約すると172.16.0.0/16となります。したがって解答は【172.16.0.0】となります。

設問2の解説と解答例

OSPFの設定に関する問題です。下線部①には「全社のOSPFエリアからインターネットへのアクセスを可能にするための設定」とあります。9ページ図1を確認すると、インターネットは本社にしか接続されておらず、各支店は本社のFWを経由してインターネットに接続する必要があることがわかります。また、8ページ26行目には「FWにはインターネットへの静的デフォルト経路を設定」とあります。

これらのことから、本社のルータや各支店のL3SWにFWをデフォルトルートとするように通知する設定を行えば、各支店はL3SWとルータ、FWを経由してインターネットに接続できると考えられます。したがって解答例は【OSPFへデフォルトルートを導入する。】などとなります。

設問3(1)の解説と解答例

OSPFの経路集約機能に関する問題です。設問文には「経路を集約する目的」とあり、特別な条件が指定されている訳ではありません。そのため、経路集約機能の一般的な目的を書けば、それが解答になります。したがって解答例は【ルーティングテーブルサイズを小さくする。】などとなります。

設問3(2)の解説と解答例

OSPFの経路集約機能を設定する機器を考える問題です。10ページ21行目には「D社では,支社へのネットワーク経路を集約することを目的として」とあるため、D社における経路集約の対象は支社のネットワークであるとわかります。次に9ページ図1を確認すると、支社のL3SW群は広域イーサ網を経由して本社のルータに接続されています。したがって、経路集約機能を設定する機器は【ルータ】となります。設問文には「図1中の機器名で答えよ」と条件が指定されているので注意が必要です。

設問3(3)の解説と解答例

経路集約機能を設定した場合に発生する可能性があるルーティングループについて考える問題です。これまでの本文や設問から、OSPFのエリア内にはデフォルトルートが伝えられていることと、本社のルータに172.16.0.0/16の支社ネットワーク集約がされていることがわかっています。これらの条件から、ルーティングループの発生する状況を考えてみます。

まず支社ネットワーク集約ですが、9ページ表1の通り、現在の支店では172.16.0.0/16に含まれるアドレスが全て利用されている訳でありません。そのため、例えば支店1のPCで172.16.13.1宛の通信が発生した場合、L3SW1はデフォルトルートを使い本社のルータを中継先として送信し、本社のルータもデフォルトルートを使いFWを中継先として送信します。しかし、FWには支社ネットワーク集約されたルート(172.16.0.0/16)がルータから伝えられていることから、中継先としてルータに送信してしまうことになりそうです。したがって解答は【ルータ】と【FW】の間になります。この設問も「図1中の機器名で答えよ」とあるので解答を記入する際は注意してください。

図1:設問3(3)におけるルーティングループの発生例

設問3(4)の解説と解答例

設問3(3)で取り上げたルーティングループを防ぐための設定を考える問題です。ルーティングループが発生する状況は設問3(3)で考えたので、この状況をさらに踏み込んで考えます。

ルーティングループが発生する原因の1つとして、支社ネットワーク内だけでの利用を想定している172.16.0.0/16宛の通信を、本社のルータからFWへ中継してしまうことが挙げられます。この状況を解消できれば、ルーティングループの発生を防ぐことができそうです。11ページ表2で与えられた情報を前提として具体的に考えると、本社のルータに支社ネットワーク集約(172.16.0.0/16)の通信を廃棄する設定を行えばループの発生を防ぐことができそうです(設問3(3)の解説で挙げたループの原因となる通信を、ロンゲストマッチのルールによりデフォルトルートを使わずに破棄できるため)。したがってfの解答は【ルータ】、gの解答は【172.16.0.0/16】となります。

図2:設問3(4)の設定によるルーティングループの防止

設問4(1)の解説と解答例

D社とE社のネットワークを統合した際に生じる課題を考える問題です。OSPFでは、あるエリアが他のエリアを経由した状態でエリア0に接続されている場合、そのエリアではエリア0のネットワーク情報を受け取ることができません。12ページ図2を見ると、D社側のOSPFエリア0とE社側のOSPFエリア0が、OSPFエリア1を経由した状態で接続されています。そのため、E社側のOSPFエリア0にはD社側のOSPFエリア0、すなわちD社の本社のネットワーク情報が伝えられないことになります。なお、E社はOSPFエリア0であるため、直接接続しているD社のOSPFエリア1、すなわちD社の支社のネットワークの情報は受け取ることができます(図3)。したがって解答は【h,i,j,k,l】となります。

図3:D社とE社のネットワークを統合した際のOSPFにおけるネットワーク情報の交換状況

設問4(2)の解説と解答例

下線部⑤の問題を解決するためのOSPFの設定について考える問題です。設問4(1)でも挙げましたが、OSPFではあるエリアが他のエリアを経由してエリア0に接続されている場合、エリア0のネットワーク情報を受け取ることができません。しかし、そのエリアとエリア0の間でバーチャルリンク(仮想リンク)を設定することで、そのエリアはエリア0の情報を受け取ることができます。

バーチャルリンクは、そのエリアとエリア0それぞれのエリア境界ルータ(ABR:Area Border Router)に設定することで動作します。12ページ図2を見ると、D社側とE社側のOSPFエリア0のエリア境界ルータはそれぞれ「ルータ」と「L3SW1」であることがわかります(図4)。したがって対象機器の解答は【ルータ】と【L3SW1】で、設定内容の解答例は【OSPF仮想リンクの接続設定を行う。】などとなります。

図4:ルータとL3SW1間の仮想リンクの設定

設問4(3)の解説と解答例

D社とE社のネットワークを統合した際の支社ネットワーク集約の扱いに関する問題です。13ページ3行には「D社ネットワークで (略) 支社個別経路が表れてしまう。」という問題が記されているので、この問題を解決する設定を考えます。

現在のOSPFの設定では、D社の本社のルータには支社ネットワーク集約がされています。しかし、E社側のOSPFエリア0のABRであるD社の支店のL3SW1には支店ネットワーク集約が設定されておらず、支社個別経路を受け取ることになります。また、D社の支店のL3SW1と本社のルータ間には仮想リンクが設定されているため、L3SW1で受け取った支店個別経路は本社のルータまで届けられます。その結果、ロンゲストマッチのルールから本社のルータに設定した支社ネットワーク集約が利用されなくなります。

これらのことから、問題を解決するにはL3SW1にも支社ネットワーク集約の設定を行えば良いことになります。したがって設定が必要なネットワーク機器の解答は【L3SW1】で、設定内容の解答例は【OSPFエリア1の支社個別経路を172.16.0.0/16に集約する。】などとなります。

おわりに

今回は、令和3年度の午後I試験 問2をピックアップして解説しました。試験では設問3のように、これまでの設問の解答を前提とした内容が出題されることもあります。この場合、その問の設問前半部分の解答が導き出せないと、後半部分の設問の解答が困難になるため、選択する問題を切り替えるなどの判断が必要になります。時間配分含めて十分に気を付けましょう。

次回は、令和3年度午後I試験 問3の考え方・解き方を取り上げていきます。

NECマネジメントパートナー株式会社 人材開発サービス事業部
2001年日本電気株式会社入社。ネットワーク機器の販促部門を経て教育部門に所属。主にネットワーク領域の研修を担当している。インストラクターとして社内外の人材育成に努めているほか、研修の開発・改訂やメンテナンスも担当している。

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