ファイル・サーバーの課題を解決する
ファイル・サーバー統合の問題点
今回は、ファイル・サーバー統合における問題点と、アプライアンスを用いた解決方法について紹介します。
ファイル・サーバーは、一般的なサーバー市場とは異なり、アプライアンス製品が主体となって進化をしてきた歴史があります。というのも、WindowsやUNIXなどの異なるクライアントOSが多数アクセスしてくる環境において、高性能、高可用性を備えたファイル・サーバーが必要とされていたからです。
一般的なファイル・サーバーに必要な機能要件として、以下のものが挙げられます。
- ファイル・サーバー1台で100~1000クライアントの同時アクセスに耐えられる高い性能
- 異なるアクセス・プロトコルから同一ファイルを操作できる、マルチプロトコル・アクセス機能
- スナップショット、ディスク・ツー・ディスク・バックアップ、災害対策などのデータ保護機能
- 単一点障害の発生でサービス停止しない高い可用性
ファイル・サーバー・アプライアンスは、これらの機能を10年近く前から実装しています。安定性に関しても十分に成熟してきており、すでに多くの企業で利用されています。
ところが、ここ数年は管理コスト削減の目的で、数千を超えるクライアントがアクセスするような、全社的なファイル・サーバーを統合する要件が増えてきました。また、コンテンツのリッチ化により、ファイル・サイズも大きくなってきました。
その結果、ファイル・サーバー・アプライアンスですら、ユーザー数の増加による性能不足、容量不足に悩まされるケースが出てきたのです。
これまでは、性能や容量が不足した場合は、ファイル・サーバーを1セット、もう1セットと追加で購入するやり方が一般的でした。この結果、複数のファイル・サーバーが点在(アイランド化)するという現象が増えています。
ファイル・サーバーのアイランド化によって起こることは、管理の複雑化と、余剰資源の発生です。
ファイル・サーバー統合に必要な要件
図1のように、ファイル・サーバーのアイランド化は、定期的にシステムが停止したり、ファイルサーバーが分割されることで利用効率が下がったりと、ユーザーにも影響を与えます。もちろん、管理に工数がとられるため、運用コストも増大していきます。
ファイル・サーバーのアイランド化によって、以下の問題が起こります。
(A)ファイル・サーバーごとに管理が必要になり、管理工数が増加する
(B)ユーザーは複数の共有ディレクトリを割り当てられ、利用しづらくなる
(C)利用頻度の低いファイル・サーバーができてしまい、資源の無駄が発生する
(D)増設や構成変更が大規模になりやすく、ユーザーへの影響が伴うシステム停止作業が発生する
これらの問題を整理すると、ユーザー数、データ量が増え続けることが予期されるファイル・サーバー統合においては、今までのファイル・サーバー要件に加えて、以下の要件が必要になることが分かります。
(a)管理者が一元管理できること
(b)ユーザーから見て、ファイル・サーバーが一元化されていること
(c)ファイル・サーバー資源の有効活用ができること
(d)システム増設に柔軟に対応できること
実は、こういった新しい要件に応えるために、新しいアプライアンスが登場してきています。今回は、こうした新しいアプライアンスのカテゴリを3つ紹介します。
(1)クラスタ型ファイル・サーバー・アプライアンスを用いて、ファイル・サーバー全体をリプレースする
(2)ファイル仮想化アプライアンスを用いて、既存サーバー資源を活用しつつ仮想的に統合する
(3)ファイル圧縮アプライアンスを用いて、既存サーバーの容量を圧縮して活用する
この3つはアプライアンスの新分野ですが、古くからある分野でもアプライアンスの強化が進んでいます。今回は、ファイル・サーバーのデータをバックアップするために進化を続けている、(4)ディスク・ベースのバックアップ・アプライアンスについても紹介します。
次のページからは、これらのアプライアンスの動作と特徴について解説します。