JSONとFREDDY、変貌するWeb技術
JSON
冒頭で紹介したJSONはJavaScriptの文法に従った半構造データ記述形式である。JSONを利用すれば、前述したDynamic Script Tagを利用してWebサーバーとWebブラウザ間でデータ通信を行うことができる。
JSONは非常に単純な構造で構成されている。文字列、数字、真偽値、nullという4つのプリミティブ型を持ち、配列もしくはオブジェクトを構成することができる。また入れ子にすることも可能であり、文法はJavaScriptの完全なサブセットとなっている。
Dynamic Script TagとJSONを利用して、クロスドメインのデータ通信を行う手法はJSONPとして知られている。JSONPによって読み込まれたJSONデータはJavaScriptのオブシェクトツリーとしてWebアプリケーションのメモリ空間上に展開される。
この方法はメモリ内に半構造データを展開し、そのオブジェクトの木構造にプログラムからアクセスするという点でDOMと類似した手法であると考えることができる。
JSONやDOMの利点は、メモリ上に展開された木が更新可能であり、また任意の要素にアクセスするのが容易であるという点である。一方で欠点は、処理を行うコンピュータが搭載しているメモリ量によって、利用できるXML文書のサイズが制限されてしまうことである。また、センサーデータなどのストリームデータを扱うこともできない。
Webクライアントの計算資源は多種多様であり、これらすべてをターゲットとするサービスを考える際、これらの制約は非常に重要な問題であると考えられる。
XMLにおいては搭載メモリ量に左右されない処理手法としてSAXが利用されている。SAXはXML文書を先頭から走査し、要素開始、文字列、要素の終了などを発見する度にイベントとしてユーザに通知する順次アクセス型の手法で、読み込みと同時に処理を開始でき、メモリ負担も低いなどの特徴を持っている。
XMLの世界では、このようにDOMとSAXという利点が異なる2つのツールを使い分けて、さまざまなアプリケーションを作りだしている。ところが現状のWebにおいては、DOMに相当するJSONに対して、SAXに相当するツールが無い。Webブラウザで表計算やワープロなど高度なアプリケーションが提供されはじめている現状をかんがみると、サーバ用コンピュータからシンクライアントまで存在するWebにおいて、通信するデータ量のスケーラビリティー確保は重要な課題であると考える。
SAXは計算資源の大小にかかわらず大きなXML文書を高速に処理する仕組みである、そこで、筆者らはWebにおいてSAXに相当し、かつJSONのように軽量なシステムFREDDYを提案している。
FREDDY vs. JSON?
FREDDYはJSONを置き換えたり、否定したりするものではない。XMLのDOMとSAXのように、欠点を補完しあう存在であると考えている。ところでJSONはJavaScript Object Notationの略だが、FREDDYは何かの略語という訳ではない。JSONがJSONという名称なのでFREDDYと名付けただけで、もしJSONがPREDATORという名称だったなら、私はこのシステムをALIENと名付けたと思う。
さて次ページでは、まずJSONを使ったWebサーバー・ブラウザ間通信の実装について例示したい。といっても、AjaxやJSONの使い方は、すでにさまざまな解説がなされているので、ここでは、少しマニアックなJavaScriptのライブラリを紹介し、それを通してJSONを扱う手法を示す。