DWHのプライベート・クラウド化
プライベート・クラウドはグローバル展開に向く
プライベート・クラウド(仮想化環境)は、海外で事業を展開するグローバル企業にとっては、特にメリットが大きいシステム形態です(図3)。サーバー資産を効率的に活用でき、運用負荷の軽減にもつながります。
日本と北米には時差があるため、日本での処理負荷がピークとなるタイミングでは、北米事業所のDWHに割り当てているサーバー・リソースを縮小させて日本に割り当てるといった運用が可能になります。
APAC(アジア太平洋)地域に新たな事業所を設立した際にも、新規にDWHサービスを迅速に立ち上げられます。EMEA(欧州、中東、アフリカ)地域で事業所の統合があった場合に、2つのDWHを1つに統合することも容易です。
DWHのクラウド利用事例
DWHのプライベート・クラウド化を開始している例として、米Zions Bancorporationの事例や、米Fox Interactive Media傘下の米MySpace.comの事例があります。
米Zions Bancorporationでは、データ・モデリングを削減し、これまでデータ・ソースごとに分散していたシステム/データをDWHに統合しました。各ユーザーにサンドボックスを提供し、それぞれのPC上に分散していたデータもDWHに統合することに成功しました。
米MySpace.comでは、データのモデリングを無くし、生データをそのままDWHに投入しています。各アナリストは、割り当てられたサンドボックスを活用してデータ分析の試行錯誤を行い、その結果をアナリスト間で共有しています。
米MySpace.comではまた、マーケティング・キャンペーンなどで一時的にDWHが必要になった際に、新規にDWHのサービスを追加してキャンペーン活動を迅速に開始できるようにしています。
最後に
従来はコストや性能の問題があったため、データのモデリングが重要であり、DWHに投入するデータの選別も必要でした。ところが、現在ではDWH製品の種類が増え、新たなDWH構築手法も登場するなど、企業データの一元管理/活用が容易になってきました。
こうした中、DWHのクラウド化は、エンタープライズDWHが抱えていた問題を解決する1つの方法になります。また、グローバル展開を視野に入れた企業では、リソースの共有や迅速なDWHの立ち上げといった点から、クラウド環境(仮想環境)の重要性がますます高まっています。
これで全4回の連載は終わりです。本連載で解説した製品ノウハウや構築ノウハウを、大規模化するDWHを効率よく構築/運用するためのヒントとして活用していただければ幸いです。