【号外:組織浸透の秘訣】11月16日開催「生成AI EXPO in 東海」犬山会場レポート
- 1 はじめに
- 2 「生成AI EXPO in 東海」とは
- 3 犬山会場で行われた内容について
- 4 犬山会場1で開催されたセッション
- 4.1 10:00〜10:10「開会挨拶」
- 4.2 11:00〜12:00「AIバーチャルヒューマンが日本を救う!? 5年後こうなる」
- 4.3 13:00〜14:00「ユニコーンを目指す企業の生成AIの使い方」
- 4.4 14:00〜15:00「経営視点から見た生成AIの位置づけと活用法」
- 4.5 15:00〜16:00「チームの自律をAIで育む?」
- 5 犬山会場1で開催されたセッション
- 5.1 11:00〜12:00「犬山市役所の事例」
- 5.2 12:00〜13:00「人口減少先進地飛騨市が挑む生成AI未来図」〜あしたはスウィートパラダイス〜
- 5.3 15:00〜15:50「世代を超えたビジネスの問い 生成AIで生まれる未来のビジョン」
- 6 IKGAI Lab.も登壇しました!
- 7 犬山会場を終えて
はじめに
本連載は、生成AIコミュニティ「IKIGAI lab.」で活動している8名で運営しています。この記事を通して、ぜひ皆さまも各々の半歩先の未来を想像しながら、色々な価値観を楽しんでいただけると嬉しいです。
2024年11月15日(金)から11月17日(日)にかけて「生成AI EXPO in 東海」が開催されました。今回は11月16日に行われた犬山会場について、詳細を報告します。ぜひお楽しみください!
「生成AI EXPO in 東海」とは
2023年12月、犬山市を起点に地域を巻き込んでスタートした生成AIイベントが、愛知県内外のコミュニティや関係者からの要望を受け「生成AIEXPO in 東海」として大規模開催されました。イベントには約70の団体が所属し、各業界の最先端で活躍する専門家が登壇。自治体の協力を得て、専門的な内容を一般の参加者にも分かりやすく解説しました。
また、イベントの盛り上がりを継続させるためサイドイベントを複数回実施し、累計参加者数は約1,000名に達しました。生成AIが地域社会と結びつき、新たな可能性を生み出す場となりました。
ベントを複数回実施し、累計参加者数は約1,000名に達しました。生成AIが地域社会と結びつき、新たな可能性を生み出す場となりました。犬山会場で行われた内容について
場所は「犬山市民交流センター フロイデ」(以下、フロイデ)で行われました。今回は、フロイデ内の2会場で行われたセッションを一部、紹介します。
犬山会場1で開催されたセッション
10:00〜10:10「開会挨拶」
登壇者:
・原 よしのぶ氏 / 犬山市長
・田中 悠介氏 / Givin’ Back 株式会社 取締役
犬山市では2023年6月、生成AIの試験導入に踏み切り、業務効率化と市民サービス向上に貢献しています。
原氏は最近の生成AIをはじめとする技術進化を取り上げ、「まるでドラえもんの世界が来た。しかし、AIはあくまでツール。最終的な意思決定は人間、つまり私たち自身が行うことを忘れてはいけない」とAIを活用する上での人の在り方を伝え、開会あいさつを締めくくりました。
11:00〜12:00「AIバーチャルヒューマンが日本を救う!? 5年後こうなる」
登壇者:
・園田 励 氏 / AiHUB株式会社 代表取締役CEO / AI/UXデザイナー
モデレータ:
・髙橋 和馬氏 / IKIGAI lab.オーナー / 富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
このセッションでは、エンタメ分野に特化したAI技術開発を手掛ける園田氏が、バーチャルヒューマンとアニメ制作へのAI活用をテーマに、革新的な取り組みと未来展望を語りました。
AIオーケストレーションでエンタメを進化
AiHUB株式会社は、複数のAIや既存技術を組み合わせる「AIオーケストレーション」を強みとし、日本のアニメやVTuberといったエンタメコンテンツの可能性を広げています。特にアニメ制作においては、AI導入により制作時間を10分の1に短縮することを目指し、効率化と表現の多様化を追求しています。
バーチャルヒューマン:誰もが創造できる未来へ
「SoftBank World 2024」でナビゲーターを務めたバーチャルヒューマン「Sali(サリー)」の事例を交え、自然な表情や動きを実現する技術力を紹介しました。将来的には、ユーザーがノーコードで自分だけのバーチャルヒューマンを作成できるツール開発を目指し、エンタメ体験の demokratize(民主化)を推進します。
アニメ×AI×バーチャルヒューマン:新たな世界を創造
24時間稼働可能な多言語対応バーチャルヒューマンは、ライブコマースやファンアプリなど多様な分野で活用が期待されます。また、AIによるアニメ制作の効率化は、個別のニーズに合わせたカスタマイズや国際市場への展開を加速させます。
国の競争力を測る新指標「AIGDP」の提唱
AIとバーチャルヒューマン技術は、労働力代替や個人の能力拡張を通じて、国の競争力にも影響を与えます。講演ではAI化率やAIGDPといった新しい指標の重要性にも触れ、これらの技術を積極的に活用し、個人や組織の能力を拡張することの重要性を強調しました。
13:00〜14:00「ユニコーンを目指す企業の生成AIの使い方」
登壇者:
・髙石 将輝氏 / アイクリスタル株式会社 代表取締役
モデレータ:
・Hiroshi氏 / web3僧侶 元シュンスケ式プロンプトデザインコミュニティマネージャー
名古屋大学発のAIスタートアップのアイクリスタル株式会社は創業5年目。27名のエンジニアを中心に、大手メーカー出身者で構成された現場志向の強い組織で、製造業のデジタル変革を推進しています。
同社は、材料系の研究者であるメンバーが抱えていた「実験を効率化したい」という切実な思いを原点に、製造条件の最適化を実現するデジタルツイン技術を開発・活用しています。2,000℃にも達する高温の製造装置内部をデジタル空間で再現し、AIが最適な条件を探索します。この技術により、従来100時間を要していたシミュレーションをわずか0.001秒で完了させるなど、劇的な効率化を実現しました。
また「一装置一モデル」のコンセプトを基に、顧客ごとにカスタマイズされたAIモデルを提供。モデルの作成から最適化までを約3ヶ月という短期間でサポートしています。さらに、製造業に特有のデータ不足という課題に対しては物理現象をAIモデルに事前に組み込む手法を採用。これにより、高精度な最適化を可能にしています。
社内の生成AI活用事例を紹介
さらに、社内業務効率化のために開発されたLLM活用システム「AI Agent」も注目すべき点です。複数のLLMエージェントが連携し、ユーザーの指示に基づき自律的にタスクを処理をすると紹介されました。すでに7000万回以上のLLM同士の会話実績があり、その効果を裏付けています。
未来の製造業の展望
製造業(モノづくり)だからこそ、デジタル空間での競争激化が考えられ、データ活用こそが競争力の源泉だと考えています。高石氏は「アイクリスタル株式会社はデジタルツイン、LLM、そして生成AI。これらの技術を武器に、日本企業の競争力強化に貢献したい」とお話しされていました。
14:00〜15:00「経営視点から見た生成AIの位置づけと活用法」
登壇者:
・齊藤 秀氏 / 株式会社SIGNATE 代表取締役社長CEO/Founder
齊藤氏がCEOを務める株式会社SIGNATEのサービスでは、これまで1,000社以上のDXを支援してきました。齊藤氏からは、その経験を通じて見えてきた生成AIの現状と今後の展開、経営における位置づけ、企業内での活用アプローチ、そして今後の差別化ポイントについて話されました。
現状、生成AIは人間と同等の問題解決能力に近づきつつあり、ユーザーに変わって行動できるようになってきています。また、経営者視点では
- AIエージェントによるAI労働力
- AIと連携した人間の労働力 /ul> という新たな概念が登場してきました。そこで、企業はAI労働力を活用するために
- 環境整備
- スキルアップ支援
- 従業員のモチベーション向上
- ユースケースの設定
- 社員のリテラシー
- データ品質
- 補助金申請書のドラフト作成
- 様々な文書の校正
- Excel関数の生成や数式作成
- 議事録作成支援
- アイデア出し
- 壁打ち
- 企画書作成
- 仕様書作成
- チラシ、ポスター作成
- 謝罪文作成
- ノートブックLMによる資料読み込みと要約
最後に齊藤氏は、今後は技術やテーマが変わっていく中で「社内だけでなく外部とも連携しながらオープンイノベーションをすることで、生成AIによる差別化が可能になると宣言して、セッションを締めくくりました。
15:00〜16:00「チームの自律をAIで育む?」
登壇者:
・佐土井 有里氏 / 名城大学 経済学部教授 / 名城大学大学院 経済研究科主任教授
モデレータ:
・Hiroshi氏 / web3僧侶 元シュンスケ式プロンプトデザインコミュニティマネージャー
佐土井氏は、これまでの研究の多くは「AIがいかに自律的に意思決定できるようになるか」という点に焦点が当てられている中で「AIが人間、特にチームの自律性、自発的に行動する自立性を高めるためのツールにならないか」をテーマに研究を行っています。そんな研究や経験に基づく視点から、AIについての考察を紹介していただきました。
生成AIの導入状況
AI市場は急速に拡大しており、数年後には市場規模がさらに数倍になると予想されています。しかし、日本企業のAI導入率はアメリカに比べて低いのが現状で、社内の理解不足や人材不足が課題となっています。また、導入率は企業規模も関係があり、従業員数1,000人以上の企業では30%以上が生成AIを導入していることが紹介されました。
生成AIのユースケースと実験
生成AIのユースケースとして、おもてなしAIや詐欺対策AI、半導体需要の増加や地政学リスク、暗黙知の継承などで活用できると紹介されました。また、大学においては学生がレポートや卒業論文等の様々な作業をAI効率化できても教員側がAIの利用を見抜くことは難しく、学生の主体的な学びを阻害する可能性も懸念されているとのこと。
しかし、AIは5年後は当たり前になり、生成AIを使える人材と使えない人材の間には将来的に大きな差が生まれる可能性がある。そのため、ゼミでのディスカッションで生成AIを使った結果、学生たちのグループの方がユニークな意見が出されていたことも紹介されていました。
犬山会場1で開催されたセッション
11:00〜12:00「犬山市役所の事例」
登壇者:
・田中 悠介氏 / Givin’ Back 株式会社 取締役
モデレータ:
・山内 章啓氏 / リキッドセンス 代表
このセッションでは、愛知県犬山市役所における生成AI活用について、下記の分野における事例が紹介されました。
今後の展望としては「新サービスの開発や他自治体との連携を進め、生成AIの活用範囲を広げていく」ため、2025年3月までに職員向けのガイドラインを策定し、適切なAI利用を促進していくと説明されていました。また、AIリテラシーの向上も重要な課題であり、職員がより効果的に生成AIを活用できるよう、研修などを実施していく予定とのこと。
12:00〜13:00「人口減少先進地飛騨市が挑む生成AI未来図」
〜あしたはスウィートパラダイス〜
登壇者:
・亀谷 政晃氏 / 岐阜県 飛騨市役所 企画部
モデレータ:
・國末 拓実氏 / ソウルドアウト(株) 生成AI研究室 オーナー
このセッションでは生成AIブームを俯瞰し、その本質を理解することでより効果的な活用方法を見つけることができました。
飛騨市は10年ほど前から関係人口の創出に取り組んできましたが、そろそろ新たなアプローチが必要だと考えています。そこで生成AIに注目し、飛騨市役所では職員向けのセミナーを開催するなど、積極的に活用を推進しています。
飛騨市における具体的な生成AIの活用事例
飛騨市役所では、以下の業務で生成AIを活用しているとのこと。
生成AIブームを俯瞰して歴史を振り返る
これまでの生成AIブームは研究者など限られた人たちのものでしたが、生成AIの登場によって一般の人々もAIを身近に感じられるようになりました。最近ではAIに関する書籍もChatGPTのような生成AIの使い方に関するものが増えています。これは、AIが一般の人々にとって、より身近な存在になったことを示しています。
亀谷氏からは、そんなAIの進化を理解するには哲学的な視点も重要で「『AIは人間を理解できるのか』『AIにとって世界はどのように見えるのか』といった問いに向き合うことで、AIの本質をより深く理解できる」と提言されていました。
飛騨市生成AI未来図とは
最後に、飛騨市における生成AI活用の未来図について語られました。「アルゴリズム上司」や「地方創生AI大臣」はデータに基づき客観的な判断が瞬時に可能な存在。また、ヴァーチャル空間で亡くなった人を再生復活する「ヴァーチャルフィギュア」や、異常気象などに農作物が左右されない「AI3Dプリンタ」、さらに生成AIで作詞作曲したという「Sweet Ai Pradise」がテレパシー的(!?)に披露されて終了しました。
15:00〜15:50「世代を超えたビジネスの問い 生成AIで生まれる未来のビジョン」
登壇者:
・近藤 にこる氏 / EdFusion 代表
・三宅 漣氏 / 岐阜大学起業部 部長
・山下 青夏氏 / 合同会社KANNON CEO
・谷川 英佑氏 / (株)トップフォート 代表取締役社長
モデレータ:
・川瀬 崇裕氏 / 合同会社メディカル・シナジー 代表/医師
このセッションでは、学生起業家と若手経営者が生成AIの活用とその未来について議論しました。
学生起業家視点での生成AIの活用
中学生起業家のにこる氏は、教育分野でAIを活用した事例を紹介しました。生成AIを用いてブレインストーミングやWebページ制作、MVP制作を行い、教育現場にもAIを導入しています。特に、生成AIを活用することで教育の質を向上させる活動を推進しています。岐阜大学の井上氏は、地域課題解決を目指す学生起業部の活動を通じて、生成AIでアイデアのブラッシュアップやプロトタイプ作成、競合調査を効率化する事例を発表しました。
若手経営者視点での生成AIの活用
山下氏は視覚障がい者支援ツールや企業のDX推進事業で生成AIを活用しており、特にシステムフローの可視化やデザイン提案を通じて業務効率化を実現しています。また、谷川氏は生成AIを活用したマーケティング支援や画像認識アプリ開発の事例を紹介し、日本市場における生成AI活用の潜在ニーズを指摘しました。
学生から経営者まで、生成AIはアイデア創出や業務効率化、教育やビジネス支援の分野でも広がりを見せています。本セッションは、AIの活用が未来のビジネスや社会の変革を加速させる可能性を示唆する場となりました。
IKGAI Lab.も登壇しました!
犬山会場では、本連載「Gen AI Times」の執筆を担当するIKIGAI Lab.のメンバーも多くのセッションで登壇しました! 各セッションでは、生成AIの実際の活用術から最新動向などをお話しさせていただきました。
ここでは内容までは触れませんが、IKIGAI Lab.のメンバーが登壇したセッションを紹介します。
「生成AIの最前線」
登壇者:
・田中 悠介氏 / Givin' Back(株)
・福島 裕介氏 / 藤沢湘南台病院/合同会社コンポジション
・名古屋 彩美氏
モデレータ:
・髙橋 和馬氏 / 富士フイルムビジネスイノベーション(株)
「活用オタクたちの生成AIの奥深さ」
登壇者:
・中嶋 正純氏 / 株式会社マクロミル リサーチプランナー
・菊池 満帆氏/ 大手人材会社 研究員
・瀧口 真人氏 / 国内大手SIer 営業/事業開発
モデレータ:
・髙橋 和馬氏 / 富士フイルムビジネスイノベーション(株)
「初心者向け! 生成AI活用の第一歩」
登壇者:
・前田 優希氏 / 富士フイルムビジネスイノベーションジャパン(株) 営業職
・鍋谷 美帆氏 / 大手IT企業 経営企画/事業企画
モデレータ:
・池田 大喜氏 / Think IT「Gen AI Times」編集長
「今更聞けない生成AIの役立て方」
登壇者:
・大川 美里氏 / Think IT
・野村 康次郎氏 / 野村総合コンサルティング 代表
・細山田 隼人 氏 / 日本ペイント・オートモーティブコーティングス(株)(日本ペイントグループ)
モデレータ:
・新谷 信敬氏 / (株)スギ薬局 薬剤師
「ともに踏み出そう 親子で学ぶ生成AI 〜活用事例から注意点まで〜」
登壇者:
・稲垣 歩氏 / りえぞんプロダクツ株式会社 ディレクター
・近藤 憲治氏 / EdFusion CTO
モデレータ:
・新谷 信敬氏 / (株)スギ薬局 薬剤師
「異端児たちが語る生成AIの魅力と活用法」
登壇者:
・伊藤 雅康氏 / Studio veco
・minaco氏 / 東京都公立小学校
・野村 康次郎氏 / 野村総合コンサルティング 代表
モデレータ:
・池田 大喜氏 / Think IT「Gen AI Times」編集長
犬山会場を終えて
生成AIをうまく組織に浸透させDXを進める秘訣が分かる内容でした。デジタル化や生成AIの導入、活用だけでなく、組織の変革も同じだけの重要度だと気づく、とても良い機会になりました。
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写真: 山内 章啓
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