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ショッピングモールからトイレまで、プライバシーを侵す人相認識技術(1)

2017年7月27日(木)
ReadWrite Japan

先日、レストランやショッピングエリアで使われている、人相認識技術を使った電子表示板が、顧客にパーソナライズされた広告を表示するためだけでなく、小売業者がよりターゲットを絞り込んだマーケティングを行えるようになるという建前で、彼らの反応などを記録していた件について議論が巻き起こった。

オスロのレストラン Peppe’s Pizzaでデジタル広告の故障が起こり、電子表示板の裏側に設置されている人相認識のコードが露呈したことから今回の件は発覚した。この件の電子表示板にはカメラと、対象の性別や年齢、表情、メガネをかけているか、表示板の前にどれだけ留まっていたかなどを認識する機能が備わっている。

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これに対して、ダブリンに拠点を置くデザイナー Youssef Sarhanは自宅で調べ物をした結果、同じような電子表示板が稼働しており、彼の懸念はそれらの多くで現実のものとなっていることがわかった。

「あなたの反応(とそれに伴うメタデータ)は、あなたが知らない間に広告主に送られており、それを拒否する方法はありません。このことが問題の核となっています。裏で何が行われているのかわからず、何の通知もなく、拒否することもできない。これはプライバシーの侵害であり、受け入れられるものではありません。」

マーケティングにおけるAIおよび人相認識の活用についてさらに知るために、人相認識の企業 NTechLabの設立者である Artem Kuharenko に話を聞いた。彼らはニューラルネットワークを使った人相認識アルゴリズムを開発し、Washington Universityで2015年11月に行われた人相認識技術コンテスト Megafaceで、GoogleのFacenetを含む90の競合を制して優勝している。

この技術はのちにFindFaceに使われており、これにより誰でも自分の携帯で写真を撮ってサービスにアップロードすることで、1秒かからないうちにその人のSNSアカウントを見つけることができる。

これはTwitterユーザーが身元を守ったり、長く連絡を取っていない友人や親戚を見つけたり、新しい付き合いを開拓したりするのに役立っている。FindFaceは西ヨーロッパ最大のSNSであるVK(VK.com)での検索にも対応しており、未解決事件の解決や、犯罪者の特定に使われた実績もある。

彼らは先日、この技術が今や感情や年齢、性別の区別も可能になったと公表した。このことは小売業やセキュリティにおいて大きな影響を及ぼし、監視カメラに映った対象から恐怖や憎しみ、心配などの表情を読み取り、疑うことで犯罪者や逃亡中の容疑者を見つけ出すといったようなことができるようになるという。

Kuharenko氏に人相認識技術を使った電子表示板の利用について聞いてみた。彼のコメントは次の通りだ。

「企業が顧客のことをよりよく理解しようとすること自体に問題があるとは思いません。彼らは需要を読んでいるのであり、これは人類が始まって以来、企業が常に行ってきたことです。今ではビーコンやWiFiルータを使い、人々がどこでどのように生活しているのかという情報が大量に集められています。顧客のオンラインでの振る舞いを分析することで、好みや趣味といったことについてのあらゆる情報が集められることになります。人の感情を統計的に扱うのは今の世の中では普通のことだと言えます」

そこでスタートアップ(であれ何であれ)企業が自分たちの技術の使われ方についてどこまで影響力を持っているものなのか興味が湧いた。Kuharenko氏は、人相認識サービスは既にいくつかのショッピングモールで、出入りする人々の感情をモニターするのに使われていると説明し、更にこう付け加えた。

「世の中をより安全かつ快適なものにすることが我々の任務です。私たちの商品戦略や技術を使ったプロジェクトはこのことを達成するためのものです。どんな技術であれ、いい使い方をされることもあれば悪用されることもあるでしょう。いい影響を及ぼす利用例が、批判を起こす例の何百倍にもなるであろうことを信じます。個人での宇宙旅行について語られる世の中で、VR、ARやデジタル経済、情報の透明性についての人々の認識が50年前とさほど変わらないというのは妙な気もします。彼らは考えを変え、プライバシーとは何かということを見直す必要があるでしょう。」

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CATE LAWRENCE
[原文4]

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