課題管理対決!Redmine vs. Trac
コミュニケーションツールとしての検討
さて、RedmineとTracの機能を見てきましたが、両者とも広義の「課題管理ツール」であり、その観点から見ればRedmineの課題(Issue)、Tracのチケット(Ticket)の内容を比較しても両者に大きな差は特にありません。
Redmineの方はお手軽に導入してすぐに使い始められるツール、Tracの方は自分でチューンナップして、使いやすいものへと仕上げていくツールというイメージです(導入に関して言えば、Trac Lightningは、Redmineよりさらにお手軽感が高くなっています)。
ところで、プロジェクトで発生する課題の記録やトラッキングであれば、Excelやメールなどを使って行うことも可能です。そこへ、オープンソースで無償とはいえ、管理ツールを導入するメリットはどこにあるのでしょうか。
結論から言いますと、プロジェクト内のコミュニケーション促進の役割を課題管理ツールが担うことがポイントになります。
プロジェクトで扱う課題は、複数のステークホルダが関与している場合が多く、その場合には関係者間での情報の受け渡しが頻繁に発生します。
情報の受け渡し、すなわちコミュニケーションがうまくいかないことが原因となって、誤解やトラブルが発生したり、プロジェクトが破たんするというケースは非常に多いです。そこで、プロジェクトのコミュニケーションを助けるツールとして、RedmineやTracを利用した際のメリットを図3にまとめました。
ツール利用上の課題
課題管理ツールを利用するにあたって、注意すべきと考えられる点を3つあげて説明します。
1つ目が、Webインタフェースによる制限を考慮するということです。RedmineやTracはWebアプリケーションです。新規メンバーがインストールをしなくてもすぐに利用できる点はよいですが、Webブラウザ上で作業を行うことによる制約が多少出てくることになります。
また、複数の課題を連続してツールに登録する場合など、Excelでは一覧を見ながらどんどん追加できたり、必要な部分をコピーはりつけできるところですが、Webのツールでは単票画面で地道に登録作業を繰り返す必要が出てきたりします(ただし、登録済みの複数の課題に対して、一括で情報を変更する機能はRedmineにもTracプラグインでも存在します)。
2つ目が、運用は人が決めるということです。ツールを準備しただけではプロジェクトに影響を与えることはできません。ツールをどう使っていくかを人が考える必要があります。Redmine、Tracといったツールの場合は、「課題の粒度(大きさ)をどうそろえるか」「課題に対して誰がどのような順序で、どのようなアクションを行うか」「Wikiには誰が何を記述するか(記述してよいのか)」「利用方法を徹底させるための準備(資料の作成や教育など)」などを考えなければなりません。
このような観点でツールの運用方法を決めておかなければ、結局あるだけで使われないツールになってしまうおそれがあります。ちなみに、ツールの利用を徹底することそのものがプロジェクトの目的ではない、ということにも注意が必要です。あまりに細かく縛りすぎると、「管理のための管理」に費やす工数が膨大になって現場が回らなくなってしまいますので、バランス・さじ加減が重要になってきます。
なお、Trac Lightningに付属のSample Projectには、運用のルールが例として記載されていますので参考になるかもしれません。
3つ目が、ガントチャート機能は計画に使えそうにないということです。Redmineには、課題をガントチャート表示する機能がありますし、Tracのプラグイン、Trac Lightningにも同様のものがあります。ガントチャートはグラフィカルな表示で注目を集められるというメリットがありますが、プロジェクト管理に利用する場合には現状の機能では不十分な面があります。
プロジェクトのアウトプットを網羅したWBS(Work Breakdown Structure)に対して、リソースの配分とスケジュールを計画した結果をガントチャートとして表す、という使い方を想定した場合、おそらく目的とするチャート(計画を表すもの)にたどりつくまでの課題(チケット)の入力が煩わしすぎて使い物にならないでしょう。
この部分は、本質的に予測/計画がしにくい「課題(Issue)」と、あらかじめ計画を立てて実施すべき「仕事(Task)」との性質の違いにもよります。というところで、次回は、工程/進行管理に主眼をおいたツールを取り上げる予定です。
なお、本稿の執筆にあたって、以下を参考にしています。
「Redmine公式サイト」(http://www.redmine.org/)(アクセス: 2008/9)
「Trac公式サイト」(http://trac.edgewall.org/)(アクセス: 2008/9)
- [編集部注] 文中のリンクに一部誤りがあったため修正いたしました。(2010.09.27)