連載 :
  インタビュー

グッドラックスリー社長とプロデューサーが語るブロックチェーンを活用した新しいメディアとは

2018年6月29日(金)
ヨビ・キム(YOBI KIM)

2017年4月に金融庁が世界に先駆けて作成した「仮想通貨交換事業」の登録制度と、同年12月に日本仮想通貨事業者協会が発表したICO(Initial Coin Offering:新規の仮想通貨発行を目的とした資金調達・クラウドファンディングのこと)への対応に関する指針。この2つを加味すると、日本でICOを実施するには「仮想通貨交換事業に登録する」もしくは「登録済みの取引所と提携する」ことが必須となった。

そこで今回は、独自トークン「LUCKCOIN」が流通するメディアプラットフォーム「LuckyMe」を開発する株式会社グッドラックスリー 代表取締役社長の井上 和久氏と、同社LuckyMeプロデューサーの畑村 匡章氏にインタビューを行った。

まず、お2人の経歴を教えてください。

株式会社グッドラックスリー 代表取締役社長 井上 和久氏

  • 井上氏:ITシーンに入ったきっかけは、学生時代に孫 泰蔵氏の会社に入社したことです。そこでWebデザイナーの見習いをしたり新規事業の立ち上げをしたりしていました。高校のOBに孫 正義氏、孫 泰蔵氏、堀江 貴文氏がいたという環境もあり、学生時代から起業に興味があって「起業しようかな」と考えていましたが、当時は今ほど起業支援環境も整っていないことや実力が不足していると思い起業は断念して就職しました。

    大学を卒業してからはドリームインキュベータに入社し、インキュベーションと経営戦略コンサルティングに従事しました。この会社ならベンチャーの立ち上げ方を学べそうだし、また仲間と一緒にベンチャーの立ち上げを経験できるかも、という思いからですね。経営コンサルティングの実例として、DLE(代表作:秘密結社鷹の爪)のインキュベーションでは主担当でした。その後、ドリームインキュベータの子会社デライトの代表取締役社長として福岡での開発拠点の拡充に従事し、2013年にグッドラックスリーを創業しました。

株式会社グッドラックスリー LuckyMeプロデューサー 畑村 匡章氏

  • 畑村氏:私は堀江 貴文氏の世代真っ只中の年代でした。Windows 95と出会い、「インターネットの時代が来る!」という理由からインターネット関連の会社に就職しました。正直に言うと当時はゲーム会社に就職したかったのですが、全部不採用になったので行けませんでした(笑)。

    インターネット関連会社では、最初はルーターの営業などを担当していましたが、あまり面白みを感じられなかったことと「法人営業には向いていない」と思ったことから、ISP関連の部署に異動しました。その後「コンテンツ事業がしたい」という思いから、モバイルコンテンツの会社に転職しました。その後DeNAに転職してモバゲータウンの立ち上げに携わったことで、「本格的にどんな人がゲームを作っているのか知りたい!」と思い、スクウェア・エニックスに入社しました。井上と今の事業をしているきっかけは、元から親交のあった彼と去年の8月くらいに「ブロックチェーン事業をやりたい」という話をしたところ、ちょうど井上も同じ考えだったらしく、「じゃ、やろうか!」ということでスタートしました。

LuckyMeのサービスについて教えてください。

  • 畑村氏:説明が少し難しいのですが、LuckyMeというサービスは「ブロックチェーン技術によるエンタテインメントのための新しいエコシステム」です。ブロックチェーンの中で「コンテンツモデルで当たったものはあったかな」という疑問がある中で、まともに動いてて且つ時価総額もすごいSteemを見たときに「これを導入したらすごいことになるな」と衝撃を受けましたね。コンテンツモデルのようにタップされなければ報酬が発生しない広告モデルに限界を感じていたときにSteemがやっていることを目の当たりにして、「ユーザーにとっても鬱陶しいことにならないし、メディアは儲かるし、という仕組みがすごい!」と思いました。Steemは自社メディアで完結していますが、LuckyMeの場合はメディア側とユーザー側で分けるという形や仕組みを提供していくものになっています。

将来に向けた展望を教えてください。

  • 井上氏:先ほどの畑村の話の続きになりますが、具体的な問題定義をするとメディアのビジネスモデルが行き詰まる例として、最近ニュースにも取り上げられている「漫画村」があると思っています(漫画村は2018年4月17日頃に閉鎖)。お金を払わずに漫画を読めることはユーザーフレンドリーではあるかもしれませんが、中長期で考えると作家さんにはお金が入らない。つまり、経済が回っていない状況が出来つつあるのです。これは大きな問題で、経済を回していくためにトークンエコノミーは有効で、Steemの成功例を元に色々なメディアコンテンツを広めていくべきと考えています。

起業を考えている人たちにコメントをお願いします。

  • 井上氏:私は今の世の中、チャンスはめちゃくちゃあるという気がしています。ブロックチェーンだけに限らず色々な変化が起きているので、起業をするチャンスや社会を変えるチャンスがたくさんある。しかし、「何から始めれば良いのか」といった悩みがある人も多いと思います。それが簡単に思いつけば、とうにみんな起業していますからね。とにかく「自分の目の前にあることで1番関心があり貢献できること」からスタートすべきです。何よりも、まずはやるべき。「行余学文」つまり、「行いて余りあれば文(ふみ)学ぶ」です。考えれば思いつくなどとは思わないほうが良いです。やってみて、動いてみて気づくことの方が多いのだから、「いつ始めようか」というのではなく「今この瞬間にやろう」と思った方が良い。「やる」とか「やらない」とか言っている人は結局一生やらないので。チャレンジのリスクを避ける人が多いから逆にチャレンジする人の価値は高いですよ!

* * *

LuckyMeの開発資金は、ICOにより仮想通貨で調達を予定している。2017年12月にはヘルシンキで開催される世界最大級のスタートアップイベント「SLUSH」に福岡市の代表としてLuckyMeを発表。ピッチコンテストに登壇したほか、SLUSH内の福岡市ブースへも出展を果たした。

グッドラックスリーが理念として掲げる「世界中の人にGood Luckを!」を実現するために挑戦し続けるグッドラックスリーの活躍に、今後も目が離せない。

著者
ヨビ・キム(YOBI KIM)
OMOROIDE.inc CEO
2017年7月大阪を拠点にOMOROIDE.incを立ち上げ。アジア・ヨーロッパの各分野におけるビジネストレンドの調査やローカライジング事業を運営している。最近では、映像クリエイター養成サロン「MOOCRES」を立ち上げたほか、2018年4月には、アジア・欧州のビジネスフォーラム「Asia-Pacific Weeks Berlin 2018」にトリで登壇。モットーは「マジメだけどオモロイデ」。@Yobimar_gatinho

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