連載 :
  インタビュー

ベルリンのスタートアップに聞いてみた!BrickBlock―ブロックチェーン技術の開発に関わる面白さと彼らの見る未来とは?

2017年10月6日(金)
wasabi

wasabiがベルリンから開発者にインタビュー!

みなさん、こんにちは!ドイツはベルリンに在住のライターwasabiです。

「wasabiって誰?」と思った方。Think ITでの寄稿は今回が初めてですが、実はこっそりThink ITの大人気コンテンツ、高田ゲンキさんの「ライフハックでいこう!」第5話に登場させていただいています。ぜひそちらもお読みいただけると嬉しいです!

と、自分の話はさておき……最近私はブロックチェーンと金融に興味があり、ベルリンでイベントに登壇したり、ネットワークを広げるためにいろいろと動いたりしているのですが、そんな中「Brickblock」という会社に出会いました。この会社を簡単に説明すると、不動産などの実世界の資産をブロックチェーンのネットワークを使って取引するプラットフォームを開発しています。今回は同社CTOのPhilip(フィリップ)さんと開発者のMathew(マシュー)さんにお話を聞く機会がありましたので、ぜひみなさんにもそのお話をシェアしたいと思います。

ヨーロッパでブロックチェーン技術を開発する開発者がどんなことを思ってプロジェクトに関わっているのか、またブロックチェーンという新しく未知のものを開発する面白さとは何か? 私の主観で聞きたいことをいっぱい聞いてきました!

Brickblockとは?この会社が発足した経緯

wasabi:Philipさん、Mathewさん、初めまして。今日はお忙しい中時間を割いていただき、ありがとうございます。早速ですが、まず日本の読者にはBrickblockがどんな会社なのか、どうしてこの会社が発足したのか、フィリップさんがどうしてここで働いているかなどの背景を教えていただけますか?

Philip:その前に、なぜ君がBrickblockと関わることになったのか、知りたいな(笑)

wasabi:あ、そうでしたね(笑)。私は先月とある本を読んだことがきっかけでブロックチェーン技術や金融に興味を持つようになり、そのコネクションを作りたくてベルリンで日本のビットコインの使われ方をシェアするためにイベントでスピーチしたのです。そこにBrickblockの社員さんも来ていて、そこでBrickblockのことを聞いて「面白そうだな」と思ったのが始まりです。

Philip:なるほどね。Brickblock会社はMartin(マーティン)とJacob(ジェイコブ)の2人が始めた会社で、このときMartinはブロックチェーン技術の開発経験があってビットコイン業界ですでにプロダクトを作っていたんだ。例えばベルリンのビットコイン関連サービスで有名な「Bitwala」もその1つだね。Jacobは不動産のバックグラウンドを持っていて、その2人がビールか何かを飲んでいるときに「ブロックチェーンって一体なんだ?」って話になった。その2人の会話を聞いてわかったことは、「不動産業界がいかに時代遅れなのか」ということ。不動産を買うときに不動産仲介業者は2者間をただ繋ぐだけなのに高い手数料を取っているし、プロセスも面倒。「これらの問題をブロックチェーンで解決できるんじゃないか」って思いついたのがこの会社の始まりだよ。

仮想通貨という新経済と旧経済をつなぐ架け橋に

Philip:開発を始めていくうちに色々なことがわかってきた。ビットコインは2週間で50%上がることもあるけれど、同時に50%下がると相当辛い。だから現状で一番確かな方法は仮想通貨を法定紙幣に換えることなんだ。ドルをユーロに換金するようにね。ビットコインやイーサリウムで不動産などの実世界の資産を直接購入することはまだ難しい。例えば、Amazonではまだビットコインで買い物はできないでしょう?

Brickblockがやろうとしていることは、投資家に対して仮想通貨で直接不動産などの実世界の資産を購入できるようにすることなんだ。ユーザーがBrickblockのプラットフォーム上で仮想通貨を使ってトークンを購入すると、その価格に応じて不動産や上場投資信託(ETF)を始めとする資産のシェアを保有できるという仕組みだ。でも、これでユーザーが最終的に保有するのは仮想通貨ではなくて不動産などの実資産だから、次の日に例えばイーサリウムが80%下落しても落ち込む必要がない。

wasabi:なるほど。Brickblockは仮想通貨による実世界の資産への直接投資を可能にするプラットフォームであり、仮想通貨の高い変動性をなるべく低く抑えてユーザーのリスクを減らすことを実現しようとしているのですね。

Philip:簡単に言えば、そういうことだね。とても複雑な話だから本当はもっと説明が必要だけど(笑)。

2人の開発者が見た、ブロックチェーンの未来

wasabi:Philipさんは、ブロックチェーンというものにどのような未来を見ていますか? ブロックチェーンについては日々色々な新しい動きがあると思いますが、競合会社とどう差別化していくと考えていますか?

Philip:大きな質問だね。まず僕の考えではこの市場はとても大きいから、1社が1人勝ちするということは起きないと思う。だから、Brickblockのようなプラットフォームは今後もたくさん出てくるだろうね。でも、私たちはすごく良いチームを持っていると思っているよ。

wasabi:仮想通貨やブロックチェーンの市場を「90年代のインターネットバブルみたいだ」と言う人も多いですよね。それについてはどう思っていますか?

Philip:私も同じように思うよ。だからこそ今、私たちのチームはリアルに何かを産み出さなきゃと必死に頑張っているんだ。私たちのゴールはZeppelin solutionsを使った信用できるスマートコントラクトを実現させること。確かにブロックチェーンがインターネットバブルのようだという見方はあるけど、インターネットバブルが弾けて、また再生してFacebookやAmazonのような会社ができたということも見落とせない出来事だよね。

wasabi:なるほど。ちなみにBrickblockのプラットフォームは何の言語を使っているのですか?

Philip:プラットフォームはReactを使っていて、スマートコントラクトに使っているのはイーサリウム、言語はSolidity、フレームワークにはTruffleだね。

wasabi:ブロックチェーンという新しいものを用いたサービスを開発する難しさは何ですか?

Philip:今、Web空間ではほとんどのものがよく試されてきていて、ノウハウも共有されている。Webサイトを作る方法とかニュースレターキャンペーンを送る方法とかね。でも、ブロックチェーンに関しては全てが新しくて、毎回新たな問題が出てきては「どう解決したら良いのか?」と直面している。それがかなり難しいと同時にエキサイティングでもあるんだ。だって、今後どうなっていくかを自分たちの手で築き上げることができるし、何より開発者はみんな新しいことを学ぶのが好きだからね。僕たちもコミュニティに貢献できるようにオープンソースに貢献しているよ。マシューは最近GitHubにプルリクエストを送り始めたね。とにかくこのコミュニティで起きている事が本当にエキサイティングなんだ。

Mathew:さっきの話に戻らせてもらうと、僕の意見でも今後ブロックチェーンは確かにバブルで弾けるとは思うけれど、さっきPhilipが言ったようにこのまま技術が発展し続けると思うし、そう願っているよ。私たちは今イーサリウムを使っているけど、1〜2週間前にイーサリウムのファウンダーVitalikが、カンファレンスでチェーンに乗せるべきものと乗せるべきでないものについて話したんだ。

例えば、ブロックチェーン上で取引をする際、現状ではブロックを読み込んで表示させるまで(ハッシュ値のチェック)に時間がかかるけれど、信頼できる特定のブロックはチェックせず、注意が必要なブロックのみ信用できる第三者にハッシュ衝突を回避してもらってブロックチェーン上に記録する。それをサイドチェーンに戻すことで以前よりも処理が早くなるという提案があった。こんな風に日々新しい動きがあって面白いよ。

Brickblock CTOのPhilip(右)と開発者のMathew(左)

エコシステムの良さがイーサリウム採用の決め手

wasabi:Brickblockがイーサリウムを採用しているのには何か理由があるのですか? この前、Lisk(リスク)という仮想通貨のイベントに参加しました。Liskもイーサリウム同様にスマートコントラクトですが、「サイドチェーンがあるからイーサリウムよりも安全」と言う人がいたので個人的にどうしてイーサリウムなのかが気になって。

Mathew:理由は、今までのブロックチェーンにないスマートコントラクトを開発したいから、だね。

Philip:僕たちが知らない良いシステムはたくさんあると思うけれど、イーサリウムを選んだのはエコシステムが良かったからかな。彼らはユーザーの話を聞くし、向上させようと頑張っているし、ツールも日々良くなっている。認知度もあるしね。

wasabi:なるほど、開発者の目線からはそのような見方ができるのですね! 興味深いです。

新しいことを学び続ける貪欲さ

Philip:それで、フリーランスのライフスタイルブログをやっている君は、どういうきっかけでブロックチェーンに興味を持つようになったの? 逆インタビューだね(笑)!

wasabi:私が興味を持つようになって本当に1ヶ月未満なのです。それで、コネクションが欲しかったから1番手っ取り早いのはイベントに参加すること、しかも登壇することだと思ったので、思い切ってイベントに登壇して。何も知らないのに(笑)。だから、今回のインタビューも、何もわかってないのに話を聞きにきてしまって……なんかすみません。

Philip:ははは!そうなんだ、君のそのダイブインしていくスタイル、良いね。知らなくても全く問題ないよ、僕たちもわからないから(笑)。でも、この業界にいる人はみんなそんな状態だ。だからこそクールなんだ。

インタビュー中はPhilipもMathewも常ににこやかに話してくれた

Mathew:そう、僕たちも毎日わからないことに直面して、少しずつ勉強しているんだ。だから同じだよ。「このコミュニティを盛り上げていきたい」、「新しいことを学びたい」という気持ちで開発を楽しんでいるよ。

wasabi:私も学び続けます! Philipさん、Mathewさん、今日はお忙しい中インタビューに応じていただき、ありがとうございました。

* * *

今回、ブロックチェーン技術に実際に関わっているお2人に話を聞くことができて、ブロックチェーンが持つエキサイティングな可能性と、そのシーンを自分たちの手で作り上げていく面白さを体感できました。

ブロックチェーンは今世界中で注目を浴びており、仮想通貨の価値は日々上下します。でも、大切なことはこの仕組みが叶える未来にワクワクすること、未来が良い方向に向かっていくことを信じることなのかなと感じました。そして、それを叶えるために新しいことを学び続ける、新しいことを知りたいと思う好奇心があれば未来を良い方向に持っていけるのかもしれないと、純粋なワクワクに包まれた2人の話を聞いてそう感じました。

みなさんはどう感じましたか? ぜひコメントやSNSのシェアで感想を教えてください!

Brickblock Webサイトbrickblock.io/jp
ツイッターhttps://twitter.com/Brickblock_JP

ドイツベルリン在住のブロガー/ディレクター。自身のブログ「WSBI」ではディスラプティブテクノロジーを利用したこれからの新しい生き方を紹介し、支持を受ける。2016年には「TEDxYouth @Kobe」に登壇し、新卒で海外に渡ってフリーランサーとなった経験をシェア。ブロックチェーンについての理解を深めるために、ブロックチェーンの英語最新情報を日本語に要約するサイト「Blockchain Alert(http://blockchainalert.net/)」に編集として携わり、記事翻訳から編集までを務める。
ブログ「WSBI」:http://wsbi.net/

連載バックナンバー

仮想化/コンテナインタビュー

クラウドネイティブが当たり前の時代に向けて「ITエンジニアのスキルアップ」としてコンテナを学ぼう

2024/10/23
クラウドや仮想化など、日々進化するクラウドネイティブ技術をどのように学ぶのか。IT教育・研修サービスを提供する株式会社カサレアルの新津佐内氏にお話を伺った。
運用・管理インタビュー

GitLabとNTTデータグループのパートナーシップが切り開く未来: VSMとVSAを軸にした効率化の実現

2024/10/17
GitLabはNTTデータグループと販売パートナー契約を締結。GitaLabがVSMやVSAを中心に、どのような役割を担っていくのか。今後の展望と合わせて聞いた。
運用・管理インタビュー

NTTデータグループとGitLabの協業がもたらすDevOpsとバリューストリームマネジメントの進化

2024/10/17
NTTデータグループはGitLabと販売パートナー契約を締結。バリューストリームマネジメント(VSM)を活用した「Value Stream Assessmentコンサルティングサービス」の提供について、NTTデータグループの担当者に協業の背景、具体的なサービス内容、今後の展望について聞いた。

Think ITメルマガ会員登録受付中

Think ITでは、技術情報が詰まったメールマガジン「Think IT Weekly」の配信サービスを提供しています。メルマガ会員登録を済ませれば、メルマガだけでなく、さまざまな限定特典を入手できるようになります。

Think ITメルマガ会員のサービス内容を見る

他にもこの記事が読まれています