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「動画コンテンツ」には200億ドル規模のチャンスが眠る – IoTが市場にもたらす「チャンスとリスク」とは

2016年8月2日(火)
ReadWrite Japan

IoTはまだまだ揺籃期(ようらんき)にあるが、それが提供する体験への我々の期待はすでに高まっている。IoTはこれまでにないパーソナライズ機能やコンテンツへの容易なアクセス、ユニークかつ没入的な体験の提供を約束しているのだ。

EY社のレポート「モノのインターネット: 人とマシンの対話が開く新しい可能性」にあるように、IoTは、我々のコンテンツの探し方だけでなく、コンテンツがニーズを持つ誰かを探す方法をも変える。センサーの精度が高まるにつれ、デバイスは我々のことをこれまでとは比にならないレベルで理解するようになる。

参考記事:GoogleがIoTに注力する理由 – IoTはビジネスの在り方を変える2

現在、ユーザが求めているコンテンツを情報の海の中から探し当てることは、ユーザ自身が頑張って行わなければならない。しかし、将来のIoTセンサーはコンシューマ個人個人を認識し、それまでの行動や好みからおすすめのコンテンツを提案できるようになる。たとえばスマートテレビの場合、誰がリビングルームに来たかに合わせてプレイリストを編集、提案することができるようになる。

そのポテンシャルは個人の特定だけにとどまらない。スマートウォッチやその他のセンサー付きデバイスがTVと通信することで、その場の雰囲気にあったコンテンツを提案するということも可能になる。たとえばユーザが筋トレの途中であり心拍数が上昇しているとすれば、アクション映画が提案されるといった具合だ。また、照明が抑えられたベッドルームでユーザの心拍が低い状態であれば、状況を睡眠前と判断し提案するコンテンツも穏やかなものになるだろう。

また、すでに遍在するセンサーがもたらすデータは、よりターゲットを絞った広告を打つことも可能にする。ユーザにとって押し付けがましくなく、マーケッターにとってもより効率的な活動ができるようになる。パーソナライゼーションはユーザにもマーケターにも利のあることだ。消費がより個人に合わせたものになるにつれ、ブランドも顧客の興味を基準としたパーソナルな情報を集めるようになる。

マーケターの推測ではなくコンシューマ本人の興味からくる注目は、今後より価値のあるものとなっていき、勘違いでないれっきとしたデータから導き出される魅力的なコンテンツ制作はさらに拍車がかかることだろう。

コンテンツ業界には200億ドル規模のチャンスが眠る

IoTはより多くのプラットフォームにメディアコンテンツ消費の道を開き、また既存のプラットフォームを利用しているコンシューマの体験を変える。そのなかでも「車」というプラットフォームにおけるコンテンツ消費は最大規模になるかもしれない。というのも、自動運転車が現実になれば、これまで運転に費やされていた時間が丸ごとコンテンツを消費する時間となるためだ。

分析を手がける企業のEY社は、将来、IoTが動画業界に200億ドル規模のビジネスチャンスを提供するだろうと予測している。

IoT拡張の可能性を秘めたプラットフォームは自動車だけではない。たとえば、小さな画面とセンサーの付いた「洗濯機」が洗い物を詰め込んでいる人を認識し、それに合わせてストレートニュースやエンタメニュース、あるいは洗い物のコツをまとめた動画等を流す状況を想像してほしい。多くのガソリンスタンドでは、すでに給油の最中に短い動画を流すようになっているが、この給油ポンプがあなたのスマートフォンからあなたのことを判断できるようになったらどうだろう? 支払いがより簡単になるだけでなく、流される動画もよりパーソナライズされたものにできるのではないだろうか。認証はよりシームレスになり、わざわざログインする手間なしにサービスを使えるようにすることも可能だ。

そういったコンテンツから得られる体験もIoTによってよりリッチなものになり得る。企業がIoTで何ができるようになるのかと、さまざまなことを試すようになることも想像に容易い。たとえばアクション映画の俳優にセンサーを取り付けて、裏通りを駆け下りるキャラクターの心拍を感じられるようになるといったこともあり得るかもしれない。つまり、動画視聴から得られる体験をこれまでになくさまざまな意味で充実させていくことが可能になるのだ。

そして、コネクテッドデバイスのセンサーが生み出すデータは、企業がユーザが求める体験を提供するために使われることになる。つまり、企業がすでに収集したデータ自体はもちろんだが、IoTの利点を最大限に享受するためにも今後デバイスを通じて収集されるデータの数々をユーザは諦めなければならないだろう。

ただ、企業がIoTの生み出す可能性を活用する上で2点の重要な懸念がある。そのデータの活用は「ユーザがプライバシーを侵害されていると感じないように」行わなければならないという点、そして彼らのデータおよびそれらを得る経路が安全でなければならないという点だ。

スマートフォンなどのデバイスでは、すでにユーザの健康状態や居場所を常にモニターしている。ウェブサイト上ではユーザがネット上で何をしているか、何を購入したかを追跡しており、さらにSNSを通じてされるさまざまなやり取りも利用できる情報として存在している。

このように、企業がIoTを通じてトラッキングやモニタリングをさらに強化していくことは間違いないわけだが、そのデータがどのように集められ、どのように使われるかが問題となってくる。基本的には集められたデータによって取られるアクションが、プライバシー侵害と感じるかどうかの度合いを決めるということになる。企業はユーザが自分の求める体験の実現のためにデータをシェアする価値があると認める範囲内で、どこまで必要なデータを収集するのかというバランスを見つけ出す必要がある。

セキュリティの懸念は付き物だ

繰り返しになるが、IoTが実現するコネクティビティはそれだけサイバー犯罪の窓口も増やすことになる。この窓口となり得る場所は、関係の信頼とIoTの成長を維持するためにも、安全なものでなければならない。

現在のセキュリティは脆弱で、自分のスマートフォンが攻撃を受ければ不便を被ることになるし、もしこれがホームセキュリティや火災感知器、車のOSのハッキングともなれば、そのリスクは相当なものになる。接続がセキュアなもので在り続けられるかどうかは、メディア企業がデバイスメーカーやISPとどのように安全性を確保していくかの企業努力にかかっている。

結局のところ、IoTは破壊的なリスクを抱えつつも避けられないものなのだ。メディア企業が成功するためには、こうしたリスクに向き合いつつ、ユーザのニーズに応えあらゆる面でリッチな体験を提供できるようイノベーションを起こすしかない。

企業がIoTの恩恵を最大限あやかるためにすべきことは、ユーザから個人的なデータをシェアすることを承諾してもらうことだ。ユーザがいつでもどこでも自分の望むリッチな体験ができ、それがどれほど価値あることなのかを理解するとき、その転機は訪れることだろう。

※著者はMedia & Entertainment Advisory Services、Ernst & Young、LLPの取締役である。ここで述べられている意見は著者自身の個人的見解であることをご了承いただきたい。

ReadWrite[日本版] 編集部
[原文4]

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