GitHub Universe開催。βユーザーたちが語るActions導入の容易さ
ソースコードリポジトリーを手がけるGitHubが開催したGitHub Universe。その2日目では、前日発表したGitHub Actionsをさらに掘り下げるキーノートが行われ、GitHubがこの機能にかける強い思いが垣間見えたものとなった。
2日目に登壇したのはテクノロジーのトップのJason Warner氏ではなく、ビジネス面を取り仕切るJulio Avalos氏だ。Avalos氏とは過去に2度ほど直接会って話をしたことがあるが、常に真摯に質問に答えてくれる姿が印象的だった。特に「オープンソースのようにソースコードを公開することが当たり前で、非公開にして開発を行うという組織から利用料を取るのはペナルティのようなものだと思ってほしい」と言い切ったところは、今でも記憶に残っている。
参考記事:GitHubのチーフビジネスオフィサーがGitHub自身の変革について語る
そんなAvalos氏が前半に語ったのは、「ソフトウェア開発は相変わらず難しい」ということだった。COBOLやFortranの時代からソフトウェアを書く方法は大きく様変わりしたが、デベロッパーは相変わらずコードを書くこと以外に時間を使っているという。
昨今、特にソフトウェアを書くことが難しくなったのは、セキュリティへの意識やフレームワーク、ライブラリーなどの依存関係を熟知していないと、実装した機能以外の部分で本番運用に耐えられないからで、この辺りの事情は現代らしいものと言える。
そこからAvalos氏は、現代のソフトウェア開発の実際についてGitHubのデータサイエンティストチームが用意したOctoverseというGitHub上のデータを分析したものを紹介した。
このサイトではPeople、Projects、Platformの3つの分野において、GitHubがどのように使われているのか? を分析したものだ。
https://octoverse.github.com/people#location
例えば上記のリンクを見てみれば、GitHubで活動しているデベロッパーがどの国や地域に存在しているのかを知ることができる。日本が2017年から2018年にかけて10位から8位に順位をあげているのは、喜ぶべき兆候だろう。
他にも開発言語という部分では、JavaScript、Java、Pythonなどが全体としては安定の比率を占めているが、新興の言語としてKotlin、GitHub Actionsの構成記述言語として採用されたHCL(HashiCorp Configuration Language)、そしてTypeScriptなどの利用が大きく拡大していることがわかる。
https://octoverse.github.com/projects#languages
Windowsサーバーベースのエンタープライズにとっては、GitHub上でPowerShellの利用が広がっているというのも興味深いのではないだろうか。またこんなこともわかるのか? という意味では「ハート」の絵文字を最もよく使うのがRubyのコミュニティであるという結果は、日本人なら思わず「わかる」といったところではないだろうか。
またオープンソースソフトウェアへの貢献についても、ユーザーの所属から分析した結果として、昨今Microsoftが良く使う「Microsoft Loves OSS」の論拠ともなる結果が紹介された。
https://octoverse.github.com/projects#repositories
ただし最も成長が大きかったプロジェクトがAzure-Docsだったことを考えると、自社のパブリッククラウドサービスのテクニカルな情報をGitHub上で展開することで、組織としてのプレゼンスとユーザーへの利便性を同時に稼いでいるとも言えるだろう。
そしてここまでは前座であると言わんばかりに、1日目にも登壇してGitHub Actionsを紹介したKyle Daigle氏が登壇した。Gaigle氏はActionsを使った例として、クローズドベータのユーザーであるPulumi、Twilio、Netlifyなどの使用例を解説した。そして解説に続いては、Actionsを使ったベータユーザーを実際にステージに招いて、それぞれの言葉でActionsの使い方を語るターンとなった。
まずはペットフードのオンラインサイトChewy.comのエンジニアが登壇し、公開ベータが昨日から始まったばかりのActionsを、実際に使っている画面を使って解説した。ここではJiraやBambooなどとの連携を実装したという。
次に登壇したのはTerraformやVaultを開発するHashiCorpの創業者、Mitchell Hashimoto氏だ。実際にデモとして、Webページが見つからなかった際のエラーページを修正する部分にActionsを仕込んで自動化するという部分のCI/CDを、Terraformを使って実装してみせた。
次にLaunchDarklyというベンチャーのCEOであるEdith Harbaugh氏が登壇した。LaunchDarklyは、アプリケーションの機能にフラグをつけて、それを外部からコントロールすることでコードをいじることなく機能のオン/オフを行えるようにするツールを開発している。ここでも、デモサイトを使ってActionsを動かしてみせた。
そして最後に登壇したのは、MicrosoftのJessie Frazelle氏だ。Frazelle氏はかつてDockerやGoogleなどでも働いていた経験のあるエンジニアで、Dockerのコアメンテナーでもある。クラウドネイティブなソフトウェアに関して多くの経験を持っており、様々なカンファレンスで人気のエバンジェリストと言えるだろう。
そんなFrazelle氏は、Actionsを使って自身のプライベートなリポジトリからアプリケーションをパブリッククラウド3社それぞれのプラットフォームで実装するという流れをGitHub Actionsで記述するというデモを見せた。
これはここまでの先行ベータユーザーの作ったシンプルで無理をしない部分から試してみるというようなものではなく、「とりあえずやれそうな部分は全部やってみた」とでも言えるような複雑なワークフローとなり、会場からは思わず笑いが漏れる場面となった。
今回、発表された全く新しいActionsを、クラウドネイティブなソフトウェアのコアなメンテナーやGitHubのエコシステムパートナーに使ってもらって評価をもらうという難題をきっちりとやりきったというのが、この部分のゴールだろう。その後のJason Warner氏とのインタビューでは、「クローズドベータユーザーにはいつごろソフトウェアを公開したのか?」という質問をしてみたが、「約2週間前から。Jessieに対しては1週間前かな」という回答であったことを考えると、相当リスクの高いチャレンジを難なくこなしたことは記憶に残しておくべきだろう。
2日目のキーノートは、前日の概要紹介からさらに一歩踏み込んで、GitHub Actionsが大きな可能性を秘めたツールであることを再認識させるための大きな舞台だったように感じた。
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