連載 [第3回] :
  GitHub Universe 2018レポート

GitHub Universeで製品担当VPが語ったGitHub Actionsのインパクト

2018年11月30日(金)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
GitHub Universeで大いに注目を集めていたActionsについて、製品担当のVPに語ってもらった。

ソースコードリポジトリを手がけるGitHubが開催したGitHub Universeで、製品担当のVPであるJason Warner氏にインタビューを行った。Jason Warner氏とは、2017年のGitHub Universeそして2018年6月に都内で開催されたGitHub Satelliteでもインタビューを行っているが、今回は特に注目の新技術であるActionsに絞って話を聞いた。

インタビューに応えてくれたJason Warner氏

インタビューに応えてくれたJason Warner氏

2017年のGitHub Universeでのインタビュー:GitHub.comが産み出すデータの活用法とは? 責任者たちが未来のソフトウェア開発を語る

2018年6月のインタビュー:GitHub SatelliteでSVPに聞いたシステムインテグレーターへのアドバイスとは

今年のGitHub Universeは大成功と言えると思いますが、これに関してのご自身の評価は?

そうですね。GitHubの社員にも外部の方にも、とても喜んでもらえているようで嬉しいです。社内からは「これまでのベスト」と言われています。また外部のアナリストにも好評ですが、いつも辛口の批評が多いHacker Newsの記者からも良いフィードバックがもらえていて、これをどう捉えていいのかちょっと迷っています(笑)。参加してくれたMicrosoftの社員にも、とても好評でした。

今回の最も大きな発表はGitHub Actionsだったと思いますが、これをどう位置付けるべきなのか、何度も質問を受けていると思いますが、もう一度教えてください。

昨日、アナリストからインタビューを受けた時にも「これはどのカテゴリーに入るツールなのか?」という質問を受けました。回答としては「どこにでも入るので、好きなカテゴリーを選んでください」ということを言いました。実際そうとしか言いようがないのです。「CI/CDツールを置き換えるものですか? それとも共存するものですか?」という質問の回答としては、どのような立場からの質問なのかによって、イエスでもありノーでもありえるのです。つまり、それぐらい様々な使い方ができるツールであるということを強調したいですね。

実際に2日目のキーノートではTwilioやNetlifyなどでの使い方を紹介していましたね。今回から公開のベータテストが開始されたということですが、あそこで紹介された企業にActionsを提供したのはかなり早い時期だったのでないですか? そうでなければあのような使い方を試行するのは難しいと思いますが。

実際には、2週間位前に提供して使いはじめてもらったことになります。MicrosoftのJessieに渡したのは、確か1週間前だったかな? そのくらいです。

Actionsは元々社内では「Scripted GitHub」と呼ばれていたもので、そっちのほうが理解が早いかもしれません。

参考:GitHub Universe開催。βユーザーたちが語るActions導入の容易さ

確かにGitHubから様々な操作を自動化するという意味でScriptedと呼ぶとわかりやすいですね。それにしても2週間であれくらいの使い方ができるということは、ツール自体が簡単で習得しやすいということでしょうか。

Jessieの作ったActionsはちょっと複雑でしたよね。1週間であれぐらいの使い方をしてくれるのは嬉しいです。社内でも、パブリッククラウドへのデプロイに使っている例は多くあります。

先ほどの「CI/CDツールを置き換えるか?」という質問への補足になりますが、単純にツールを置き換えるというものではなく、「CI/CD以降の仕事をActionsが助ける」という理解が適切だと思いますね。ある仕事はBashのスクリプトで実行している、ある部分にはスプレッドシートを使って情報を整理している、承認のフローはメールでやっている、こういう部分をActionsで自動化することで、様々なカテゴリーのツールがやっていたことを置き換えられるのです。

Actionsの内部ではDockerのコンテナが実行されますが、その設定の記述にはHashiCorpのHCLが使われています。これの理由は?

まず、すでにHCLが存在すること、そしてそれがオープンソースソフトウェアであること。この2点が大きな要因ですね。実際にはActionsのHCLはサブセットとでも言うべきもので、今回のActionsで追加した部分について、どうやってオープンソースソフトウェアとして公開するのか? これについて検討しています。

前回、日本でインタビューを行った際に、ソースコードだけではなく機械学習のモデルやデータを管理できるようにならないか? という質問をしましたが、それに関しては?

それに関しては、まだお話しできるレベルには達していません。ただGitHubの社内にはデザイナーもデータサイエンティストもいますので、そういう人たちがActionsをどう使うのか? この点についてはフィードバックをもらっています。

私はActionsを、そしてGitHub自体をもっと色々な職種の人に使ってもらいたいと思っているのですが、そのためには良いきっかけになると思います。たとえばInVisionやFigmaを使ってサイトのデザインを行っているデザイナーは、手作業で行っているサイトへのコンテンツのアップロードを自動化できるでしょう。NetlifyのようなCMSに関しても同じですよね。

つまり「ソースコードを書かない職種には、GitHubは関係ない」という認識ではなく、共有やコラボレーションといった作業をGitHubとActionsを使って自動化する、可視化するというのは良いスタートポイントだと思っています。すでに社内のデータサイエンティストには公開して使ってもらっていますので、どういう使い方が可能か? これに関する情報を公開していく予定です。まだ始まったばかりですが、ぜひ皆さんにサインアップしてもらいたいと思っています。

注:サインアップは以下のサイトから行うことができる。

GitHub Actionsの公式ページ:https://github.com/features/actions

何度も訊かれたであろう「ActionsはCI/CDを置き換えるのか」という質問には「イエスでもありノーでもある」という慎重な回答をしてくれたJason Warner氏であった。一方で、後半のデベロッパー以外の職種の人にもGitHubとActionsを使って欲しいという部分には、思わず力が入っていたのが興味深いインタビューとなった。

筆者はGitHub Universeの取材と同時期に、Linkerdの開発元であるBuoyantも訪問したのだが、ここでもActionsは話題になっていた。これほどまでに、シリコンバレー界隈で良い評価がされているActionsに、今後も期待したい。

参考:サービスメッシュを実現するLinkerdの将来を、開発元のBuoyantが語る

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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