Swiftでクロージャを理解する

2018年12月21日(金)
大津 真
連載8回目となる今回は、モダンな言語に欠かせないクロージャについて解説します。

クロージャ式の省略形

Swiftにおいてクロージャ式は多用されるので、さまざまな省略形が用意されています。基本的な省略形を見ていきましょう。

引数の型と戻り値の型を省略する

クロージャ式の引数と戻り値の型には推論が働くので、型が推測できれば、引数と戻り値の型(上記の例ではInt)は省略可能です。前述の例は、宣言時に型アノテーションすることで、引数の型と戻り値の型の両方を省略できます。

リスト7:引数の型と戻り値の型を省略

1let sum: (Int, Int) -> Int = {(num1, num2) in
2    return num1 + num2
3}

上記の例の場合、型アノテーションなしでも、戻り値の型から引数の型が推測できるので、引数の型は省略できます。

リスト8:戻り値の型があれば引数の型を省略できる

1let sum = {(num1, num2) -> Int in
2    return num1 + num2
3}

同様に引数の型を指定すれば、戻り値の型は省略できます。

リスト9:引数の型があれば戻り値の型を省略できる

1let sum = {(num1:Int, num2:Int) in
2    return num1 + num2
3}

処理が一つの場合returnは省略可能

クロージャ式内のステートメントがreturn文の1行のみの場合には「return」は省略可能です

リスト10:処理が1行だけなら「return」を省略できる

1let sum = {(num1, num2)->Int in
2    num1 + num2
3}

以下のように、全体を1行で記述しても構いません。

リスト11:1行で記述

1let sum:(Int, Int) -> Int = {(num1, num2) in num1 + num2}

引数名を省略する

クロージャ内部では引数は順に01……という特別な変数名でアクセス可能です。この場合、引数名やinも省略できます。

リスト12:引数名を省略

1let sum:(Int, Int) -> Int = {$0 + $1}

引数や戻り値がない場合の表記に注意

引数がない場合には、引数の型部分に「()」のみを記述します。次の例は「大吉」「吉」「凶」のいずれかの文字列をランダムに戻すクロージャの例です。

リスト13:引数がない場合の例

1let uranai = {() -> String? in ["大吉", "吉", "凶"].randomElement()}
2print(uranai()!) // -> 「大吉」「吉」「凶」のどれか

戻り値がない場合には、戻り値の型部分に「()」を記述します。次の例は単に「こんにちは」と表示するクロージャです。

リスト14:戻り値がない場合の例

1let sayHello = {() -> () in print("こんにちは")}
2sayHello() // -> 「こんにちは」

カウンタをクロージャ式で戻す

今回の連載の最初に、カウンタのクロージャを戻すcounterFactory()関数について説明しました。

リスト15:再掲counterFactory()関数

1func counterFactory(initValue:Int) -> () -> Int {
2    var num = initValue
3    func counter() -> Int {
4        num += 1
5        return num
6    }
7    return counter
8}

これまでの説明を踏まえて、counterFactory()関数の内部の関数をクロージャ式で記述すると次のようになります。

リスト16:クロージャ式を用いて記述する

1func counterFactory(initValue:Int) -> () -> Int {
2    var num = initValue
3    return { num += 1; return num }
4}

func文と比較して、よりシンプルに記述できることがおわかりいただけるでしょう。

クロージャ式の使い所

Swiftには、関数を引数にとる関数やメソッドが少なくありません。その場合、クロージャ式を引数にするとシンプルに記述できます。

map()メソッドを使用する

例えば配列(Array)には、各要素を順に処理して、結果を新たな配列として戻すmap()メソッドがあります。次のような形式で実行します。

let 新しい配列 = 元の配列.map(要素を処理する関数)

ここでは平成の年が格納されている配列heisei_yearsから、西暦の年の配列seireki_yearsを生成する例を示しましょう。map()メソッドの引数に、func文で定義した関数を渡すには次のようにします。

リスト17:map()メソッドの使用例

1let heisei_years = [1, 27, 4, 25, 9, 30]
2func toSeireki(year:Int) -> Int { // (1)
3    return year + 1988
4}
5let seireki_years = heisei_years.map(toSeireki) // (2)
6print(seireki_years)

リスト18:実行結果

1[1989, 2015, 1992, 2013, 1997, 2018]

この例では(1)でtoSeireki()という名前の関数を定義していますが、これは(2)のmap()メソッドの引数として使用するので、名前は必要ありません。また引数としてしか使用しない関数を定義するのは無駄ですし、名前が衝突する可能性もあります。そこで、クロージャ式の出番となります。

まず、前述の例の、map()メソッドの引数にfuncで定義した関数の代わりに、クロージャ式を省略なしで使用すると次のようになります。

リスト19:クロージャ式を用いる例

1let heisei_years = [1, 27, 4, 25, 9, 30]
2let seireki_years = heisei_years.map({(year:Int)->Int // (1)
3    in return year + 1988})
4print(seireki_years)

型を省略する

上記のクロージャ式(1)を、さらにシンプルにしていきましょう。引数と戻り値の型はmap()メソッドで定義されているので省略可能です。型を省略すると次のように記述できます。

リスト20:型の省略

1let seireki_years = heisei_years.map({year
2    in return year + 1988})

return文を省略する

続いて、return文を省略すると次のように記述できます。

リスト21:return文も省略

1let seireki_years = heisei_years.map({year in year + 1988})

引数名を省略する

さらに引数名を省略し、引数を$0でアクセスしてみましょう。

リスト22:引数名も省略

1let seireki_years = heisei_years.map({$0 + 1988})

後置記法にする

クロージャ式を関数の最後の引数として渡す場合には、関数呼び出しの()の後にクロージャ式を置くことができます。これを「後置記法」(Trailing Closures)と呼びます。

リスト23:後置記法

1let seireki_years = heisei_years.map(){$0 + 1988}

後置記法では、関数やメソッドにクロージャの他に引数のない場合には関数名の後の()も省略できます。

リスト24:関数名の後のカッコも省略

1let seireki_years = heisei_years.map{$0 + 1988}

省略前に比べると、すっきりシンプルになりました。

filter()メソッドを使用する

配列には、map()メソッドの仲間として、条件に一致する要素のみを抽出するfilter()メソッドが用意されています。filter()は。各要素に引数で指定した関数を実行し、その結果が「true」の要素のみを取り出して新たな配列として戻すメソッドです。例えば、前述の配列seireki_yearsから、2000年以降の年を取り出して配列over2000yearsを生成するには次のようにします。

リスト25:filter()メソッドの例

1let over2000year = seireki_years.filter{$0 >= 2000}
2print(over2000year)

リスト26:実行結果

1[2015, 2013, 2018]

東京都生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、外資系コンピューターメーカーにSEとして8年間勤務。現在はフリーランスのテクニカルライター、プログラマー。

<主な著書>
きちんとわかる! JavaScript とことん入門(技術評論社)
基礎Python(インプレス)
他多数

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