クロージャ式の省略形
Swiftにおいてクロージャ式は多用されるので、さまざまな省略形が用意されています。基本的な省略形を見ていきましょう。
引数の型と戻り値の型を省略する
クロージャ式の引数と戻り値の型には推論が働くので、型が推測できれば、引数と戻り値の型(上記の例ではInt)は省略可能です。前述の例は、宣言時に型アノテーションすることで、引数の型と戻り値の型の両方を省略できます。
リスト7:引数の型と戻り値の型を省略
1 | let sum: (Int, Int) -> Int = {(num1, num2) in |
上記の例の場合、型アノテーションなしでも、戻り値の型から引数の型が推測できるので、引数の型は省略できます。
リスト8:戻り値の型があれば引数の型を省略できる
1 | let sum = {(num1, num2) -> Int in |
同様に引数の型を指定すれば、戻り値の型は省略できます。
リスト9:引数の型があれば戻り値の型を省略できる
1 | let sum = {(num1:Int, num2:Int) in |
処理が一つの場合returnは省略可能
クロージャ式内のステートメントがreturn文の1行のみの場合には「return」は省略可能です
リスト10:処理が1行だけなら「return」を省略できる
1 | let sum = {(num1, num2)->Int in |
以下のように、全体を1行で記述しても構いません。
リスト11:1行で記述
1 | let sum:(Int, Int) -> Int = {(num1, num2) in num1 + num2} |
引数名を省略する
クロージャ内部では引数は順に0、1……という特別な変数名でアクセス可能です。この場合、引数名やinも省略できます。
リスト12:引数名を省略
1 | let sum:(Int, Int) -> Int = {$0 + $1} |
引数や戻り値がない場合の表記に注意
引数がない場合には、引数の型部分に「()」のみを記述します。次の例は「大吉」「吉」「凶」のいずれかの文字列をランダムに戻すクロージャの例です。
リスト13:引数がない場合の例
1 | let uranai = {() -> String? in ["大吉", "吉", "凶"].randomElement()} |
2 | print(uranai()!) // -> 「大吉」「吉」「凶」のどれか |
戻り値がない場合には、戻り値の型部分に「()」を記述します。次の例は単に「こんにちは」と表示するクロージャです。
リスト14:戻り値がない場合の例
1 | let sayHello = {() -> () in print("こんにちは")} |
2 | sayHello() // -> 「こんにちは」 |
カウンタをクロージャ式で戻す
今回の連載の最初に、カウンタのクロージャを戻すcounterFactory()関数について説明しました。
リスト15:再掲counterFactory()関数
1 | func counterFactory(initValue:Int) -> () -> Int { |
3 | func counter() -> Int { |
これまでの説明を踏まえて、counterFactory()関数の内部の関数をクロージャ式で記述すると次のようになります。
リスト16:クロージャ式を用いて記述する
1 | func counterFactory(initValue:Int) -> () -> Int { |
3 | return { num += 1; return num } |
func文と比較して、よりシンプルに記述できることがおわかりいただけるでしょう。
クロージャ式の使い所
Swiftには、関数を引数にとる関数やメソッドが少なくありません。その場合、クロージャ式を引数にするとシンプルに記述できます。
map()メソッドを使用する
例えば配列(Array)には、各要素を順に処理して、結果を新たな配列として戻すmap()メソッドがあります。次のような形式で実行します。
let 新しい配列 = 元の配列.map(要素を処理する関数)
ここでは平成の年が格納されている配列heisei_yearsから、西暦の年の配列seireki_yearsを生成する例を示しましょう。map()メソッドの引数に、func文で定義した関数を渡すには次のようにします。
リスト17:map()メソッドの使用例
1 | let heisei_years = [1, 27, 4, 25, 9, 30] |
2 | func toSeireki(year:Int) -> Int { // (1) |
5 | let seireki_years = heisei_years.map(toSeireki) // (2) |
リスト18:実行結果
1 | [1989, 2015, 1992, 2013, 1997, 2018] |
この例では(1)でtoSeireki()という名前の関数を定義していますが、これは(2)のmap()メソッドの引数として使用するので、名前は必要ありません。また引数としてしか使用しない関数を定義するのは無駄ですし、名前が衝突する可能性もあります。そこで、クロージャ式の出番となります。
まず、前述の例の、map()メソッドの引数にfuncで定義した関数の代わりに、クロージャ式を省略なしで使用すると次のようになります。
リスト19:クロージャ式を用いる例
1 | let heisei_years = [1, 27, 4, 25, 9, 30] |
2 | let seireki_years = heisei_years.map({(year:Int)->Int // (1) |
3 | in return year + 1988}) |
型を省略する
上記のクロージャ式(1)を、さらにシンプルにしていきましょう。引数と戻り値の型はmap()メソッドで定義されているので省略可能です。型を省略すると次のように記述できます。
リスト20:型の省略
1 | let seireki_years = heisei_years.map({year |
2 | in return year + 1988}) |
return文を省略する
続いて、return文を省略すると次のように記述できます。
リスト21:return文も省略
1 | let seireki_years = heisei_years.map({year in year + 1988}) |
引数名を省略する
さらに引数名を省略し、引数を$0でアクセスしてみましょう。
リスト22:引数名も省略
1 | let seireki_years = heisei_years.map({$0 + 1988}) |
後置記法にする
クロージャ式を関数の最後の引数として渡す場合には、関数呼び出しの()の後にクロージャ式を置くことができます。これを「後置記法」(Trailing Closures)と呼びます。
リスト23:後置記法
1 | let seireki_years = heisei_years.map(){$0 + 1988} |
後置記法では、関数やメソッドにクロージャの他に引数のない場合には関数名の後の()も省略できます。
リスト24:関数名の後のカッコも省略
1 | let seireki_years = heisei_years.map{$0 + 1988} |
省略前に比べると、すっきりシンプルになりました。
filter()メソッドを使用する
配列には、map()メソッドの仲間として、条件に一致する要素のみを抽出するfilter()メソッドが用意されています。filter()は。各要素に引数で指定した関数を実行し、その結果が「true」の要素のみを取り出して新たな配列として戻すメソッドです。例えば、前述の配列seireki_yearsから、2000年以降の年を取り出して配列over2000yearsを生成するには次のようにします。
リスト25:filter()メソッドの例
1 | let over2000year = seireki_years.filter{$0 >= 2000} |