Red HatがクラウドベースのIDE、CodeReady Workspacesを発表

2019年3月14日(木)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
ラップトップPCとIDEによる開発の問題を解消するクラウドベースのIDE、CodeReady WorkspacesがRed Hatから発表された。

レッドハット株式会社は、Eclipse CheをベースにしたWebブラウザで稼働するIDE「CodeReady Workspaces」のメディア向け発表会を開催した。発表を行ったのは、Red Hat本社のOpenShift&開発ツール 技術担当バイスプレジデント、カール・トリエフ(Carl Trieloff)氏だ。

CodeReady Workspacesは、Red Hatが2017年に買収したCodenvy社が手がけていたCodenvyをベースにしたIDE(Integrated Development Environment、統合開発環境)だ。しかし今回の発表は、単にブラウザベース、クラウドベースのIDEが出たというよりももっと大きなものだ。それはCodeReady Workspacesがデベロッパーの抱える問題を解決することを目指したものだということだ。

個々のデベロッパーがラップトップPCに個人用の開発環境をセットアップして開発~テスト、そしてそれをCI/CDの段階でステージングサーバーに移行させて結合テスト、問題がなければ本番環境に移行するという一連の流れは、典型的な開発のプロセスだ。その中で、どうしても環境の差異から「自分のPCでは動くのに、本番で動かない」という状況が起きうるが、CodeReady Workspacesはこの問題の解決をゴールとしている。合わせて、個人による開発よりもチームによる開発をよりスムーズに行えることも目指している。

説明とデモを行うトリエフ氏

説明とデモを行うトリエフ氏

トリエフ氏は、「これまでの『IDEとラップトップPC』という開発スタイルは、チームでの作業に向いていない」ということを最初に語り、それを全てコンテナベースのクラウド側で行うことがCodeReady Workspacesのコンセプトであると説明した。

Red Hatは以前にも、OpenShift.ioというEclipse CheベースのIDEをリリースしたことがあるが、これはSaaSでしか動かないものであった。これに対してCodeReady Workspacesは、SaaSでもオンプレミスでも実行可能であるという部分が大きく異なっている。開発環境自体がコンテナとしてOpenShiftの中に存在するということからも、ローカルの開発環境を持たないことで得られる効果は大きい。ちなみにCodenvy社はEclipse Cheの開発を主に行っていた企業でもあり、当然ブラウザベースのIDEに関する経験と知見を持っているとみなすのは妥当だろう。

CodeReady Workspaces on OpenShift

CodeReady Workspaces on OpenShift

ここで注意すべきなのは、CodeReady WorkspacesがOpenShiftのブランディングではなく、あくまでも「For OpenShift」であることだろう。つまり今後はクラウドベース、ブラウザベースの開発スタイルをOpenShift以外にも拡張していく意図があると思われる。また、JBossやFUSEといったモノリシックなアプリケーションのためのフレームワークにも適用される可能性があるように思われる。さらにAzure以外のGCP、AWSといったパブリッククラウドにおいてもOpenShiftが利用可能になっているように、順次サポートされていくかもしれない。

トリエフ氏が示したスライドには、サーバーレスのサポート予定があること、OpenShiftのためのコマンドラインツール、odoが開発中であること、そしてGoogleが開発をリードするKnativeのBuild-pipelineが将来的にビルドツールになることなどが紹介された。

また開発者に大きな支持を得ているMicrosoftのVisual Studio Codeのプラグイン、AzureのDevOpsツールであるPipelineのOpenShiftプラグイン、Team Foundation Serverへの対応なども発表された。

CodeReady WorkspacesのデモはEclipse Cheの画面

CodeReady WorkspacesのデモはEclipse Cheの画面

そしてトリエフ氏が強調していたもう一つのポイントは、開発の時点でライブラリーなどの脆弱性について調査する「Source Code Dependency Analytics」と呼ばれるサービスが組み込まれていることだ。これはコードを書く時点で、そのコードが使うライブラリーなどの脆弱性の有無や、ライセンスの混在が起きているかどうかを分析するツールだ。こちらは、Red Hat自ら機械学習の技術を使って開発を行っているという。

トリエフ氏は、冒頭のデモでEclipse CheのURLをそのままコピーして、それを他のデベロッパーに渡してただちに同じコードに対して開発が始められるということを強調していた。この部分こそが、デベロッパーが最も価値を感じる部分かもしれない。参加したメディアは筆者を始めとして実際にチームでのソフトウェア開発を体験している人間が皆無であったことを考えると、このデモをデベロッパーがどう感じるのかを見てみたいと思った瞬間であった。2年前に買収したCodenvyのコードを製品としてまとめて、メインストリームであるOpenShiftに対応させたRed Hatの執念が垣間見られた記者発表会であった。

クラウドネイティブなソフトウェアは、コンテナから複数のコンテナを使ったKubernetesに移行し、さらにマイクロサービス、サービスメッシュへと焦点が移行している。素早いソフトウェア開発と、作成されたコードを即座に本番環境に反映するシステムが、モダンなビジネスの武器そのものになってきているのだ。

そう考えると、単にクラウドをバックエンドにしてコンテナベースのアプリケーションが書けるだけではなく、IstioやGloo、Linkerdなどを使ったサービスメッシュ、さらにBallerinaのように言語レベルでネットワークを前提としたシステムを構築する時代になってきている。Red Hatの考えるモダンなソフトウェア開発ツールが、どこまでデベロッパーの支持を得られるのか注視していきたい。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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