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ネットワークスペシャリスト試験の概要と平成30年度の午前II問題

2019年7月24日(水)
加藤 裕

はじめに

今回から6回に渡って、ネットワークスペシャリスト対策講座を行います。今回の連載では平成30年度に出題された問題と関連する技術を取り上げて、それぞれの問題の考え方や解き方について解説していきます。

今回は、ネットワークスペシャリストの試験概要と平成30年度の午前Ⅱ問題を解説します。

ネットワークスペシャリスト試験の概要

最初にネットワークスペシャリスト試験の概要を確認します。本試験は情報処理技術者試験において最も高いレベル4に位置付けられており(図1)、高度情報処理技術者試験とも呼ばれます。本試験を合格するためには高い水準の知識・技能が求められるため、十分な対策が必要となります。

図1:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援試験 - 試験区分(試験要綱より引用)

受験者の対象者像・期待する技術水準は以下となります(情報処理技術者試験 - 試験区分一覧(NW)より抜粋)。

・対象者像

「高度IT人材として確立した専門分野をもち、ネットワークに関係する固有技術を活用し、最適な情報システム基盤の企画・要件定義・開発・運用・保守において中心的な役割を果たすとともに、固有技術の専門家として、情報システムの企画・要件定義・開発・運用・保守への技術支援を行う者」

・業務と役割

  1. ネットワーク管理者として、情報システム基盤であるネットワーク資源を管理する。
  2. ネットワークシステムに対する要求を分析し、効率性・信頼性・安全性を考慮した企画・要件定義・開発・運用・保守を行う。
  3. 情報システムの企画・要件定義・開発・運用・保守において、ネットワーク関連の技術支援を行う。

・期待する技術水準

  1. ネットワーク技術・ネットワークサービスの動向を広く見通し、目的に応じて適用可能な技術・サービスを選択できる。
  2. 企業・組織、又は個別アプリケーションの要求を的確に理解し、ネットワークシステムの要求仕様を作成できる。
  3. 要求仕様に関連するモデリングなどの設計技法、プロトコル技術、信頼性設計、セキュリティ技術、ネットワークサービス、コストなどを評価して、最適な論理設計・物理設計ができる。
  4. ネットワーク関連企業(通信事業者、ベンダ、工事業者など)を活用して、ネットワークシステムの構築・運用ができる。

このように、ネットワークシステムに対する幅広い知識が求められることがわかります。試験においても、ネットワークの技術的な知識を問う問題以外に、関連技術(特に情報セキュリティ)の内容を問う問題や計算問題、構築・運用・管理の作業手順など、多様な問題が出題される傾向があります。

試験概要はIPAのホームページで公開されていますので、より詳細な内容を確認したい場合はこちらを参照してください。

次に、ネットワークスペシャリスト試験の開催について、詳細を確認していきます。ネットワークスペシャリスト試験は年1回、秋季(10月の第3日曜日)に開催されます。2019年は10月20日(日)です。試験対策の学習スケジュールはこの日を基準に考えると良いでしょう(図2)。また、試験時間は9時30分から16時30分までで、各問題の制限時間の詳細も図2に示しました。このうち午前Ⅰ問題は免除制度があるため、試験対策の負担を軽減するためにも、条件を満たす方はぜひ活用しましょう。ただし、免除制度を利用するには試験申込の際に申請が必要です。午前Ⅰ問題の免除制度についてはこちらを参考にしてください。午後Ⅰ・Ⅱ問題はどちらも記述式かつ問題選択式です。特に試験本番では、選択した問の番号に○を付け忘れないように注意してください。

図2:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援試験 - 試験区分(試験要綱より引用)

図3にネットワークスペシャリスト試験の応募者数と合格率を示します。ここ数年の応募者数は2万人弱で、最終的な合格率は大体14%前後となっています。

図3:ネットワークスペシャリストの応募者数や合格率など(過去3年分)

また、図4に受験者の得点分布を示します。平成30年度では午前Ⅱ問題の合格率は比較的高く、78.5%となりました。一方で午後Ⅱ問題の合格率はやや低く、45.3%となっています。合格するには、出題分野が広く応用的な問題が出題されやすい午後Ⅱ問題の対策が重要であることがわかります。また、不合格だった受験者も50~59点に多く分布しており、あと数点で合格の基準点を満たせなかったというケースも多いと思われます。試験本番では、1点でも多く得点を積み重ねていくことが重要となります。

図4:平成30年度ネットワークスペシャリスト試験の得点分布

試験対策へ取り組むにあたって

ネットワークスペシャリスト試験の合格を目指して対策を行う際に、以下の3点を意識しておきましょう。

知識を増やす

ネットワークスペシャリスト試験はレベル4に相当する難易度であるため、まずはネットワーク分野の知識を増やすことが重要となります。特に仮想技術やプログラマブルフローなど、比較的新しい技術についても出題される傾向があるため、応用的な知識もつけておく必要があります。また、試験では設計から運用まで幅広い範囲が出題されるため、苦手な分野があるとそれだけ不利になります。可能な限り苦手な分野をなくし、手広く学習することも重要です。ネットワークスペシャリスト試験に関連した学習教材は市販の書籍やインターネット上の記事など数多く存在します。まずは色々と目を通してみて、自身の理解度に合ったものから読み込んで徐々に難易度の高いものに切り替えていくと良いでしょう。

なお、2016年度にはシラバスの見直しが行われ、情報セキュリティ分野の出題割合が多くなりました。そのため、情報処理保安全保護支援士試験(旧情報セキュリティスペシャリスト)の学習教材も読み込み、情報セキュリティ分野の知識も増やしておきましょう。

過去問を多く解く

情報処理技術者試験全般に当てはまることですが、過去問を解くことは試験対策として非常に有効な手段となります。過去問を多く解くことで問題の傾向や出題のパターンを把握でき、また、事前に解き方を理解しておくことで試験本番に応用できることも期待できます。

特に午後問題は選択方式であることから、問題選択や時間配分の方針を自分で決める必要があります。問題選択が適切でなかった、問題選択に時間をかけすぎて回答する時間が足りなくなった、などの失敗談もあるため、過去問を解く際にはこれらの方針を意識しておくとよいでしょう。

記述式の回答に慣れる

午後Ⅰ・Ⅱ問題は記述式のため、考えた回答を書き出して仕上げなければなりません。問題によっては文字数や含めるべきキーワードなどの条件も加わるので、これらを忘れずに満たした回答を記述する必要があります。過去問を解く際に頭の中で考えただけで実際に回答を書いていないと、試験本番で回答を考えても思うように記述できないかもしれません。そのため、過去問を解く際には回答を考えた上で、実際に手を動かして書いてみることも意識してみてください。

また、回答がまったく書かかれていなければ0点ですが、何らかの回答が書かれていれば部分点を得られる可能性があります。部分点の積み重ねが合格につながることも十分に考えられるため、不完全であっても何らかの回答を書いてみることが重要となります。

試験の概要については以上です。それでは、さっそく平成30年度の午前Ⅱ問題について確認していきましょう。

午前Ⅱ問題について

午前Ⅱ問題の出題範囲は図5のとおりです。

図5:午前Ⅱ問題の出題範囲(○や◎の後の数字はレベル(1~4)を指す)

平成30年度の午前Ⅱ問題の出題割合はネットワーク10問、セキュリティ6問、それ以外が4問でした。例年の傾向はネットワークが15問前後、セキュリティが5問前後、それ以外が5問程度なので、ほぼ例年に準じた出題割合となっています。全体的に見れば午前Ⅱ問題の出題範囲は広いですが、ネットワークとセキュリティで計20問前後が出題されるため、時間がない場合はネットワークとセキュリティに絞って学習しておけば基準点を満たすことは十分に可能でしょう。

また、午後Ⅱ問題では過去に出題された問題が繰り返し出題される傾向があります。そのため、試験対策としては数年分の過去問を解いて出題傾向を掴むことが有効です。新規の問題が出題された場合でも、午後問題の対策を行う過程で得た知識があればその場で解けることも多いです。ただし、計算問題や図を用いた問題では前提知識として数式や考え方などが必要になるので、それらの解法をしっかり押さえておきましょう。

平成30年度午前Ⅱ問題の解答例と解説

平成30年度の午前Ⅱ問題や解答は、こちらからダウンロードできます。

(平成30年度 秋期 午前Ⅱ問題 問4(試験問題から引用))

MTU(Maximum Transmission Unit)に関する問題です。MTUは1つのパケットで送ることができる最大データ長の値を指します。そのため、イーサネットパケットのデータ部分に相当する情報を探せば正解です。問の図のうち、MAC(Media Access Control)ヘッダはイーサネットヘッダに相当するため除外されます。また、プリアンブルはイーサネットパケットの送受信において同期を取るための情報であり、FCS(Frame Check Sequence)はイーサネットパケットの誤りを検出・訂正する情報であるため、これらの情報もデータ長には含まれません。したがって、解答は(ア)です。

今回の問題とは直接関係はありませんが、MTUは利用する通信技術ごとに値が規定されており、イーサネットの場合は1500バイトです。

(平成30年度 秋期 午前Ⅱ問題 問10(試験問題から引用))

サブネットの計算問題です。IPアドレスに関連した計算は午後問題でも求められる場合があるため、過去問を反復して解いて確実に計算できるように慣れておきましょう。サブネットマスクは32ビットの情報でネットワーク部に相当する部分を1ビット、ホスト部に相当する部分を0ビットで記述します。そのため、この問で利用されているサブネットマスクはネットワーク部が25ビット、ホスト部が7ビットであることがわかります。ホスト部が7ビットなので2の7乗を計算することで128が求められます。また、ホスト部はオール0ビットとオール1ビットの2つが予約されているため、利用可能なホスト数は最大126となります。したがって、解答は(ア)です。

サブネットを利用した場合のホスト数やホストアドレスの範囲などの情報はRFC1878で公開されています。計算結果を確認したい場合は活用すると良いでしょう。

(平成30年度 秋期 午前Ⅱ問題 問13(試験問題から引用))

SDN(Software-Defined Network)の問題です。SDNは比較的新しい技術ですが、午後問題でも出題される機会が増えてきたため対策の優先度は高めです。SDNのアーキテクチャはアプリケーションプレーン、コントロールプレーン、データプレーンの3層で構成されており、アプリケーションプレーン-コントロールプレーン間とコントロールプレーン-データプレーン間にそれぞれインタフェースが規定されています(図6)。アプリケーションプレーンでは各種のサービスや機能を提供するために必要な通信処理の流れを管理しており、この情報はAPI(Application Programming Interface)などを用いてコントロールプレーンに指示されます。また、コントロールプレーンではデータプレーンに届いた個々のパケットを処理するために必要な情報を管理しており、この情報はOpenFlowなどの通信プロトコルを用いてデータプレーンに指示されます。最後にデータプレーンは、コントローラから指示された内容に基づいてパケットを送受信します。このように、SDNのネットワーク機器は固定的な機能を持たず、コントローラからの指示に従ってパケットを処理します。そのため、従来のL2スイッチやL3スイッチなどを利用したネットワークと比較して柔軟に構成できるメリットがあります。

以上のことから考えると、OpenFlowはサウスバンドインタフェースで利用される通信プロトコルであることから(ア)は誤りです。また、アプリケーションはApplication-Controller Plane Interface(ノースバンドインタフェース)を介することから(ウ)も誤りです。さらに、アプリケーションはコントローラにAPIを介して指示を出すことから(エ)も誤りです。したがって、解答は(イ)となります。

図6:SDNのアーキテクチャ概要

おわりに

今回はネットワークスペシャリストの試験概要と平成30年度の午前Ⅱ問題について確認しました。次回は平成30年度午後Ⅰ問題問1の考え方と解き方を解説します。

NECマネジメントパートナー株式会社 人材開発サービス事業部
2001年日本電気株式会社入社。ネットワーク機器の販促部門を経て教育部門に所属。主にネットワーク領域の研修を担当している。インストラクターとして社内外の人材育成に努めているほか、研修の開発・改訂やメンテナンスも担当している。

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