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連載 :
  インタビュー

ObservabilityのNew Relic、創業秘話と新しいプラットフォームについて語る

2020年1月8日(水)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
SaaSでObservability(観測可能性)を提供するNew Relicがインタビューに応えて、New Relicの始まりと新しいプラットフォームなどについて解説を行った。

New RelicのSenior Vice President、Product and Solution MarketingのJon Rooney氏にインタビューを行った。今回のインタビューは2019年10月2日にNew Relicのサンフランシスコオフィスで行われたもので、インタビューに応じてくれたRooney氏はSplunkから転職したばかりということで「名刺もできていない」という状態だった。それでも、New RelicとSplunkのビジネスモデルの比較など、まだSplunkの記憶が新しいことが逆に良い効果を生んだ内容となった。

またNew Relicのクライアントサイドのモニタリング製品の責任者であるBuddy Brewer氏にもテレカンファレンスで参加してもらい、New Relicのモニタリングに関する戦略などについて解説を受けた。

自己紹介をお願いします。

New RelicのSVP、Jon Rooney氏

New RelicのSVP、Jon Rooney氏

Rooney:私はNew Relicで製品およびソリューションについてマーケティングを担当していますが、実は会社に入って1ヶ月くらいしか経っていないので、まだ名刺ができていないという状態です。New Relicの前はSplunkで働いていました。

入ってすぐのRooneyさんにお願いするのは酷かもしれませんが、New Relicが始まった辺りの話を教えてください。

Rooney:そうですね、私が知っていることは、RubyやRuby on Railsが出てきた時に満足するようなAPM(Application Performance Management)の製品がなかったことを、New RelicのCEOであるLew Cirneが気付いて、それを作ろうと決めたということですね。Lewはご存じのようにWilly Technologyを作ってAPM製品を開発していました。そしてWillyがCAに買収された後に、New Relicでそれを実現したかたちになります。

もうひとつLewが実現した大きな成果は、APMの世界にAWSのようなユーザーエクスペリエンスを持ち込んだことでしょうね。ユーザーが自分で仮想マシンを立ち上げて使うというやり方で、クレジットカードさえあれば誰でも使い始めることができます。これは私がSplunkの出身だからより強く感じることだと思いますが、ユーザー登録をしてエージェントをダウンロードしてモニタリングを始めると、その数分後にはダッシュボードにデータが表示されるという体験です。始めるためにはクレジットカードの登録すら必要ありません。

ユーザーの中には自分で操作を行って結果を見たい、ベンダーのセールスマンとは話をしたくないという人が多く存在します。Splunkはどちらかといえばオラクル的な重厚な営業スタイルを取っていました。そのため、セールスマンがユーザーに接触して何度かやり取りを行った後にPoCが始まって…… というように非常に時間が掛かるものだったのです。Splunkに在籍していた当時から、New Relicのユーザーがセルフサービスで始められるSaaS製品を羨ましく思っていたのです。

Salesforceのようなアプリケーションではすぐに使い始められるというのは利点であるとは思いますが、APMやモニタリングについてもそのユーザー体験は重要ということでしょうか?

Rooney:そうです。実際にモニタリングや監視などの機能についても、誰かが勝手にやってくれるわけではなく、それを行っているスタッフがいるわけです。そのようなスタッフやエンジニアにとって、すぐにデータを収集してダッシュボードで可視化できるというのは大きな差別化の要因となります。

私はSplunkの前にはMicrosoftで初期のAzureに関わっていましたが、その当時のAzureはIaaSを提供するAWSとは違って、PaaSしか提供していなかったのです。そして重要な顧客を招待するExecutive Briefing CenterでAzureのデモを行う時に提供していたAPMの機能は、それはひどいものでした。その私自身の経験からすれば、New RelicのAPMは非常に良い製品であると言えると思います。

モノリシックなアプリケーションからコンテナベースの細かな分散処理に移行していく中で、New Relicの対応は?

Rooney:我々はRuby on Railsから始まったわけですが、そこだけで留まる訳ではなく、他のプログラミング言語への対応やコンテナ、Kubernetesそしてサーバーレスまで対応を拡げていきます。特にサーバーレスに関しては、私はシニカルな見方をしているのかもしれませんが、『PaaSと何が違うのか?』という疑問を持っています。ユーザーはコアとなるビジネスロジックをプログラミング言語で記述するわけですが、本当にコアの部分以外はいわばユーティリティとして実装されるべきなのです。そしてユーザーはそのユーティリティの部分に関して、面倒な管理や運用はやりたくない、それはプラットフォーム側でやって欲しいと考えています。そうすると、コアなロジックをサーバーレスで記述して実行するのと、PaaSのようにコードを実行するプラットフォームとでは、あまり違いはないのではないか? ということです。

CNCFのサーバーレスワーキンググループのチェアをしているIBMのDoug Davis氏もサーバーレスとPaaSを厳密に区別する必要はないのではないか? と言っていました。そこはもっと議論するべきポイントかもしれません。

Rooney:ただ、ユーティリティの部分がどんどん複雑になっていくことは想像できますよね。コンテナやPodsが複数実行される環境では、それが今どうなっているのか? これを可視化することは重要です。しかもモニタリングやトレーシング、そしてログの分析など多くの側面が同時に必要になってきます。

そこでNew Relicは、先日実施したFutureStackというNew Relicの1 Dayカンファレンスにおいて、オープンソースのPrometheusやZipkinといったソフトウェアとの連携を発表しました。また新しいプラットフォームであるNew Relic ONEは、ログやメトリクスを包括的に管理できるプラットフォームとして発表しました。

ではここからBuddy Brewer氏にテレカンファレンスで参加してもらうことにします。簡単に自己紹介をお願いします。

GVP & GM Client-Side MonitoringのBrewer氏

GVP & GM Client-Side MonitoringのBrewer氏

Brewer:私はNew Relicにおけるクライアントサイドのモニタリング製品の責任者です。クライアントサイドということは、つまりスマートフォンやブラウザ、タブレットなどのエンドポイントをモニタリングする製品ということになります。現在、業界では「Observability(観測可能性)」という言葉が大変注目されています。それをクライアントサイドに注目すると、モバイルAPMなどというのが具体的な製品になりますが、New Relicにおいて、クライアントサイドのObservabilityは、最終的にビジネスの結果にどうやって反映していくのか? これを可視化することとみなしています。

よく、APMベンダーが使う「スマートフォンで航空券を予約する際に反応が悪いとすぐに他のサイトに離脱してしまう。だからどこで遅延が起きているのかを知る必要がある」という例がありますが、まさにそれを実践していると。

Brewer:そうですね。テクニカルな情報としてのメトリクスと、ビジネスに直結する情報としてのユーザー数やページビューなどを総合的に可視化するプラットフォームが、New Relicのコアのビジネスです。そしてそれらを包括的に格納するデータベースとして、New Relic DBというデータストアに格納されることで、データを一元的に管理することができるようになっています。

単純にテクニカルなメトリクスデータだけを使うのではなく、マーケティングに使うデータを同時に使って分析することで、ビジネスに直結するようなデータを見ることができるというのは大きな差異です。実際、我々のユーザーも、ユーザー離脱率とパフォーマンスに明確な相関関係があるといった例を目にすると大変に驚いています。そしてNew Relicのエージェントから出てくるデータだけではなく、サードパーティのデータソース、例えばPrometheusやZipkinのデータをメトリクスデータとして使うことでより大きな視点でシステム全体を可視化できるようになっています。

日本のエンタープライズ企業に対して、ObservabilityをKubernetesなどの分散型のシステムにおいて実践する際のアドバイスはありますか?

Brewer:まずはユーザーエクスペリエンスに着目して、その体験をどうやって向上できるのか? これを最初の問いとして設定することですね。そしてそれを可視化するために、どこの部分から手を入れたら良いのか? これを考えるというやり方です。

先ほどあなたが挙げた例で言えば、スマートフォンを使って航空券を買うという行為に注目して、モバイルのAPMを使うことやブラウザに対応したエージェントを使うなどの可能性が出てきます。そしてそれを実装するには、New Relicのソリューションもありますが、選択肢は幅広いと思います。これは我々の日本の顧客であるコマツが実践している方法論でもあります。まずは『どうやったらユーザーエクスペリエンスを改善できるのか?』 これを問題として設定して、それを解決していくというやり方をお勧めしたいですね。

解放感のあるNew Relicのカフェテリア

解放感のあるNew Relicのカフェテリア

Rooney氏は、New Relicの新規ユーザーが使い始めることのハードルの低さを、他社の視点から「New Relicが実践した大きなチャレンジ」として客観的に評価していたことが印象的だった。またBrewer氏は、オープンなインフラストラクチャーから集められるデータを、New Relicが独自に開発したデータベースNew Relic DBで包括的に管理するというSaaSモデルに、大きな自信を持っていることを伺わせるインタビューとなった。

SalesforceやAWSのベテランが集結した日本法人の活躍にも期待したい。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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