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高速でメモリーセーフなプログラミング言語、Rustの特徴を紹介

2020年6月3日(水)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
2019年4月に行われたカンファレンスからRustの概要を紹介する。

バージョン番号を持たないRust

ただし、安定性(Stability)という部分ではここでも他のプログラミング言語にはない特徴がある。それはアップグレードに関する内容で、Rustにはバージョン番号という概念がなく、Editionという形でリリースされ、それぞれのEditionに対応して書かれたソースはそのEditionがDeprecate(非推奨)にならない限りは実行できるという点だ。

安定性を確保するための仕組みを説明

安定性を確保するための仕組みを説明

Editionの説明の前に、Rustがソースコードから実行形式に変換されるまでのフローを理解しておこう。実際には1回のコンパイルで実行形式ができるわけではなく、内部ではソースコードからHIR(High-level Intermediate Representation)に変換、そこからMid-level Intermediate Representation)に変換される時点で所有権などのチェックが行われる。その上でLLVM Intermediate Representationに変換され、最終的に機械語に変換されるという流れだ。最初の段階のHIRの部分をそれぞれのEditionごとに利用することで、どのEditionでコードを書いたとしても互換性が保証されるという仕組みになる。なので多くのソフトウェアで発生する最新バージョンがリリースされたことで過去のリリースの上で書かれていたコードが動かなくなるという不具合は発生しないというのがポイントだ。

このスライドでは、2015年のEditionで書かれたコードと2018年のEditionで書かれたコードはそれぞれ別のルートを通ってコンパイルされ、実行されるため無理矢理バージョンを上げる必要はないということになる。

実際には最後のLLVMの部分に新たなバックエンドの開発が進んでいる。これはRustで書かれたCraneliftと呼ばれるモジュールだ。Bytecode Allianceの下で開発されているもので、すでにFirefoxで実行されるWebAssemblyのコードを生成するために使われているという。

Rust 2.0というリリースはないという力強い宣言

Rust 2.0というリリースはないという力強い宣言

Rustの将来

そして今後のToDoリストとして挙げられたのが次のスライドだ。

RustのToDoリスト

RustのToDoリスト

ここには、ISO/ECMAの標準として採用されること、Long Term Supportを実現すること、コンパイラーの認証(これはCraneliftのような置き換え可能なバックエンドをコミュニティとして認証するための仕組み作りも含んでいると想定される)、標準で用意されるビルドシステムCargoと他のCI/CDシステムとの連携、「Private crate hosting」などが挙げられている。

crate hostingについては説明が必要だろう。crateというのはRustが利用する外部のライブラリーの総称だが、今はcrates.ioというパブリックなパッケージリポジトリーが存在しており、Cargoはそれを利用する。しかしエンタープライズ企業がRustを使う場合に自社専用のcrateが必要になることは明らかであり、自社が個別に用意するプライベートなリポジトリーのホスティングが必要、それを可能にするという意味だ。ここからも標準化とエンタープライズでの利用をターゲットとしてコミュニティが動いているのがわかる。

エンタープライズでの利用が進むRust

エンタープライズでの利用が進むRust

ここからはエンタープライズ企業がどのようにRustを使っているのか?という説明に移る。

Mozilla Foundationが開発しているFirefoxでも使われていることは知られている。次のスライドでは、「もしもCSSのコンポーネントにRustが使われていれば、これまで発生したCSSに関連する脆弱性のうち70%以上は未然に防ぐことができた」ことが説明されている。

CSSの部分をRustで書いていれば73.9%のバグは起こらなかった

CSSの部分をRustで書いていれば73.9%のバグは起こらなかった

他にもAmazon、Google、Facebook、MicrosoftがRustを使ってソフトウェアを書いていることを示したのが次のスライドだ。

多くのエンタープライズがRustを使い始めている

多くのエンタープライズがRustを使い始めている

Rustコミュニティのガバナンス

最後にオープンソースソフトウェアとしてのRustのガバナンスについて説明を行った。

Rustコミュニティのガバナンスについて

Rustコミュニティのガバナンスについて

コミュニティは多くのワーキンググループと多様なコントリビュータから組織されており、すべての決定はパブリックなRFC(Request for Comment)によってなされていることを説明。ここではガバナンスが公開されており、透明かつ公平であることを強調した。

最後にRustが今後も健全に持続していくことをまとめとして挙げた。

Rustが持続していることを強調

Rustが持続していることを強調

最後に鉄道用のエアブレーキを開発され、全車輌の標準装置として行き渡るまでに約30年という長い時間が必要だったという冒頭の説明に立ち戻って、「Rustがメモリーセーフな開発言語として行き渡るまでに鉄道のエアブレーキと同じように40年は掛かるかもしれないし、もっと早く実現するかもしれない、ひょっとするとそれはRustではないかもしれない、でも私はRustがその役目を担うと信じている」としてセッションを終えた。

Rust言語のオーバービューとしては良い内容だったと思うが、言語自体をもっと深く理解するためには以下のドキュメントを参照することが必須だろう。メモリーセーフな開発言語としてさらにRustのエコシステムが拡大し、エンタープライズにおいても利用が拡がることを願っている。

Rustの日本語ドキュメント:https://doc.rust-jp.rs/book/second-edition/

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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