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連載 [第1回] :
  月刊Linux Foundationウォッチ

Linux Foudationの2020年上半期の動きを振り返る(1)

2020年10月30日(金)
吉田 行男

こんにちは、吉田です。現在、筆者はメーカー系のインテグレータを退職し、フリーランスでOSS界隈に関する記事を執筆しています。Think ITの連載は2014年11月~2017年2月まで掲載していた「週刊OSSウォッチ」以来です。

今回から始まる「Linux Foundation(LF)ウォッチ」では、今やLinuxのみならず、OSS全般に活動範囲を広げているLinux Foundationの動向で、気になった出来事を紹介していきます。第1回の今回は、2020年上半期のLinux Foudationの動きを振り返ってみたいと思います。

2020年上半期の一番大きな話題は、やはり新型新型コロナウィルスに関する話題でしょう。新型コロナウィルス接触確認アプリCOCOAのベースとなった「Covid19Radar」や東京都の新型コロナウィルス感染症対策サイトがオープンソースで開発されたことが話題になりましたが、Linux Foundationもいくつかの取り組みを行っています。

COVID19に対応し
メンターシップ プログラムを拡充

Linux Foundationは、インテル社から25万ドルのシードファンディングを受け、さらにLinux Foundationとしても10万ドルを拠出し、COVID-19に対応したメンターシップ プログラムを拡充することを発表しました。COVID-19のために休業しているインターンを支援し、世界で需要や報酬が高い仕事に就くために新しい技術を習得する機会を提供しています。

【参照リリース】Linux Foundation、COVID19に対応しメンターシップ プログラムを拡充
https://www.linuxfoundation.jp/press-release/2020/04/linux-foundation-expands-mentorship-program-in-response-to-covid-19/

このプログラムは、開発者がオープンソースコミュニティを体験しながら学習し、コミュニティへ貢献できるように設計されています。プログラムの結果となる職業紹介はインテル、Google、Red Hat、IBMなどの主要なテクノロジー企業で働くインターンが含まれています。

さらに、このプログラムではインターンやメンティーにLinux、Kubernetes、LF Networking、Hyperledgerなど、世界で最も人気のあるオープンソース プロジェクトで働く機会も提供しており、プログラムのメンターには世界最大のオープンソース ソフトウェア イニシアチブの主要な開発者が名を連ねています。メンティーはツールやインフラを含むオープンソース文化やコラボレーションの規範を学びながら、技術的なスキルを向上させることができます。

このように、COVID-19により休業を余儀なくされた開発者に手を伸ばし、新しい技術を身に着けることで新しい発見があり、さらなるステップへのスタート台にオープンソースがなれれば、これに越したことはないでしょう。

新型コロナAPI採用アプリ拡大支援イニシアティブ
「LFPH(Linux Foundation Public Health)」立ち上げ

Linux Foundationは7月20日(米太平洋時間)、世界の公衆衛生当局(PHA)の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との闘いを支援するオープンソースソフトウェアの構築を目的とする新イニシアチブ「Linux Foundation Public Health(LFPH)」を立ち上げたと発表しました。

LFPHは、プレミアメンバー7社Cisco、doc.ai、Geometer、IBM、NearForm、Tencent、VMwareが参加し、米Appleと米Googleが4月に発表した曝露通知API「Google Apple Exposure Notification(GAEN)」を採用する2つのオープンソースソフトウェア、カナダの接触通知アプリ「COVID Shield」とアイルランドの「COVID Green」をホストすることで始動しました。

【参照リリース】世界中のテクノロジーリーダーと公衆衛生当局がCOVID-19対策で協力
https://www.linuxfoundation.jp/press-release/2020/07/tech-leaders-and-health-authorities-from-around-the-globe-collaborate-to-combat-covid-19/

このGAENを採用したアプリを公開している国は、7月時点でオーストリア(アプリ名はStopp Corona、以下同)、デンマーク(Smittestop)、ドイツ(Corona-Warn-App)、ジブラルタル(Beat COVID)、アイルランド(COVID Tracker)、イタリア(Immuni)、日本(COCOA)、ラトビア(Apturi Covid)、サウジアラビア(Tabaud)、スイス(SwissCovid)の10カ国に上り、今後さらに増加する見込みです。

COVID ShieldはShopifyのボランティア チームにより開発され、現在カナダで導入が進んでいるプロジェクトで、COVID Greenはアイルランド政府のパンデミック対策の一環としてNearFormのチームにより開発されたプロジェクトです。アイルランド政府機関Health Service Executiveにより導入されて以来、同国の成人の3分の1を超える高い普及率を達成しています。この両アプリは他の公衆衛生当局やそのITパートナーにも提供されており、利用やカスタマイズができるようになっています。

非営利団体COVID Watchやキール応用科学大学が主導するオープソースプロジェクト、US Digital Responseも非営利のアソシエイトメンバーとして参加したほか、早くから業界横断的な取り組みを行ってきたTCN CoalitionがLFPHに統合されました。TCN Coalitionは、COVID-19パンデミック時にプライバシーを保護し相互互換性のある接触確認・通知アプリの開発をサポートする技術者のグローバル コミュニティです。当初は国境を越えた相互運用性を確保し、開発作業の重複を減らすために設立されましたが、アプリ開発チームやITプロバイダーとの連携において、公衆衛生当局を支援するように進化してきました。

KHN(Kaiser Health News)とAP通信による公衆衛生への政府支出の分析によると、米国では2010年以降、州の公衆衛生部門への支出は1人当たり16%減少しており、38,000もの仕事がなくなっています。このような状況の中で発生したCOVID-19 によるパンデミック危機にあたって、テクノロジー業界としてどのようにこのPHAを支援できるかというのが大きな課題となっていました。

今後も、このような世界的な社会課題に対してオープンソースが何ができるかを議論し、具体的な行動を起こしていくことが重要なことになるかもしれません。

CNCFのエンドユーザーコミュニティが
「CNCF Technology Radar」を公開

ここからは、少しCOVID-19 から離れた話題を紹介します。

米国現地時間の6月12日、CNCFエンドユーザコミュニティが「CNCF Technology Radar」を公開しました。このコミュニティは140を超えるトップ企業とスタートアップが参画しており、クラウドネイティブテクノロジーを適用する際の課題やベストプラクティスについて定期的に議論しています。CNCF Technology Radarは、エンドユーザが積極的に採用しているツールや推奨するツール、およびそれらツールの使い方のパターンに関する情報と共有することを目的に作られました。

【参照ブログ】Introducing the CNCF Technology Radar
https://www.cncf.io/blog/2020/06/12/introducing-the-cncf-technology-radar/

CNCF Technology Radarでは、技術を4つのレベルに分け、これから技術を選択しようとしている人たちに適切なアドバイスを提供します。以下に、その4つのレベルを紹介します。

採用(Adopt) すでに多くの企業で活用されており、安定しているため、明確に推奨できるもの
試用(Trial) エンドユーザ企業に利用されており、注目することが推奨されるもの
評価(Assess) 試用されたことがあり、有望ではあるが、特定のニーズに直面した時、検討が推奨されるもの
保留(Hold) 決して悪い技術やツールではないものの利用には留意すべきもの

また、CNCF Technology Radarには、以下の4つの特徴があります。

  • CNCFエンドユーザーコミュニティの評価に基づいており、コミュニティの代表者により提供されています。
  • 今後の導入にのみ焦点を当てているので、「Assess」「Trial」「Adopt」の3つのレベルしか設けていません。
  • 年に一回の発行ではなく、より短い期間である4半期に発行することを目標にしています。
  • 数百のアイテムをカバーするのではなく、1つのレーダーは特定のユースケースで10〜20のアイテムを対象に、評価分類しています。

2020年5月に「CD(Continuous Delivery)ソリューション」についてコミュニティメンバーに行ったアンケート結果を下図に示します。

この結果、「Flux」と「Helm」は広く採用されていることがわかります。FluxはKubernetesをベースにGitOpsを行うための機能拡張用オペレーターで、HelmはKubernetes対応のパッケージマネージャです。これらは広く利用されており、推奨に反対する声もまったくなかったとのこと。

また、多くの企業が「CircleCI」「Kustomize」「GitLab」を推奨していますが、十分な回答がなかったため「Trial」にとどまっています。また「Jenkins」も既存のデプロイで広く使用されていますが、新しいコンセプトを重視するユーザは「Flux」を使用する傾向にあるようです。

このようなレーダーを作成することで、ユーザが多数あるツールの中からどれを選択するかを検討する際に、参考になるのではないでしょうか。次の結果は2020年9月に公開される予定でしたが、現在ではまだ投票が行われている状況のため、遠からず公開されると思います。

* * *

第1回の今回は、2020年上半期のLinux Foundationの動きを紹介しました。このように、Linux Foundationは、さまざまな活動を行っています。今後もLinux Foundationの活動内容を紹介することで、読者の皆さんのスキルアップやビジネスにお役に立てればと思います。来月もお楽しみに!

2000年頃からメーカー系SIerにて、Linux/OSSのビジネス推進、技術検証を実施、OSS全般の活用を目指したビジネスの立ち上げに従事。また、社内のみならず、講演執筆活動を社外でも積極的にOSSの普及活動を実施してきた。2019年より独立し、オープンソースの活用支援やコンプライアンス管理の社内フローの構築支援を実施している。

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