オブジェクト指向で作った15パズルの完成

2020年12月24日(木)
松本 吉生(まつもと よしお)
連載5回目となる今回は、これまで作成してきた15パズルを完成させます。

ゲームの初めにタイルをランダムに配置するメソッドを作る

前回の記事では、15パズルのプログラムの基本的な機能を完成させたところまで進みました。今回はその続きです。まずはゲーム開始時にタイルをランダムに配置するメソッドを作りましょう(プログラムを実行して、初めからタイルの位置が並んでいてはパズルになりませんからね)。メソッド名はgameInitialize()とします。また、このメソッドではランダム値を使いたいので、Randomクラスのインスタンスを作成するコードをForm1クラスに記述します。gameInitialize()メソッドもForm1クラスに次のように記述します。

リスト1:RandomクラスのインスタンスとgameInitalize()メソッド

1Random myRandom = new System.Random();
2private void gameInitialize()
3{
4 
5}

gameInitialize()メソッドの中身を作りましょう。ボタンの位置を交換するメソッドはカスタムボタンのMove()メソッドでした。()内の引数に、位置を交換したい相手のカスタムボタンオブジェクトを与えるものでした。たとえば12番のボタンを15番のボタンと位置交換するコードは、myCustomButton[12].Move(myCustomButton[15])のようにすればよいのでした。ランダムな数字を得るには、ランダムクラスのNext()メソッドを使います。たとえばmyRandomオブジェクトで0以上15未満のランダムな値を得るには、myRandom.Next(0, 15)とします。

ランダムにタイルの位置を交換するには、カスタムボタン配列の添え字の番号をランダムにすればよいので、gameInitialize()メソッドのコードは次のようになります。ランダムに位置を交換した後、移動可能を判定するsetMovable();メソッドも実行しています。

リスト2:gameInitialize()メソッドの内容

1private void gameInitialize()
2{
3    for (int i = 0; i < 30; i++)
4    {
5        myCustomButton[myRandom.Next(0, 15)].Move(myCustomButton[15]);
6        setMovable();
7    }
8}

gameInitialize()メソッドができたら、このメソッドがフォームの起動時に実行されるように、Form1_Load()メソッドにgameInitialize();を記述します。ここまでできたら、Visual Studioで緑の三角「開始」ボタンをクリックするか、「デバッグ」メニューの「デバッグの開始」でビルドしてプログラムを実行します。実行するとボタンのいくつかがランダムに位置交換されてゲーム開始となります。

ランダムに位置を交換するコードはfor文で繰り返す構造になっています。ここではデバッグをしやすくするために、繰り返す回数を30回と少なめにしています。この回数では、次の実行結果のように、全体のタイルの位置が大きく変わることなく、右下の空欄に近いところのタイル数個の位置が変わるだけになります。デバッグが終わればfor文の繰り返し回数を増やすことにします。実行したらタイルをクリックしてパズルを完成させてみましょう。

プログラム開始時にgameInitialize()メソッドを実行してパズルを始める

プログラム開始時にgameInitialize()メソッドを実行してパズルを始める

ここまでのコードは次のようになります。

リスト3:ここまでのコード全体(expand sourceをクリックで表示)

パズルの完成をチェックするcheckComplete()メソッドを作る

次にパズルの完成を判定させましょう。パズルの完成は、カスタムボタンクラスに定義したPositionフィールドの値で判定します。パズルの完成は、1番のタイルのPositionが「1」に、2番のタイルのPositionが「2」に、というように、すべてのボタンの番号とPositionフィールドの値が一致したときと判定できます。カスタムボタンは配列なので、foreach文で一括処理をすることができます。これがオブジェクト指向プログラミングの便利なところですね。

次のforeachステートメントは、myCustomButton配列のすべての要素に対して、CustomButtonクラスのallCustomButtonという名前で処理をするコードです。

リスト4:foreachステートメントですべてのボタンに対して処理を行う

1foreach (CustomButton allCustomButton in myCustomButton)
2{
3 
4}

すべてのボタンの番号とPositionフィールドの値が一致すればパズル完成です。メソッドの名前はcheckComplete()とします。次のコードではローカル変数int complete = 0;を定義し、foreach文で値が一致するタイルの位置を数えます。Completeの値が16になれば全部のタイルが正しい位置にあると判定できるので、メッセージボックスで「Complete!」を表示します。

リスト5:checkComplete()メソッド

01private void checkComplete()
02{
03    int complete = 0;
04 
05    foreach (CustomButton allCustomButton in myCustomButton)
06    {
07        if (Convert.ToInt16(allCustomButton.Name) == Convert.ToInt16(allCustomButton.Position))
08        {
09            complete += 1;
10        }
11    }
12 
13    if (complete == 16)
14    {
15        MessageBox.Show("Complete!");
16    }
17}

最後に、ボタンをクリックするたびにパズル完成を判定するため、myCustomButton_Click()メソッドにこのcheckComplete();を記述します。これで15パズルゲームは完成です。Visual Studioで緑の三角「開始」ボタンをクリックするか、「デバッグ」メニューの「デバッグの開始」でビルドしてプログラムを実行します。タイルをクリックで移動し、パズルを完成させてください。ここまでのコードは次のようになります。

リスト6:ここまでのコード全体(expand sourceをクリックで表示)

コードを整理してパズルを完成させる

最後にデバッグ用のコードの前に「//」をつけて、次のようにコメントアウトします。もちろん、最終的にデバッグの必要がなくなれば行を消してもかまいません。

リスト7:デバッグ用コードをコメントアウト

1(setMovable()メソッドにあるテスト用のコード)
2 
3//allCustomButton.Text = allCustomButton.Name + allCustomButton.isMovable + allCustomButton.Position;//テスト用のコード
4 
5(Initialize()メソッドにあるテスト用のコード)
6//this.Text = this.Name + this.isMovable + this.Position;//テスト用のコード

また、開始時に位置をランダムに交換する回数をfor文で決めていますが、この数を増やしましょう。次のコードでは、デバッグ時に30回だったgameInitialize()のfor文を3000回に増やしています。

リスト8:開始時のボタン交換回数を増やす

1for (int i = 0; i < 3000; i++)
2{
3(略)
4}

最後にボタンの数字を少し大きく表示するように変えましょう。ボタンのフォントはCustomButtonクラスのthis.Font = new Font("Arial", 20);で定義しています。このコードを次のように変えて、フォントサイズを40にします。

リスト9:ボタンのフォントを大きく

1this.Font = new Font("Arial", 40);

Visual Studioで緑の三角「開始」ボタンをクリックするか、「デバッグ」メニューの「デバッグの開始」でビルドしてプログラムを実行します。タイルをクリックで移動し、パズルを完成させてください。完成すると「Complete!」のメッセージボックスが出て完了です。次の画面は完成した15パズルを実行したところです。

完成版の15パズルを実行したところ

完成版の15パズルを実行したところ

ここまでのコードは次のようになります。

リスト10:完成版のコード全体(expand sourceをクリックで表示)

終わりに

いかがでしたか。オブジェクト指向を意識しなくてもVisual Studioを使ってC#のプログラムを作ることはできます。しかしこの記事で紹介した15パズル程度の簡単なプログラムでも、オブジェクト指向を意識して作ると、似たコードを繰り返し書く必要のない、合理的でわかりやすいプログラムになります。また縦横4×4のパズルを5×5など大きなサイズに変更することも簡単です。見栄えをよくするにはタイルの色を変更するなどデザインを工夫し、完成した時のメッセージを派手にするといいでしょう。またゲーム性を高めるなら、何回のクリックで完成できたかをカウントしてもよいでしょうし、時間を測って競うのもよいですね。またタイマーオブジェクトを使って、ある決めた時間内に完成させるようにしてもおもしろそうです。オブジェクト指向を身に着けて、いろいろなプログラミングにチャレンジしてください。

著者
松本 吉生(まつもと よしお)

京都に生まれ、神戸で幼少期を過ごす。

大学で応用化学を学んだのち、理科教諭として高等学校に勤務する。教育の情報化が進む中で校内ネットワークの構築運用に従事し、兵庫県立明石高等学校で文部科学省の「光ファイバー網による学校ネットワーク活用方法研究開発事業」に携わる。兵庫県立西宮香風高等学校では学籍管理データベースシステムをSQL Serverで構築・運用、兵庫県立神戸工業高等学校ではC#プログラミング、IoTなどのコンピュータ教育を行い、現在は兵庫県立神戸甲北高等学校に勤務する。

2004年からマイクロソフトMVP(Microsoft Most Valuable Professional)を受賞し、現在17回目の連続受賞。2020年1月14日に「令和元年度文部科学大臣優秀教職員表彰」を受賞。

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第5回

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